2020年8月25日火曜日

「竜宮」ワルイ子諜報団 座談会

2020年7月24日から29日まで、新国立劇場にて上演された、新国立劇場バレエ団「竜宮」についての座談会。

この公演については、あきらにゃん が長野県外に出られない事態になったことを踏まえ、「ワルイ子諜報団」工作員に対し、無償にてチケットが譲渡され、対価としてレポートが あきらにゃん に対して送付されることとなった。

今回、ワルイ子諜報団 工作員各位の好意があり、座談会が開催できた。その内容をここに記したい。

以下)あ:あきらにゃん(司会) ・:ワルイ子諜報団工作員

1. 企画面について

・ホワイエに入った途端、「竜宮」に特化したBGMが流れ、海の物語への期待感を持った。森山開次氏の目の行き届き具合が素晴らしい。

・会場運営面でも、予想以上にスムーズな入場であった。すでに小劇場で「願いがかなうぐつぐつカクテル」が13公演も実施されており、オペレーション面での経験値が「竜宮」開催の時点で上がっていたと思われる。観客が最大745名(あ注:4階席を用いないため、定員は1490名、新型コロナウイルス感染症対策のため空席があり、観客数は最大でもその半分の745名となる)に制限されたことも、円滑な入場の助けになったと考えられる。

・亀の姫・浦島太郎・タイ女将・竜田姫を除き、AキャストとBキャストはかなり厳格に分けられていた。全公演に出演(AキャストとBキャスト両方に入っている)したダンサーは、広瀬碧さんと横山柊子さんの二名だけだった。万一の事態でも、最低限のレベルによる公演が持続できる体制にしていたか?

あ:役の数は90ありますが、34名のダンサーで演じており、一人二役や三役は当たり前でしたね。


2. 舞台装置・照明・音楽・振り付けについて

・生オケが入らない演目であり、オケピに舞台を2mほど延長していた。

・客席に入った時点で、特設のプロセニアムアーチが設営されており、観客を物語の環境へ導いていた。

・照明についてはプロジェクションマッピングを用いた秀逸なもの。舞台天井部から床への照射もしており、二階席・三階席からも楽しめるもの。

・春や秋の場面は美しかったですね。亀の姫が最後舞台奥から進む場面の光の道も素晴らしい。

・音楽は、タンゴから琉球音楽を思わせるものまで多様な素材を用い、パッチワークを上手く組み合させていた。

・振り付けは、「亀の姫」の出演時間が短めで物足りないが、最低限は確保したと言える。改訂の必要性があるとするならば、「亀の姫」の振りをより充実させる方向性になるか?

・多様なディヴェルティスマンを揃え、見どころは多かった。新人を含め、下位階級のダンサーたちにも見所がある配役で、アピールのチャンス、ダンサー各位からの宣伝がいつもより熱を帯びていた感があったが、道理である。

・被せるのが実に上手い。亀の小舟の場面は、単なる道行きになるところ、ウサギと亀の寓話を挿入したり、浦島太郎から鶴に着替える場面で天平美人二人組で視線を引き付けたりして、退屈にならないようにしている。

・ダンサーの背中を強調していますね。エイボンは背中を観客に見せるのが定位置だし。冬の場面の婚礼も、背中を見せての登場だった。


3. 主役級のダンサーについて

・やはり米沢唯さんがダントツであった。長い上肢の扱いが実に巧みで、鳥のよう(亀のヒレだけど(笑))。鷹揚でありながら自立心が強い亀の姫。夫婦明神になる場面はプリマオーラが輝かしく圧巻。随所で感じられる所作の美しさは、誰にも真似できない。

・井澤駿さんは、本来浦島太郎のキャラではないが、優しさが表に出るので、妙に王子っぽいが適合する。「どんぐり」の場面での踊り真似が「下手」なのはご愛敬。鶴になってからが妙にカッコ良すぎで、イケメンオーラ炸裂。

・森山開次さんが、キャラクター設定をするに当たって焦点に当てたのは、池田理沙子さんと奥村康祐さんのコンビか?衣装からしても、この二人に焦点を合わせたような感がある。何も作為を加えなくても、そのままで成立している。

・池田理沙子さんは、別れの場面での悲しみの表現が実現されていた。これまで、明るめな役か人形役かが適任で、古典演目の際に、例えばグランフェッテの間全く表情が変わらない場面も見受けられたが、その弱点は克服されたと思う。表情が動く振り付けに助けられたかも知れないが。

