2015年8月8日 土曜日
ウェスタ川越 (埼玉県川越市)
演目:
・組踊公演「二童敵討」
・三線音楽「うた・さんしん」
・うちなーミュージカル公演 「かりゆし・かりゆし~恋するシーサー~」
出演:
・組踊公演「二童敵討」
[配役]
あまをへ:宇座仁一
亀千代:玉城匠
鶴松:西門悠
供一:川満香多
供二:伊野波盛人
供三:阿嘉修
母:真境名律弘
きょうちゃこ持ち:大浜暢明
[地謡]
(歌三線)玉城正治・上原睦三・玉城和樹
(箏)新垣和代子(笛)入嵩西諭(胡弓)森田夏子(太鼓)高宮城実人
・三線音楽「うた・さんしん」
[宮廷音楽の世界]
古典音楽斉唱「かぎやで風節・揚作田節」 (踊り手) 宇座仁一
若衆踊「四季口説」 (踊り手) 喜納彩華 玉城知世
二才踊「前の浜」 (踊り手) 伊野波盛人
女踊「天川」 (踊り手) 真境名律弘
古典音楽独唱 「二揚仲風節」 (歌三線) 玉城正治
[島々のうた]
宮古島のうた (歌三線) 川満香多
八重山諸島のうた (歌三線) 入髙西諭
沖縄本島のうた (歌三線) 仲村逸夫 島袋奈美
(踊り手) 西門悠雅 玉城知世 喜納彩華
雑踊「加那よー天川」 (踊り手) 阿嘉修 小嶺和佳子
(地謡)
(歌三線)上原睦三・仲村逸夫・玉城和樹
(箏)新垣和代子 (笛)入髙西諭 (胡弓)森田夏子 (太鼓)川満香多
・うちなーミュージカル公演 「かりゆし・かりゆし~恋するシーサー~」
シーサー(夫)・人間(女):小嶺和佳子
シーサー(妻)・人間(男):玉城匠
(地謡)髙宮城実人・玉城和樹・入髙西諭・森田夏子・島袋奈美・新垣和代子
(後見)川満香多・大浜暢明・喜納彩華・玉城知世
(脚本・演出)嘉数道彦
(振り付け)阿嘉修
(音楽)仲村逸夫
国立劇場おきなわ は、2015年8月7日から8月9日に掛けて、「琉球フェスタ」を、竣工間もないウェスタ川越にて「開館記念公演」の一環として上演した。国立劇場おきなわ の沖縄県外公演の機会は少ないので、貴重な機会である。7日は前夜祭、8・9日が本公演である。本公演は13時から21時頃まで掛けて、古典からコンテンポラリーまで幅広いジャンルの琉球舞踊を展開した。この感想は、8月8日公演のものである。なお、この公演は沖縄県文化観光戦略推進事業の助成を受けている。
着席位置はど真ん中やや前方。客の入りは3割弱であろうか、二階席・三階席は閉鎖、観客の鑑賞態度は、若干のノイズと公演中の入退場があった。29列まである一階席は、22列目に音響調整卓を置いていて、その前方に観客がいる形であるが、当然左右両端には空席が目立った。
「かりゆし・かりゆし~恋するシーサー~」では観客の数が200名規模で、苦笑してしまうほどのガラ空き状態である。
この客席の状況は妥当で、誰かの努力不足だとか、そんな問題ではなく、そもそもウェスタ川越の1700名規模のホールが大き過ぎる。国立劇場おきなわ の張り出し舞台時の席数は600名弱、東京から離れた川越での公演、琉球舞踊に対する関心を持っている人たちの少なさを考えれば、これだけ集まればいい数字である。
組踊「二童敵討」は、張り出し舞台の形であるが、舞台の上に張り出し舞台を載せた形で、本拠地と同様に客席に張り出す形にならなかったのは残念であるが、アウェイ公演でもあり止むを得ないか。
演目の性格上、踊りの見所が少なめであり、初めて組踊を観る観客を対象とするには、刺激が足りないかもしれない。本年1月に上演した「辺戸の大主」にしておいた方が、ストーリー性はないけれど、純舞踊的要素としては圧倒的に面白いような気はする。
三線音楽「うた・さんしん」と合わせ、宮廷舞踊であれ雑踊であれ、様式美を満たしているように思えた。歌と楽器とのバランスが概して取れていたため、声量の小ささは感じられなかった。[島々のうた]でのみ、生音でなく電気的に増幅を掛けていたかもしれない。
このような事を書いたら怒られるかもしれないが、実のところ、現代琉球舞踊劇「かりゆし-かりゆし-恋するシーサー」が一番好みであった。2014年3月3日に初演になったばかりの、伝統のない現代演目であり、意外な結果であったのだけれど。
沖縄県文化観光戦略推進事業の補助金を受け、2014年3月と2015年3月に国立劇場おきなわ小劇場でそれぞれ四公演上演され、第9公演目にしてようやく本土での公演となった。
