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2024年5月26日日曜日

新国立劇場バレエ団「ラ バヤデール」2024年4-5月 観劇記録

2024年4月27日(土)から5月5日(日)にかけて、「ラ バヤデール」が新国立劇場バレエ団により上演された。

当方が観劇したのは、4月28日(日)ソワレ・5月4日(土)マチネ・4日(土)ソワレ・5日(日)の四公演である。以下、その記録である。

常日頃から目標としている通り、米沢唯主演公演は全公演臨席、例外を除き他キャスト主演公演は一公演臨席を目標とし、これらの目標は達成された。廣川みくり主演の公演はボイコットした。理由は、2023年11月25日(土)公演に於ける実況見分を踏まえ、この程度の実力で2公演ニキヤ役に割り振ったバレエ団のキャスティングは適切でなく、観客に対する挑発と考えられたからである。


1.概観

公演は全て予定通り上演された。

ニキヤ役については、当方の予測通りの出来、ガムザッティ役については、ファーストセカンドの選定は極めて妥当だった。

パダクションについてはピンクの圧勝、影の三人についてはファーストキャストの圧勝であったが花形悠月だけはファーストキャストと同程度の成果を示した。

若手ダンサーの育成は限定的にしか成果が表れておらず、外部からの補強が急務であると伺わせた。国内バレエ最強の地位は既に揺らいでいる。


2.今回の公演群で最も貢献したダンサー

・米沢唯(ニキヤ)


3. 今回の公演群で最も貢献したダンサーに準ずるダンサー

・直塚美穂(ガムザッティ)

・福岡雄大(ソロル)


4.ニキヤ役について

1位:米沢唯、2位:小野絢子、3位:柴山紗帆 の順であった。順番を付けるとこのような相対的な評価になるが、三人とも主演者としての力量を発揮しており、満足できる出来である。

4-1.米沢唯

特に2024年4月28日ソワレ公演が素晴らしく、世界的なメジャーカンパニーのプリンシパルに比肩する実力を見せる。

ニキヤ役は特に第三幕が難しいが、抜群のコントロールでその幽玄さを表現する。あの幽玄さを表現するには、高度かつ正確な技術が必要であることも思い知らされる。

アレクセイ バクランが導く管弦楽との音楽性は、バクランとの共同作業を思わせるものである。片方が他方に依存することは全くなく、まるで室内楽のような緊密なアンサンブルを想像させる共同作業である。

他方、第二幕終盤の、蛇に噛まれる直前のソロは情感があり、涙腺を潤ませる。

特に2024年4月28日ソワレ公演での米沢唯は、踊りのスケールの正確さ、繊細さ、強さ、美しさ、音楽性の面で、要するに全ての面で無敵であった。踊りの精緻さ、技術的な正確さが表現の強さに直結し、観客に深い圧を与える。

米沢唯の本質は、どの場面においても、研ぎ澄まされた鋭い感覚で身体を制御し、強さと繊細さを同時に併存させ、格調の高さを保ちながら、威厳も情感も変幻自在に表出できる点にある。その特質がこの「ラ バヤデール」でも活きた。

4-2.小野絢子

普通にいいんじゃないの~。

4-3.柴山紗帆

第二幕終盤のソロは、米沢唯同様に情感があり、涙腺を潤ませる。米沢唯の技術や完成度には達していないが、それでも満足できる出来で、ニキヤ配役は妥当である。千秋楽の終盤は圧巻のシェネであった。


5.ガムザッティ役について

直塚美穂の圧勝である。異論は許さない。どう考えても直塚美穂がプリンシパルの出来であり、木村優里は足元にも及ばない。どうして木村優里がプリンシパルの地位であり、直塚美穂の採用時の階級がファースト アーティストだったのか、強い疑問を抱かせる出来である。新国立劇場バレエ団のスタッフの見立て(ダンサーの評価)は「恥を知れ」レベルで崩壊していると言わざるを得ない。直塚美穂をファーストキャストにしたことだけが、唯一の救いである。

