2016年9月19日月曜日

Aichi Prefectural Art Theater, Opera ‘Die Zauberflöte’ review 愛知県芸術劇場 歌劇「魔笛」 感想

2016年9月19日 月曜日
Monday 19th September 2016
愛知県芸術劇場 (愛知県名古屋市)
Aichi Prefectural Art Theater (Nagoya, Japan)

演目:
Wolfgang Amadeus Mozart: Opera ‘Die Zauberflöte K.620
ヴォルフガング=アマデウス=モーツァルト 歌劇「魔笛」

Sarastro: 妻屋秀和 / Tsumaya Hidekazu
Regina della Notte: 高橋維 / Takahashi Yui
Tamino: 鈴木准 / Suzuki Jun
Pamina: 森谷真理 / Moriya Mari
Papageno: 宮本益光 / Miyamoto Masumitsu
Papagena: 醍醐園佳 / Daigo Sonoka
dama1: 北原瑠美 / Kitahara Rumi
dama2: 磯地美樹 / Isochi Miki
dama3: 丸山奈津美 / Maruyama Natsumi
oratore del tempio / sacerdote1: 小森輝彦 Komori Teruhiko
Monostatos: 青柳素晴 / Aoyagi Motoharu
sacerdote2: 高田正人 / Takada Masato
armigero1: 渡邉公威 / Watanabe Koi
armigero2: 小田桐貴樹 / Otagiri Takaki
ballerina: 佐東利穂子 / Sato Rihoko

Coro: Aichi Prefectural Art Theater Chorus (合唱:愛知県芸術劇場合唱団)
ballerini: 東京バレエ団 / The Tokyo Ballet

Director: 勅使川原三郎 / Teshigawara Saburo
Set design: 勅使川原三郎 / Teshigawara Saburo
Costumes design: 勅使川原三郎 / Teshigawara Saburo
Lighting design: 勅使川原三郎 / Teshigawara Saburo

orchestra: Nagoya Philharmonic Orchestra(名古屋フィルハーモニー交響楽団)
maestro del Coro: 山口浩史
direttore: Gaetano d’Espinosa (指揮:ガエタノ=デスピノーサ)

愛知県芸術劇場は「あいちトリエンナーレ2016」の一環として、2016年9月17日と19日の日程で、ヴォルフガング=アマデウス=モーツァルトの歌劇「魔笛」を2公演開催した。この評は2016年9月19日に催された第二回目千秋楽の公演に対するものである。

着席位置は一階前方中央である。観客の入りは8割くらいか?観客の鑑賞態度は極めて良好だった。

勅使川原三郎の舞台は、シンプルで、白と黒と金色を基調とし、これら以外の色彩は限定した美しいものである。大きな金色の輪をダンサーたちが回すシーンには目を奪われた。愛知県芸術劇場の奥行きが深い広い舞台をフルに活かし、パミーナとパミーノが舞台奥に退出する場面などで活きた。衣装は諧謔の要素を満たす絶妙なもので、モノスタトゥス・童子たち始め思わず笑ってしまう程だった。

ソリストの出来について述べる。

パミーナ役の森谷真理さんは圧巻の素晴らしさで、終始圧倒的な存在感を示した。声量、ニュアンス、ともに完璧である。「ああ、私には分かる、消え失せたことが」のアリアを含め、強い声、弱い声を問わず、その声を聴くだけで涙腺が潤む。文句なしで一番である!Brava!

「ダンサー」役の佐東利穂子さんは、一番最初に動き出し、終始ダンスの面で魅了させるだけでなく、ナレーターが見事だった。声にある種の威厳があり、観客に緊張感を持たせ、物語を進行させた。カラス-アスパラスでの実験がこの大舞台で結実している。

歌い手皆さん士気溢れるものがあった。

その中でも、パパゲーノ役の宮本益光さんは、歌の面も見事であるが、何よりも本人そのまんまの性格と思うほど、諧謔に満ちた演技で魅了された。首吊り未遂の遣り取り始め、全てが役者で実に素晴らしい。

三人の侍女たちも盛り上げた。侍女1(北原瑠美さん)と侍女2・3と分かれる部分もバッチリ決まっていた。合唱団も素晴らしい。

また、名フィルの管弦楽は歌を活かすもので、ガエタノ=デスピノーザの見事な構成力を伺われた。名フィルはオケピットに入る事が少なく、松本でのサイトウキネンでよく見られるような、管弦楽の自己主張が強過ぎて歌を殺すような懸念もあったが、これは私の杞憂に過ぎず、全く無用な懸念だった。

#あいちトリエンナーレ #あいちトリエンナーレ2016 #名フィル

2016年9月11日日曜日

国立劇場小劇場、文楽「一谷嫰軍記」・「寿式三番叟」感想

今日(2016年9月11日)は国立劇場小劇場にて、文楽「一谷嫰軍記」の通しと、国立劇場50周年を祝う「寿式三番叟」を、11時00分から20時17分まで九時間を超える長丁場で味わい尽くしました。

「一谷嫰軍記」一段目を観た感想は、一言で言うと、女の人は強い。悪い男どもを、チャンバラで、あるいは弓矢で、見事に成敗していきます!

