2017年8月6日日曜日

びわ湖ホール オペラへの招待 サリヴァン作曲 コミック-オペラ 『ミカド』 感想

2017年8月5日 土曜日
2017年8月6日 日曜日
滋賀県立芸術劇場びわ湖ホール 中ホール (滋賀県大津市)

演目:
アーサー=サリヴァン 歌劇「ミカド」(日本語版)

ミカド:松森 治
ナンキプー:二塚直紀
ココ:迎 肇聡
プーバー:竹内直紀
ピシュタッシュ:五島真澄
ヤムヤム:飯嶋幸子
ピッティシング:山際きみ佳
ピープボー:藤村江李奈
カティーシャ:吉川秋穂
貴族・市民:平尾 悠、溝越美詩、益田早織、吉川秋穂、川野貴之、島影聖人、増田貴寛、内山建人、宮城島 康 ほか

合唱:びわ湖ホール声楽アンサンブル

美術:増田寿子
照明:山本英明
衣裳:下斗米雪子
振付:佐藤ミツル
音響:押谷征仁(びわ湖ホール)
舞台監督:牧野 優(びわ湖ホール)

管弦楽:日本センチュリー交響楽団
指揮:園田隆一郎

滋賀県立芸術劇場びわ湖ホールは、2017年8月5日から6日までの日程で、園田隆一郎の指揮による歌劇「ミカド」を2公演上演した。この他に、同年8月26日から27日までの日程で、新国立劇場にて2公演上演する。この評は2017年8月5日・6日に催された、滋賀県立芸術劇場びわ湖ホールでの公演に対するものである。

着席位置は二階正面上手側である。チケットは両公演とも完売となった。観客の鑑賞態度は、概ね良好であった。

(以下ネタバレ注意)

演出は、日本語による上演ということもあり、最新の時事ネタをも取り混ぜたものである。レチタティーヴォにて、「防衛大臣は辞任した」の他、中身白紙の100万円ネタがあり、この作品で求められている風刺を実現させている。

背景は、いかにも外国人観光客向けのウェブサイトを連想させるもの。ほとんど大道具はなく、場面転換もなく、いかに低予算で楽しませるかを狙ったものである。

最初のプロジェクターマッピングで鉄道車両を載せてくるが、懐かしい165系を出したり、E5系ではなくJR北海道所有のH5系(紫帯)を出すなど、映像担当者は絶対テツ(鉄道マニア)だろ!と、ツッコミどころ満載である(笑)。

衣装についてはポップなもので、女性についてはカティーシャ以外は全員「コギャル」の攻めた設定だ。

ミカドは、「公然イチャつき禁止法」に違反すると死刑にするは、死刑囚であるはずのココを最高指導者にするは、破茶滅茶の設定である(笑)

歌い手について述べる。

基本的に男声に力量のあるソリストを配置したことが分かる。

事実上の主役ナンキプー役の二塚直紀は、伸びやかな声量でアクセントを付け、終始全歌い手をリードした。ココ役の迎肇聡も、十二分にある声量だけでなく、その演技力で観客を沸かした。ナンキプーとココと、最も重要な役が素晴らしく、この公演の成功に貢献した。

ミカド役の松森修、プーパー役の竹内直紀も、コミカルな演技と十分な声量で魅了された。

女声では、やはりカティーシャ役の吉川秋穂が圧巻の出来で、この役に必要な貫禄を見せつけた。このストーカー女がやらかさないと面白くならないが、その責を十二分に果たしたと言える。

第一幕での数名規模までの合唱は、二日目の方が良かったか。第二幕前半の五重唱は、両日とも素晴らしい。

歌と管弦楽とのバランスも的確に取られており、歌い手が活きるように、歌と管弦楽とのアンサンブルがよく考えられる。

びわ湖ホールでの公演では、プロセニアムの両脇に日本語、上方に英語の字幕があった。字幕を見ると演者を見なくなる作用もあり、字幕の功罪について述べると長くなるので差し控えるが、字幕を出すのであれば、英語をも出したことは評価に値する。

テアトロ-レアル(マドリード)・リセウ歌劇場(バルセロナ)・ハンブルグ州立歌劇場・チューリッヒ歌劇場でも、現地語に加えて英語字幕は実施されており、もはやグローバルスタンダード、当たり前と言えば当たり前であるが、日本では新国立劇場でも行なっていない事を、手間を掛けて実施した先駆的な試みである。新国立劇場でも、このびわ湖ホールの試みは見習うべき点ではないか。8月26日27日の新国立劇場での上演時でも、英語字幕を実現して欲しい。

ラストは、タコ焼きに阪神タイガースネタを出したり、ミカドはランニング姿になるなど、衝撃的な結末となった(笑)。