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2016年4月23日土曜日

Kioi Sinfonietta Tokyo, the 104th Subscription Concert, review 第104回 紀尾井シンフォニエッタ東京 定期演奏会 評

2016年4月23日 土曜日
Saturday 23rd April 2016
紀尾井ホール (東京)
Kioi Hall (Tokyo, Japan)

曲目:
Gabriel Fauré: ‘Masques et Bergamasques’ op.112
Ludwig van Beethoven: Concerto per pianoforte e orchestra n.4 op.58
(休憩)
Franz Joseph Haydn: Sinfonia n.103 Hob.I:103

pianoforte: Imogen Cooper / イモジェン=クーパー
orchestra: Kioi Sinfonietta Tokyo(紀尾井シンフォニエッタ東京)
direttore: Trevor Pinnock / トレヴァー=ピノック

紀尾井シンフォニエッタ東京(KST)は、トレヴァー=ピノックを指揮者に、イモジェン=クーパーをソリストに迎えて、2016年4月22日・23日に東京-紀尾井ホールで、第104回定期演奏会を開催した。この評は、第二日目の公演に対してのものである。

管弦楽配置は、舞台下手側から、第一ヴァイオリン→ヴァイオリン-チェロ→ヴィオラ→第二ヴァイオリンの左右対向配置で、コントラバスは中央最後方につく。木管パートは後方中央(コントラバスの手前)、ホルンは後方下手側、トランペットは後方上手側、ティンパニは上手側、ハープは下手側の位置につく。ティンパニはモダンタイプとバロックタイプの二種類を準備し、フォーレ作品のみモダンタイプを用いた。

着席位置は一階正面後方僅かに上手側、チケットはほぼ完売している。観客の鑑賞態度は、若干のノイズはあったが、拍手のタイミングも適切であった。

トレヴァー=ピノックの解釈は全般的に端正なものである。おそらく楽譜に

私にとっての白眉は、二曲目のBeethoven ピアノ協奏曲の4番であった。

イモジェン=クーパーのピアノは全般的に遅く、特に第一楽章で顕著だ。第一楽章前半部ではその遅さに加え曲想上も手を入れにくいのか、覚醒状態が高くなければ眠くなる演奏である。しかし、後半部からは、その遅いテンポでなければ見えてこないものを表現し、遅いテンポの中で揺らぎを入れて表情付けを行い始める。カデンツァも説得力のあるものだ。

第二楽章では、弦楽が深く強く美しい表現響きで始めた後で(今日の管弦楽で一番素晴らしい箇所だった!)、臨終間近を思わせる儚い弱奏のピアノとの対比が面白い。管弦楽はしばらくして強く響かせるのをやめ、同じ方向性を向いた弱奏でピアノに寄り添う。

第三楽章は、通常よりもわずかに遅い程度のテンポか?イモジェンのピアノは必要以上に強い演奏でなく、控えめで溶け込ませ、管弦楽と同じ方向性を持つものである。

全般的にイモジェンのピアノは、遅いテンポの基調でなければ不可能な表現をニュアンス豊かに行うスタイルで、超絶技巧を披露する派手系な路線の対極に位置する。好き嫌いが別れる演奏であることは間違いない。正直観客の反応が心配だったが、是と感じる知的な反応をする観客は思った以上に多く、暖かい反応で前半を終えた。

アンコールは、シューベルト、キプロスの女王 ロザムンデ より 第三幕の間奏曲であった。

2015年7月12日日曜日

Kioi Sinfonietta Tokyo, the 20th Anniversary Concert, review 紀尾井ホール・紀尾井シンフォニエッタ東京 創立20周年 特別演奏会 評

2015年7月11日 土曜日
Saturday 11th July 2015
紀尾井ホール (東京)
Kioi Hall (Tokyo, Japan)

