2014年5月10日 土曜日
宮崎県立芸術劇場 (宮崎県宮崎市)
曲目:
ヨハネス=ブラームス 交響曲第2番 op.73
(休憩)
ヨハネス=ブラームス ヴァイオリンとヴァイオリン-チェロのための二重協奏曲 op.102
ヴァイオリン:ピンカス=ズッカーマン (Pinchas Zukerman)
ヴァイオリン-チェロ:アマンダ=フォーサイス (Amanda Forsyth)
管弦楽:宮崎国際音楽祭管弦楽団
指揮:ピンカス=ズッカーマン(交響曲)・徳永二男(二重協奏曲)
第19回宮崎国際音楽祭は、2013年4月29日から5月18日までにわたり、宮崎県立芸術劇場を中心に、室内管弦楽・室内楽を中心に10以上の公演を開催し、無事終了した。この評は、演奏会2、「ブラームス・深淵なる響き」の題名の下5月10日に開催された演奏会に対してのものである。
宮崎国際音楽祭に臨席するのも、ピンカス=ズッカーマンの演奏を聴くのも二度目である。着席位置は、一階中央僅かに下手側である。観客の入りは六割程で、一階後方、二階三階バルコニー席に空席が目立つ。観客の鑑賞態度は、僅かに拍手のタイミングが早いが、概ね良好であった。
管弦楽配置は、舞台下手側から第一ヴァイオリン→第二ヴァイオリン→ヴァイオリン-チェロ→ヴィオラの順である。
交響曲2番は、第二・第三楽章の木管・ホルンが素晴らしい音色で響かせる。特に第二楽章のホルンのソロは、まあバボラーク程ではないけれど、それでも確実に決めて引き締める演奏だ。全般的に荒削りの箇所がないとは言えないが、管弦楽それぞれがパッションを出せば良い出来になるのだと実感させられる。2009年の小澤征爾指揮によるサイトウ-キネン-オーケストラの演奏はあまりにつまらなく覇気がなく無気力で、最後の90秒以外は聴いていられない状態で、この曲が嫌いになっていた状態であったが、宮崎で再びこの第二交響曲の魅力を認識させられる演奏に出会える。今日の演奏は、もちろん最後の90秒の盛り上がりも、全管弦楽が精緻に揃い綺麗に決める。
二曲目の二重協奏曲は、ズッカーマンのソロが聴ける事もあり、ほぼこの曲目当てに宮崎まで来たようなものだ。どのような出来となるだろうか。
第一楽章冒頭、アマンダ=フォーサイスのチェロの音が細く、ピンカス=ズッカーマンのヴァイオリンはどう考えてもアマンダを庇っている演奏で、いつものズッカーマンらしさが希薄となってしまう。第一楽章冒頭ではアマンダのチェロの音の細さが影響して、音の多い箇所でズッカーマンとの二人のソロでどのような音を伝えるのか、不鮮明な箇所もあった。しかし、曲が進むにつれ是正される。
一方管弦楽は冒頭から全力全開で思いっ切りの良い演奏で、ホールを豊かな響きで満たす。まるでソリスト(特にアマンダ)に対して総決起を促しているかのようなパッションに溢れている。ソリスト級を含め力のある楽団員を揃えている宮崎国際音楽祭管弦楽団の本領が十全に発揮されている。
このような管弦楽の決起と、ズッカーマンがアマンダに引きずらずにマイペースを取り戻し、アマンダも十分ではないにしろ響かせる演奏になっていく。ここまで来れば、全てがうまく噛み合う演奏となる。宮崎県立芸術劇場の素晴らしい残響を味方につけ活かした、素晴らしい演奏だ。
アンコールはコダーイの「ヴァイオリンとヴァイオリン-チェロ二重奏曲」から一曲であった。
2014年5月10日土曜日
2013年5月18日土曜日
ピンカス=ズッカーマン + 宮崎国際音楽祭管弦楽団 演奏会 評
2013年5月18日 土曜日
宮崎県立芸術劇場 (宮崎県宮崎市)
曲目:
ヨハネス=ブラームス セレナード第2番 op.16
ヨハネス=ブラームス ハイドンの主題による変奏曲 op.56a
(休憩)
ヴォルグガング=アマデウス=モーツァルト ヴァイオリン協奏曲第3番 K.216
ヴォルグガング=アマデウス=モーツァルト ロンド(ハフナーセレナード K.250より)
ヴァイオリン:ピンカス=ズッカーマン
管弦楽:宮崎国際音楽祭管弦楽団
指揮:ピンカス=ズッカーマン
第18回宮崎国際音楽祭は、2013年4月29日から5月18日までにわたり、宮崎県立芸術劇場を中心に、室内管弦楽・室内楽を中心に10以上の公演を開催し、無事終了した。この評は、最終公演、5月18日に開催された演奏会に対してのものである。