国立劇場おきなわ の芸術監督である嘉数道彦による脚本・演出である。
伝統と現代を組み合わせたり、琉球語と共通語を対比させたりするのが巧妙だ。歌も踊りも完成度が高い。伝統的な琉球の楽器を用いたのは効果的である。楽器と舞踊についてはブレずに伝統路線を堅持したのは正解である。ストーリーの構成も無理がない展開である。人間ではそのままであるが、シーサーでは夫を女性が演じ、妻を男性が演じたのも面白い。
伝統を知り尽くした嘉数道彦ならではの、初心者向けとは侮れない、実に素晴らしい作品であった。
2015年8月11日火曜日
2015年1月24日土曜日
国立劇場おきなわ 組踊公演「辺戸の大主」 評
2015年1月24日 土曜日
国立劇場おきなわ (沖縄県浦添市)
【第一部】
琉球舞踊
「松竹梅鶴亀」:名嘉正光・新屋敷孝子・赤嶺光子・ 金城由美子・藤戸絹代
「獅子舞」:諸喜田千華・知念みさ子・上間悦子・宮平友子
「取納奉行」:喜納かおり
「鳩間節」:宮城茂雄
「打組むんじゅる」:奥原めぐみ・喜屋武まゆみ
「金細工」:金城保子・松田恵・中村知子
【第二部】
組踊「辺戸の大主」(へどのうぬふし)
辺戸の大主:真境名正憲
辺戸の大主の妻:高江洲清勝
辺戸の比屋:嘉手苅林一
辺戸の子:親泊久玄
孫(娘):名嘉正光・伊野波盛人・佐辺良和・岸本隼人・大浜暢明・田口博章・仲村圭央・佐喜眞一輝
孫(若衆):呉屋智・金城真次
孫(二才):宇座仁一・川満香多
構成振付・立方指導:宮城能鳳
舞踊指導補佐:新垣悟
地謡
歌・三線/上間宏敏・上地正隆・上原陸三
箏/安慶名久美子
笛/我那覇常允
胡弓/川平賀道
太鼓/神山常夫
地謡指導:西江喜春
初めて琉球舞踊を見るべく、那覇まで飛んで、那覇市を僅かに外れた北隣の浦添市にある、国立劇場おきなわに行きます。
着席位置は、一階中央前方、前から三番目の席でほぼ真ん中の特等席と言って良い理想的な位置です。中央部は舞台から客席側に張り出しています。その張り出した場所でも演舞を行うので、張り出し舞台の左右は避けるべきでしょう。
観客の鑑賞態度は、まあ私語が多いです。沖縄ですから♪ヤマトの音楽会の感覚で行ったら、ウソ!と言いたくなるレベルです。
拍手は独特のマナーがあり、踊りが終わって舞台下手側に向かっている最中に行います。その段階では、時謡(管弦楽+歌い手)は続いておりますが、まあ、そういう慣習なので。「郷に入ったら郷に従え」なので、ヤマトの私があれこれ言うべきものではありません。
第一部では、琉球舞踊を六つ程演舞します。女性が中心です。舞台上手側に時謡が付き、踊り手は原則踊りに専念しますが、「打組むんじゅる」ではほんの少し歌を歌います。時謡の歌い手は男声のみですので、女声を入れたい場合は、踊り手が歌うしかありません。「取納奉行」をソロで踊った喜納かおりさんは、娘役に相応しくカワイイです♪
休憩後が、いよいよ組踊「辺戸の大主」です。冒頭、若々しいけど芸術監督があらすじを説明してくれます。
時謡は舞台奥の背景半透明スクリーンの後方につきます。踊り手は女性役を含めて、全て男性になります。歌舞伎と一緒です。
もともと民俗芸能として「長者の大主」という演目があったそうで、これを組踊化したものとのこと、辺戸の大主が120歳になったので、子供の辺戸の比屋(90歳)と辺戸の子(70歳)が相談して、子や孫達を集め、踊ってお祝いをするというものです。とてもあり得ない年齢設定ですが、子孫繁栄といった当時の琉球社会の理想像を示したものだそうです(公演前に講演会を実施していて、そこで説明されていました)。
ストーリーはそれだけで、踊りの前に踊り手を指名して踊ってあげなさいと比屋が言ったり、お祝いの盃を交わしたりした後、踊るだけです♪
ひ孫たちが分担して様々な踊りを披露し、ひ孫たちが全員で踊り、最後に大主・比屋・子も加わり、舞台から退場して演技を終えます。
なんじゃそれって感じのストーリーなので、かなり舞踊の要素に寄った総合芸術です。
様式に従って如何に繊細に踊るか、小道具を的確に用いるかが問われる舞踊と思いました。手先の表現や、扇を一気に広げる音をビシッと決めるような所が、見どころ・聴きどころでしょうか。
