2013年11月21日木曜日

エマニュエル=パユ+ジャン-ギアン=ケラス+マリー-ピエール=ラングラメ 演奏会評

2013年11月21日 木曜日
松本市音楽文化ホール (長野県松本市)

曲目:
演奏会のテーマ「ザ-フレンチ-コレクション in 松本」
マックス=ブルッフ 「トリオのための8つの小品」より 第1番、第2番、第5番
ロベルト=シューマン 「幻想小品集」 op.73 (フルートとハープのみ)
ハンス=ヴェルナー=ヘンツェ 「墓碑銘」 (チェロのみ)
セルゲイ=プロコフィエフ 「10の小品」より 第7曲「前奏曲」 op.12-7 (ハープのみ)
ヨハネス=ブラームス 「2つの歌曲」 op.91
(休憩)
ヨゼフ=ヨンゲン 「トリオのための2つの小品」 op.80
クロード=ドビュッシー チェロとピアノのためのソナタ (チェロとハープのみ)(ピアノパートはハープによる演奏)
エリオット=カーター 「スクリーヴォ-イン-ヴェント」(「風に書く」) (フルートのみ)
モーリス=ラヴェル ソナチネ (フルートとハープとチェロのために独自に編曲)

フルート:エマニュエル=パユ
ヴァイオリン-チェロ:ジャン-ギアン=ケラス
ハープ:マリー-ピエール=ラングラメ

エマニュエル=パユはスイス連邦ジュネーブ生まれの、ベルリン-フィルハーモニーのフルート首席奏者である。ベルリン-フィルハーモニーが来日公演が11月20日で終わり、その翌日の演奏会である。

ジャン-ギアン=ケラスはカナダ国モントリオール生まれのチェリストで、この11月に来日ツアーを実施しており、無伴奏チェロ-ソナタ演奏会を東京・横浜・名古屋・西宮(兵庫県)で行うと同時に、室内楽を唯一この松本で演奏する。

マリー-ピエール=ラングラメはフランス共和国グルノーブル生まれの、ベルリンフィルハーモニーのハープ首席奏者である。ベルリン-フィルハーモニー来日公演での彼女の出番も、昨日で終わったのであろうか。

この三人がどうして松本のみで揃って演奏する事となったのかは、謎である。宣伝文句は、「パユ&ケラス&ラングラメ スーパースターが織り成す 美しき一夜限りの夢のトリオ」となっているが、この三人が揃って演奏するのは確かに松本のみであり、「一夜限り」と言うのは間違いない。

演奏会のテーマ「ザ-フレンチ-コレクション in 松本」となっているものの、ドイツ・ロシア・米国ものもあり、「フレンチ-コレクション」と言うのは「フランス語が母語の奏者をコレクション」したという意味なのか?まあ、演奏が良ければどうでもいいけど。

着席場所は、後方下手側である。客の入りは九割五分程である。観客の鑑賞態度は良好であり、拍手のタイミングが適切であった。

全般的に、三人の奏者それぞれが適切な自己主張をし、特に後半のヨンゲン・ドビュッシー・カーターの三曲については、パッションが自然に込められており、かつ完成度が高い演奏であり、非常に優れた演奏である。

ベルリン-フィルの演奏会に忙しい二人は、特にパユが譜面を注視しているのが目立ったが、それでもフルートの見せ場ではその技巧を見せつけ、特にカーターのソロは秀逸である。

ラングラメは、特に後半の出来が良い。

それにしてもケラスのチェロは絶品である。パワーがあることは当然だとしても、一音一音の響きが絶品である。高音部の軽やかさから低音部の深い音まで、ニュアンスで攻めると言うよりは、一音一音の音色で攻めると言うのが良いのだろうか。

お相手は、フルートとハープ、どちらも華やかな楽器だ。チェロの見せ場とあれば、この二つの楽器をバックに従えて朗々とした響きで観客を見事に弾きつける。決して、通奏低音の下支え的でもなく、伴奏的でもない、堂々と主役を演じられる所に、ケラスの傑出した才能が感じられる。間違いなく、世界最高のチェリストの一人である。

アンコールは、イベールの「二つの間奏曲」である。

終演後のサイン会場は、松本にしては異常に賑わい、女性の比率が高かったが、パユ派とケラス派、または両方の肉食派が並んでいたのか。ベルリン-フィルの来日公演直後であり、リハーサルの時間も長くは取れない中でも、これほどまでの内容で演奏できると言うのは、さすがベルリン-フィルの首席奏者と思い知らされる演奏会であった。