曲目:
Johann Sebastian Bach: Messa in Si minore BWV.232 (ミサ曲ロ短調)

soprano: Sawae Eri, Fujisaki Minae / 澤江衣里, 藤崎美苗
contralto: Aoki Hiroya / 青木洋也
tenore: Nakashima Katsuhiko / 中嶋克彦
basso: Kaku Toru / 加耒 徹

Coro: Kioi Bach Chor (合唱:紀尾井バッハコーア)
orchestra: Kioi Sinfonietta Tokyo(紀尾井シンフォニエッタ東京)
direttore: Trevor David Pinnock / トレヴァー=ピノック

紀尾井シンフォニエッタ東京(KST)は、トレヴァー=ピノックを指揮者に迎えて、2015年7月10日・11日に東京-紀尾井ホールで、「紀尾井ホール・紀尾井シンフォニエッタ東京創立20周年記念 特別演奏会」を開催した。この評は、第二日目の公演に対してのものである。

管弦楽配置は、舞台下手側から、第一ヴァイオリン→第二ヴァイオリン→ヴァイオリン-チェロ→ヴィオラのモダン配置で、コントラバスはチェロの後方につく。第二ヴァイオリンとチェロとの間にオルガンが置かれ、指揮台にはチェンバロが置かれ、オルガン奏者と向かい合う形となる。そのチェンバロは、ピノックによって弾かれる。

フルートは後方中央の下手側、後方中央の上手側には、下手側からオーボエ→ファゴットの順に配置される。ティンパニとトランペット、ホルンは、最も下手側に位置し、下手側バルコニーからは見えない位置だ。

着席位置は一階正面後方中央、チケットは完売している。観客の鑑賞態度は、極めて良好であった。

冒頭の合唱から心を捕まされる。紀尾井バッハコーアは、実質的にバッハ-コレギウム-ジャパンの合唱である。澤江衣里、青木洋也、中嶋克彦が素晴らしい。澤江衣里・中嶋克彦の二重唱は、実に相性が良くて前半の白眉である。

澤江衣里のソプラノは、終始自由自在に紀尾井ホールを響かせ、やり過ぎない程度にドラマティックで、歌唱分野をリードしている。

一方で青木洋也のコントラルトは、切々と訴える表現で、聴衆の心に語りかける。主に憐れみを乞う内容を踏まえ、紀尾井ホールの響きを的確に味方につけて歌い上げる。ソプラノとは対称的な役割を与えられているコントラルトであるが、完成度高い歌唱で、心を惹きつけられるソロである。

合唱は30人弱の規模でも、紀尾井ホールでは迫力をも伴う。下手側のソプラノが二歩前に出ると、天国が出現する。私は、他のパートから二歩前に出てくるBCJのソプラノが大好きで、完全に私の好みの展開でもある。

一方管弦楽は控え目で、奇を衒わない方向性でありながら、パッションを込めるべき所は実は攻めている。トランペットの響きは、突出させず精妙にブレンドさせる方向性である。この曲のこの箇所はこのように演奏される必要があると、高い理解の下で弾かれている印象を持つ。

Sanctusでは合唱・管弦楽・ホールが三位一体となって迫ってくる。響きが綺麗なだけでなく、迫ってくるというのが大切なのだ。800席の中規模ホールである、紀尾井ホールならではの響きである。このような響きを指向した紀尾井ホールの20周年を祝福するような、幸福感に満ちた時間だ。

今日は紀尾井ホール始まって以来の観客の素晴らしさだった。演奏中に寝ている人たちはいても(曲想上、これは仕方ない♪)物音はほとんどなかったし、何よりも、指揮者が明確に終了の合図を出してから拍手が沸き起こった事は重大な意味を持った。

曲を終える際の響きの消え去り方は本当に絶妙だった。あのような美しい響きの消え去り方は、なかなか味わえない。最後のあの響きの消え去りの絶妙さは、観客によって尊重され、共有された。"Dona nobis pacem" 平安は我らに与えられた。