琉球舞踊は、バレエ・ダンスとの親和性も大きいです。リフトや32回転フェッテといったような技巧はありませんが、物事の本質にそう大きな違いはないでしょう。
沖縄は遠いですし、なかなか行ける所ではありませんが、観光で沖縄に行く機会があれば、琉球舞踊の鑑賞を是非お勧めしたいです。
国立劇場おきなわ (沖縄県浦添市)
【第一部】
琉球舞踊
「松竹梅鶴亀」:名嘉正光・新屋敷孝子・赤嶺光子・ 金城由美子・藤戸絹代
「獅子舞」:諸喜田千華・知念みさ子・上間悦子・宮平友子
「取納奉行」:喜納かおり
「鳩間節」:宮城茂雄
「打組むんじゅる」:奥原めぐみ・喜屋武まゆみ
「金細工」:金城保子・松田恵・中村知子
【第二部】
組踊「辺戸の大主」(へどのうぬふし)
辺戸の大主:真境名正憲
辺戸の大主の妻:高江洲清勝
辺戸の比屋:嘉手苅林一
辺戸の子:親泊久玄
孫(娘):名嘉正光・伊野波盛人・佐辺良和・岸本隼人・大浜暢明・田口博章・仲村圭央・佐喜眞一輝
孫(若衆):呉屋智・金城真次
孫(二才):宇座仁一・川満香多
構成振付・立方指導:宮城能鳳
舞踊指導補佐:新垣悟
地謡
歌・三線/上間宏敏・上地正隆・上原陸三
箏/安慶名久美子
笛/我那覇常允
胡弓/川平賀道
太鼓/神山常夫
地謡指導:西江喜春
初めて琉球舞踊を見るべく、那覇まで飛んで、那覇市を僅かに外れた北隣の浦添市にある、国立劇場おきなわに行きます。
着席位置は、一階中央前方、前から三番目の席でほぼ真ん中の特等席と言って良い理想的な位置です。中央部は舞台から客席側に張り出しています。その張り出した場所でも演舞を行うので、張り出し舞台の左右は避けるべきでしょう。
観客の鑑賞態度は、まあ私語が多いです。沖縄ですから♪ヤマトの音楽会の感覚で行ったら、ウソ!と言いたくなるレベルです。
拍手は独特のマナーがあり、踊りが終わって舞台下手側に向かっている最中に行います。その段階では、時謡(管弦楽+歌い手)は続いておりますが、まあ、そういう慣習なので。「郷に入ったら郷に従え」なので、ヤマトの私があれこれ言うべきものではありません。
第一部では、琉球舞踊を六つ程演舞します。女性が中心です。舞台上手側に時謡が付き、踊り手は原則踊りに専念しますが、「打組むんじゅる」ではほんの少し歌を歌います。時謡の歌い手は男声のみですので、女声を入れたい場合は、踊り手が歌うしかありません。「取納奉行」をソロで踊った喜納かおりさんは、娘役に相応しくカワイイです♪
休憩後が、いよいよ組踊「辺戸の大主」です。冒頭、若々しいけど芸術監督があらすじを説明してくれます。
時謡は舞台奥の背景半透明スクリーンの後方につきます。踊り手は女性役を含めて、全て男性になります。歌舞伎と一緒です。
もともと民俗芸能として「長者の大主」という演目があったそうで、これを組踊化したものとのこと、辺戸の大主が120歳になったので、子供の辺戸の比屋(90歳)と辺戸の子(70歳)が相談して、子や孫達を集め、踊ってお祝いをするというものです。とてもあり得ない年齢設定ですが、子孫繁栄といった当時の琉球社会の理想像を示したものだそうです(公演前に講演会を実施していて、そこで説明されていました)。
ストーリーはそれだけで、踊りの前に踊り手を指名して踊ってあげなさいと比屋が言ったり、お祝いの盃を交わしたりした後、踊るだけです♪
ひ孫たちが分担して様々な踊りを披露し、ひ孫たちが全員で踊り、最後に大主・比屋・子も加わり、舞台から退場して演技を終えます。
なんじゃそれって感じのストーリーなので、かなり舞踊の要素に寄った総合芸術です。
様式に従って如何に繊細に踊るか、小道具を的確に用いるかが問われる舞踊と思いました。手先の表現や、扇を一気に広げる音をビシッと決めるような所が、見どころ・聴きどころでしょうか。
琉球舞踊は、バレエ・ダンスとの親和性も大きいです。リフトや32回転フェッテといったような技巧はありませんが、物事の本質にそう大きな違いはないでしょう。
沖縄は遠いですし、なかなか行ける所ではありませんが、観光で沖縄に行く機会があれば、琉球舞踊の鑑賞を是非お勧めしたいです。
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