5-1.直塚美穂

技術的に完成度が高く、イタリアンフェッテの大技は強い踊りで魅せられる。四人のピンクチュチュを従える真ん中の役割を完璧に果たしている。また、ガムザッティの内面の弱さも見事に表現し、対比の作用で、敢えて強さを見せる要所でナイフのような鋭さを見せることに成功した。

5-2.木村優里

小顔でお目目くりくり、お化粧が上手なだけで(それだけで人気が得られるのだから、新国立劇場バレエ団の観客はチョロい)、到底プリンシパルのガムザッティとは言えない。ほぼ踊らない第一幕こそボロは出していないが、彼女の弱点は第二幕で露呈する。踊りの弱さは、直塚美穂と比較すれば一目瞭然で、どちらがプリンシパルだよと強い怒りを感じながら観劇せざるを得ない。四人のピンクチュチュに対しても礼を失した出来である。第二幕のガムザッティとニキヤの対決は、華やかに決めればそれだけでガムザッティの勝利になるほど、ガムザッティに有利な対決であるが、米沢唯にはもちろん、柴山紗帆にも対抗できないほどの弱さである(てか、木村優里のガムザッティへの怒りが、米沢唯や柴山紗帆の情感あるニキヤで浄化される感じである)。直塚美穂が表現し得たガムザッティの内面の弱さは、木村優里は表現できなかった。目力を強調したメイクをしたために、強さ一辺倒のガムザッティの表現しかできなかったのであろう。木村優里は決して演技派でもない(演技派と勘違いしている観客が多過ぎるので、明確に指摘する)。

5月4日マチネは、木村優里のいつもの技量の弱さが出た公演で、バクランの指揮に全面的に寄りかかって大崩壊を辛うじて防いだ状態で、跳躍が特に汚く、これではイタリアンフェッテ失敗するだろうなと予想したら、その通りの展開になった。あの出来であのような喝采を与えるのは、観客としての見識のなさを示すものであり、世界中のバレエファンに対する恥であると言える。私は、あの時の観客の反応を見て、新国立劇場バレエ団の未来は無くなったと感じた。見る目のない観客に支持されるようなバレエ団など、早晩潰れる憂き目に遭うだろう。


6.ソロル役について

福岡雄大が圧勝である。

6-1.福岡雄大 

全てが完璧なソロルである。男性ダンサーの中で技術はダントツで一位であり、全てが滑らかに運び、かつ戦士としてのキャラクターにも見事に合致する。

6-2.渡邊峻郁

ソロルのキャラクターとは合致しておらず、「何か違う」違和感は感じるものの、特段な破綻はなく、技術的にもまあまあなので、まあ良いのではないか。

6-3.速水渉悟

本領を発揮したとは言えない。基本的にソロは見事だが、盤石なサポート力をつけてもらいたい。新国立劇場バレエ団から指導者の菅野英男が去っていったが、主演男性ダンサーが会得するべきサポートを強力かつ的確に指導できる新たな人材は確保しているのか?


7.その他

7-1.パ ダクション

ピンクとブルーの実力差が顕著である。

ピンクチュチュに重鎮を充てていることもあり、特に池田理沙子・飯野萌子・奥田花純・五月女遥の四人によるパ ダクションは、世界屈指のものである。個々の踊りの力強さと統一感が見事である。

ブルーチュチュは、特に吉田朱里・中島春菜の二人が大味である。花形悠月だけは素晴らしく、彼女が出演した公演は彼女しか見ていない。花形悠月が出演していない公演では吉田明花に注目していた。

7-2.影

第一・第二・第三とも、ファーストキャストである、五月女遥・池田理沙子・飯野萌子の圧勝である。ファーストキャストは、ソロの演技はもちろんのこと、三人で踊る場面では統一感もあり、「3」としての踊りで観客に迫ることに成功している。

