2013年11月9日土曜日

ペーター=レーゼル ピアノ-リサイタル 評

2013年11月9日 土曜日
紀尾井ホール (東京)

曲目:
フランツ=シューベルト 「楽興の時」 op.94 D780
ヨハネス=ブラームス 「2つのラプソディ」 op.79
(休憩)
カール=マリア=フォン=ヴェーバー 「舞踏への勧誘」 op.65
ロベルト=シューマン ピアノ-ソナタ第1番 op.11

ピアノ:ペーター=レーゼル

1945年にドレスデンで生まれたペーターレーゼルは、この11月に来日し、全て紀尾井ホールにて計4公演に臨む。その内容は、11月7日に室内楽、11月9日にソロ-リサイタル、11月15・16日に紀尾井シンフォニエッタ第92回定期演奏会のソリストとしての公演である。この評は、11月9日に開催されたソロ-リサイタルに対するものである。

着席位置は、一階ど真ん中より少し後方かつ上手側である。客の入りは八割くらいであろうか。聴衆の鑑賞態度は概ね良好であったが、アンコール一曲目で小銭入れを弄び、コインの音がしたのが気になった。「舞踏への勧誘」でフライング拍手があったが、これは作品の特質上やむを得ないところがある。まあ、演奏者の明確な合図があるまでは拍手をしないというルールが確立されていれば、避けられた話ではあるが。

全般的には、古典的な様式、と言うのが不適切であるのならば、硬質な堅固さを伴った、過剰な感情を排しつつもロマン主義をほのかに感じさせる演奏と言ったらいいか。技巧を見せつける訳でもなく(念のために申し上げれば、技巧面では完璧で問題は全くない)、派手に演出をする訳でもなく、ただただ楽譜を深く理解しその結果自ずから生じてくる音を弾いていくというスタイルである。

後半はややドラマティックな表現とはなるが、その基調にかわりはない。

特に個人的に好みは、「楽興の時」第五・第六楽章と、「2つのラプソディ」、「舞踏への勧誘」、三曲のアンコールである。アンコールの曲目は、ブラームスの「幻想曲集」より第1曲奇想曲 op.116-1、シューベルトの「即興曲集」より第2番 D935 より第2番 op.192-2 D935、ブラームスの「ワルツ」 op.39-15であった。