宮崎国際音楽祭に臨席するのも、ピンカス=ズッカーマンの演奏を聴くのも初めてである。着席位置は、一階ほぼ中央である。
一曲目の配置は、舞台下手側から第一ヴァイオリン→第二ヴァイオリン→ヴァイオリン-チェロ→ヴィオラの順であり、二曲目以降は第一ヴァイオリン→第二ヴァイオリン→ヴィオラ→チェロの順となる。
前半のブラームスは、弦楽ベースの上に綺麗に管楽セクションが乗っかる演奏である。冒頭から響きのバランスに良く配慮されているのがよく分かる。
二曲目の「ハイドンの主題による変奏曲」は編成が大きくなったのが影響したのか、若干弦楽の線が乱れたところはあるが、全般的に良い演奏である。曲が曲なだけに、ちょっとしんみりした気持ちになって、前半を終了する。
休憩後の一曲目、モーツァルトのヴァイオリン協奏曲3番K.216は、ズッカーマンがヴァイオリン-ソロと指揮を兼ねる指揮振りだ。冒頭、パッション溢れつつも縦の線がビシッと決まった管弦楽が、観客の心を見事に掴む。前半のブラームスから雰囲気がぐっと明るくなる。ズッカーマンのソロは名状し難い魅力がある。何とも説明はし難いのだが・・、ズッカーマンのヴァイオリンは管弦楽に負けず、朗々と響いていく。弱めな音であっても、どういう訳か響いてくる。ズッカーマンが持つヴァイオリンの癖のある音色を、極めて計算して響かせる演奏である。
最後はK.250「ハフナーセレナーデ」から、ロンド。だんだんパワーアップして来た今日の演奏であるが、モーツァルトの協奏曲の成果をぎゅっと凝縮させた演奏だ。確かな技巧はあるが、超絶技巧を前面に出した演奏ではなく、しかし絶妙な味があって、本当に幸せな気持ちになれる演奏会であった。
宮崎県立芸術劇場 (宮崎県宮崎市)
曲目:
ヨハネス=ブラームス セレナード第2番 op.16
ヨハネス=ブラームス ハイドンの主題による変奏曲 op.56a
(休憩)
ヴォルグガング=アマデウス=モーツァルト ヴァイオリン協奏曲第3番 K.216
ヴォルグガング=アマデウス=モーツァルト ロンド(ハフナーセレナード K.250より)
ヴァイオリン:ピンカス=ズッカーマン
管弦楽:宮崎国際音楽祭管弦楽団
指揮:ピンカス=ズッカーマン
第18回宮崎国際音楽祭は、2013年4月29日から5月18日までにわたり、宮崎県立芸術劇場を中心に、室内管弦楽・室内楽を中心に10以上の公演を開催し、無事終了した。この評は、最終公演、5月18日に開催された演奏会に対してのものである。
宮崎国際音楽祭に臨席するのも、ピンカス=ズッカーマンの演奏を聴くのも初めてである。着席位置は、一階ほぼ中央である。
一曲目の配置は、舞台下手側から第一ヴァイオリン→第二ヴァイオリン→ヴァイオリン-チェロ→ヴィオラの順であり、二曲目以降は第一ヴァイオリン→第二ヴァイオリン→ヴィオラ→チェロの順となる。
前半のブラームスは、弦楽ベースの上に綺麗に管楽セクションが乗っかる演奏である。冒頭から響きのバランスに良く配慮されているのがよく分かる。
二曲目の「ハイドンの主題による変奏曲」は編成が大きくなったのが影響したのか、若干弦楽の線が乱れたところはあるが、全般的に良い演奏である。曲が曲なだけに、ちょっとしんみりした気持ちになって、前半を終了する。
休憩後の一曲目、モーツァルトのヴァイオリン協奏曲3番K.216は、ズッカーマンがヴァイオリン-ソロと指揮を兼ねる指揮振りだ。冒頭、パッション溢れつつも縦の線がビシッと決まった管弦楽が、観客の心を見事に掴む。前半のブラームスから雰囲気がぐっと明るくなる。ズッカーマンのソロは名状し難い魅力がある。何とも説明はし難いのだが・・、ズッカーマンのヴァイオリンは管弦楽に負けず、朗々と響いていく。弱めな音であっても、どういう訳か響いてくる。ズッカーマンが持つヴァイオリンの癖のある音色を、極めて計算して響かせる演奏である。
最後はK.250「ハフナーセレナーデ」から、ロンド。だんだんパワーアップして来た今日の演奏であるが、モーツァルトの協奏曲の成果をぎゅっと凝縮させた演奏だ。確かな技巧はあるが、超絶技巧を前面に出した演奏ではなく、しかし絶妙な味があって、本当に幸せな気持ちになれる演奏会であった。
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