セカンドキャスト(変形セカンドキャストを含む)については、第一の花形悠月はファーストと同水準に達していたが、残りはいかがなものか?第二の金城帆香は、4月28日ソワレは明らかに雑だった。5月4日マチネ公演では改善されたが。第三の吉田朱里は、スタビリティーが欠如しており、基本的な技量が不足していると考えられた。当然、「3」としての統一感は感じられない。花形悠月が一人で頑張っても、他の二人の実力が拮抗しなければ、統一感は産まれない。


8.指揮・管弦楽

バクランの指揮に東京フィルハーモニー交響楽団の管弦楽はよく応えた。バクランによるダンサーへの音楽的サポートは実に見事である。


9.意見事項

下記の通り意見する。

・現状、重要脇役を担うソリスト級ダンサーがスカスカとなり掛けている。直塚美穂・花形悠月・山本涼杏のような有望な若手は存在するが、数が足りない。ビントレー世代の引退とともに、致命的な影響が公演水準に齎されるだろう。国外バレエ団からの帰国組にも触手を伸ばすなど、30歳前後までの強力な若手の補強が急務である。

2023年6月22日木曜日

新国立劇場バレエ団「白鳥の湖」2023年6月 観劇記録

 2023年6月10日(土)から18日(日)にかけて、「白鳥の湖」が新国立劇場バレエ団により9公演上演された。
当方とワルイ子北陸により5公演観劇した。この観劇記録は、ワルイ子北陸との合議により作成された。
当記録の対象は、2023年6月10日・11日マチネ・13日・17日ソワレ・18日公演を対象とし、その他の4公演は対象としない。

1.概観
公演は全て予定通り上演された。
米沢唯と福岡雄大がともに絶好調であった6月13日公演が最も素晴らしく、米沢唯の最終公演である6月17日公演が僅差で追った。6月11日マチネの柴山紗帆+井澤駿+速水渉悟も完成度が高く、柴山紗帆と速水渉悟のプリンシパル昇格を確実にした公演であった。


2.オデット/オディール役について

2-1.米沢唯
13日・17日ソワレと、傑出したオデット/オディール役を披露した。オデットもオディールも世界最高水準の出来で(これ自体が稀有な存在)、本調子の米沢唯に日本国内で対抗できる踊り手はいないだろう。踊りの強さはバレエ団中最強であり、この強さと様式美が同時に実現され、高度な技術が物語を形づくった。1-1-3を四回入れつつ水平移動がないフェッテは、高度な技術の一例に過ぎない。最初のオデットの登場からハケるまでの3分の時点で魅了される。オディールについても、オディール役としての修飾は入れつつも、踊りの強さと美しさの本質で涙腺を流させ、観客の心を熱くさせる。13日・17日ソワレに於けるオディールのレヴェランスはたっぷりと風格があるもの。夾雑物を入れず、純舞踊の力量のみで全観客を征服した。

2-2.柴山紗帆
もともと正統派の踊りで魅了させるダンサーであるが、オデットだけでなく、オディールも強さを伴うようになり、著しい伸長を見せた。踊りのタイプは米沢唯の路線である。オデットとオディールを総合的に併せて評価した場合、米沢唯に次ぐ実力を発揮した。米沢唯も小野絢子も調子を落としたら、柴山紗帆が上回るくらいにまで成長した成果は大きい。11日マチネの公演では、プリンシパルとしての必要とされる水準を楽々とクリアした。次の目標は、本調子の米沢唯の水準に近づけていくことである。柴山紗帆の成長は、吉田都芸術監督の数少ない大きな成果の一つである。

2-3.小野絢子
良く考えられた緻密な構成により、米沢唯とは全く違うアプローチで素晴らしいオデットを披露した。

3.王子役について

3-1.福岡雄大
10日・13日公演とも絶好調であり、技術的強さと高い完成度は他の追随を許さない。また、米沢唯とのパートナーシップも素晴らしく、オデットへの愛情を強く感じさせる演技であった。なお、クルティザンヌがそばに寄ってくると嬉しそうであった。