・奥村康祐さんも本当に浦島太郎が似合ってたなあ。役に想定される「大衆」的な外見とか。タイ女将と金魚たちの踊り手(女性7人))に囲まれて、うれしそうにニンマリする場面は、リアルな性格そのものだろ(笑)

・木村優里さんは、圧倒的な米沢唯さん、演目のキャラクターそのまんまの池田理沙子さんと比べると、役の在り方に難しさを感じたが、まあまあ。

・優里さん、小舟をポワントで20cm前方に動かして出発して欲しかった。彼女だけポワントで小舟が動かない。

・たかふみ君が完全にキャラを外していて、全く「浦島太郎」ではなかった。見た目の問題の要素があり、難しいところではあるが。

・たかふみ君、キャラが中途半端な感じがする。駿君のような優しさが感じられず、康祐くんのような「そのまんま」感もないので、「違う」「弱い」という印象になってしまう。

・たかふみ君、小舟の場面で、垂直に立ってる柱を押すのは、あり得ない。あれはない。あの場面は、亀の姫が竜宮に浦島太郎を運んでいるのだから、「浦島太郎が手伝っている」ような在り方は絶対にあり得ない。女性を使役させてるのかよ、って感じになってしまうけど、そういう設定なのだから。

・小舟の場面、米沢唯さんは全部自分で引っ張り、井澤駿くんはほんの僅か軌道修正をしたくらいで、あちこち景色を楽しんでいた。この在り方が正しい。たかふみ君は小舟を押してばかりだった。

・小舟の場面は、奥村康祐さんは前後方向に延びている手すりを掴んでいる形であり、手伝っている感を全く出していない。全部理沙子さんが引っ張った形にしている。女の子大好き~の康祐の奴、なんだかんだ言って優しいのだと思う。

・いわゆる「ゆりたか」コンビ、是非はともかく、綿密に演技のすり合わせをして臨むスタイルなのに、今回はチグハグ感が否めない。

あ:そうでしたか。たかふみ君にとっては相性が悪かった役なのかも知れないですね。


4. その他の役のダンサーについて

・本島美和さんが、タイ女将、竜田姫、両方とも素晴らしい。

・美和りんのタイ女将、すごい貫禄でしたな。ヤクザのリーダーになれるよ(笑)

・コラコラ、呪われちゃうぞ(笑)

・細田千晶さんの竜田姫は、儚さを感じた。

・美和さんの竜田姫は、激しい女の情念でしたなあ。千晶さんとは対照的。

・竜田姫はどういう解釈ですか?皆さん?

・うーん、秋の儚さだったり、散るという印象なのかなあ?あまり考えすぎない方が良さそう?

あ:タイ女将や竜田姫は、ワルイ子ちゃんだったの?

・いや違う。貫禄だったり情念だったりであっても、ワルイ子ちゃんじゃない。

あ;ワルイ子ちゃんいなかったんだ?

・「わっぱ六兄弟」がワルイ子ちゃん。誰が演じているのかは知っているのに、六人それぞれが、誰が誰だかさっぱり分からなかった。


・五月女遥さんの織姫、妙に似合っていた。

・遥さん、福田圭吾くんと良く似合ってましたね。

・Aキャストは小柄、Bキャストは長身の印象!スケール感がかなり統一されていたような。

・バレエ団公式ウェブサイトからの動画配信で見られるけれど、金魚六人群舞はAキャストBキャストとも実に見事。世界最強の群舞の実力を発揮している。


5. その他何か伝えたいことありましたか?

・ブラヴォー禁止令が出たため、スタオベで称賛する形が瞬く間に定着した感じ。

・最大でも745名しか観客がいないはずなのに、1790名満席の時と同様の拍手の圧。その一員になれたことに、変な言い方だけど、観客としての誇りがあった。


6. 終わりに

あ:長野県から出られない我が身、その私の目となり耳となってくださった「ワルイ子諜報団」のレポートに感謝しております。座談会での生の感想も役立ちます。

・いえいえ、良席を無償提供してくださり、ありがとうございました。

・前から9列目で、床へのプロジェクションマッピングをも背景にした席で見られて、感謝感激です。

あ:今後、新型コロナウイルス感染症蔓延が落ち着くか改善するか分かりませんが、私自身も佐世保や富山で、この目で見てみようと思います。座談会に出席ありがとうございました。