「一谷嫰軍記」を通しで観劇する意味は、二段目「須磨浦の段」を観れたところにあると思います。三段目の「熊谷桜・熊谷陣屋」は、リアルに起こった「須磨浦の段」の回想であるし、「須磨浦の段」が無ければ活きません。やはり、通しで上演し、通しで観劇するのが基本だと思います。演者・観客とも本当に大変だけど。「須磨浦の段」は、それこそ単独で見取りで成立すると思いました。遠近法を用いた表現方法も見られましたし。演劇として面白いですし、涙腺もウルウルしますし。

一方で、二段目と三段目の間に上演された「寿式三番叟」は、前半下手側に待機していた二体の人形が、後半凄いダンスを繰り広げます。踊り疲れ怠ける演出が入るほどの速いテンポと激しさ!これを人形でやるのが凄い。人形遣いの方、本当に凄い!人形が扇を反転させまくりながらの舞踊は、舞踊公演をご覧になっている方も、鮮やかな印象を与えるものです。単なる祝祭演目ではない、人形劇の一面をみせつけるものでした。

9時間を超過する長い演目ゆえ、チケットの区分けは、一段目・二段目と、「寿式三番叟」・三段目と別れておりましたが、後半の「寿式三番叟」・三段目はチケット完売し、満員御礼の札が出ておりました♪

2016年9月10日土曜日

Orchestra Ensemble Kanazawa, Iwaki Hiroyuki Memorial Concert, review オーケストラ-アンサンブル-金沢 岩城宏之メモリアルコンサート〈没後10年〉 評

2016年9月10日 土曜日
Saturday 10th September 2016
石川県立音楽堂 (石川県金沢市)
Ishikawa Ongakudo (Ishikawa Prefectural Concert Hall) (Kanazawa, Japan)

曲目:
György Ligeti: Lux Aeterna (a cappella)
Samuel Barber: Concerto per violino e orchestra, op. 14
Gabriel Fauré: Requiem, op. 48

violino: Abigail Young (アビゲイル=ヤング)
soprano: 吉原圭子 / Yoshihara Keiko
baritono: 与那城敬 / Yonashiro Kei

coro: 東京混声合唱団 / Philharmonic Chorus of Tokyo
orchestra: オーケストラ-アンサンブル-金沢 / Orchestra Ensemble Kanazawa (OEK)

maestro del Coro: 根本卓也 / Nemoto Takuya
direttore: 山田和樹 / Yamada Kazuki

オーケストラ-アンサンブル-金沢は、吉原圭子(ソプラノ)・与那城敬(バリトン)・東京混声合唱団を迎えて、2015年9月10日に石川県立音楽堂で、岩城宏之メモリアルコンサートを開催した。東京では翌11日にすみだトリフォニーホールにて開催される。

管弦楽配置は、バーバーのヴァイオリン協奏曲では、舞台下手側から、第一ヴァイオリン→第二ヴァイオリン→ヴァイオリン-チェロ→ヴィオラのモダン配置で、コントラバスはチェロの後方につく。木管パートは後方中央、ホルンは後方下手側、他の金管は後方上手、ティンパニは後方さらに上手側の位置につく。

フォーレのレクイエムでは、ヴィオラを8人まで増強する異例の態勢で、指揮者のすぐ前に位置するハープを挟んで、中央下手・上手を占める。ヴァイオリンは下手側で、第二ヴァイオリン首席の江原さんが(美人だからすぐわかる♪)第一ヴァイオリン第3プルト客席側に座る、これまた異例の事態である!チェロは最上手側となる。合唱団は舞台後方、バリトンは指揮者のすぐ下手側、ソプラノはオルガンの高い位置に登場した。

着席位置は一階正面中央やや上手側、客の入りは八割程であろうか。観客の鑑賞態度は、妨害電波発生装置が付いているのにも関わらず、二度携帯着信音がなった。演奏に大きな影響を与えなかったのは幸いであったが。

演奏について述べる。

バーバーのヴァイオリン協奏曲は、特に第二楽章が素晴らしい。管弦楽の弱音が緊張感を保ちながら、アビゲイルのヴァイオリンがニュアンス豊かに奏でた。管楽も華やかに決まったが、弦楽を無視して派手に決めた感はなく、必然性を感じさせるものである。アビゲイルのソロと弦楽管楽打楽が何をすべきか、深く理解している演奏だ。東京公演では、この曲の代わりにベト2を演奏するが、バーバーを演奏せずに保守化路線に日和るのは残念である。

フォーレのレクイエムは、東京混声合唱団に関しては、もう一歩出ても良かったなと思える箇所があるものの、一体感ある管弦楽の力で、このレクイエムの魅力を実感出来る演奏だ。

特に前半部は、下手側にも進出したヴィオラが完璧なリードを見せる。このレクイエムはヴィオラの出来でほとんど決まってしまう事を実感したが、実に見事なヴィオラのニュアンス溢れる音色だ。前面に出るヴィオラを含め、チェロ・コントラバスも含めて、低弦の深い響きが祈りの空間を支配する。また、金管の弱音も的確な響きだ。山田和樹の指揮により、ソプラノ-ソロも上手く引き立たせた。
#oekjp