3-2.井澤駿
柴山紗帆とのパートナーシップが素晴らしく、王子らしい振る舞いで、柴山紗帆との物語を見事に構築した。第一幕での憂いの表現が素晴らしく、速水渉悟のお馬鹿ベンノとのコントラストが鮮やかに出た。

3-3.速水渉悟
17日ソワレだけの出演で、当日の調子は明らかに良くなかったが、米沢唯とのパートナーシップは水準に達しており、シーズン全般の出来と将来性を踏まえた場合にプリンシパル昇格は適切妥当と思わせた。二公演あったら、違った成果を出せただろう。さらに体調を整えた上で、来シーズンのバジリオ役では540を安定して決めて、観客を熱狂させてほしい。


4.ベンノ役について

4-1.速水渉悟
主役級がお馬鹿路線で攻めるとこうなるという、ライト版始まって以来の馬鹿ベンノである。そもそもベンノは、クルティザンヌを王子に派遣させるくらいの馬鹿だから、これはこれで説得力がある。踊りについては最高水準で、強さと美しさが同居した見事なもの。これを見せつけられたら、木下嘉人でさえも7合目の出来と思わせてしまうのは罪である。プリンシパル昇格は当然の内容である。

4-2.木下嘉人
名脇役の演技と言える。良い意味でしゃしゃり出ず、ベンノ役としての完成度は高い。


5.その他の役に付いて

5-1.クルティザンヌ役
ファーストキャストである池田理沙子+飯野萌子組が素晴らしい。

5-2.マジャール王女役 
ファーストキャストの飯野萌子が突出して見事である。

5-3.ポルスカ王女役
床が滑りやすかったからか、2021年10月公演と比して安全運転の感が強かった。直塚美穂は中足骨以遠の小技が印象的であった。

5-4.イタリア王女役
奥田花純・五月女遥が素晴らしい。

5-5.小さな四羽
最近入団したダンサーが、先輩方についていけていない点が露呈していた。千秋楽ではある程度目立たなくはなっていたが・・・。

5-6.大きな二羽
花形悠月は実に見事で、対側のダンサーを圧倒した。金城帆香+山本涼杏は二羽感が出ていた。


6.意見事項
下記の通り意見する。
・木村優里の代役は、小野絢子・柴山紗帆に一公演ずつ渡すべきであった(米沢唯は初日-千秋楽9日間で3公演出演であり、これ以上の出演は困難)。あるいは、直塚美穂のような、国外著名バレエカンパニーでの豊かな経験を有するダンサーに機会を与えるべきであった。経験がなく踊りの技量が乏しいダンサーをオデット/オディール役に充てるキャスティングは、バレエ団としての見識や観客に対する誠実さを強く疑わせるもので、非難に値し、断じて容認できない。
・柴山紗帆・速水渉悟のプリンシパル昇格発表については、タイミング・方法ともに素晴らしい。
・柴山紗帆と速水渉悟がプリンシパル昇格となった今、プリンシパル昇格候補は池田理沙子しかおらず、紗帆理沙子世代の次の主役候補が全く育っていない。女性ソリスト級ダンサーでは、寺田亜沙子・細田千晶が引退し、五月女遥・奥田花純・飯野萌子しか残っていない状況である。直塚美穂以外にソリストへ昇格できる候補がいない現状では、数年後に公演のレベルに致命的な影響を与える状態となる(新国立劇場バレエ団の存亡に関わる危機になる。マジで)。研修所出身ダンサー優遇の疑念を晴らし(石山蓮以外の10期生以降の研修所卒業生は、昇格に値しない)、国外バレエ団からの移籍者を含め、早急に実力あるソリスト昇格候補を見極め、昇格人事で示す必要がある。8月1日の昇格発表を厳しく見守っていきたい。


2022年5月8日日曜日

新国立劇場バレエ団「シンデレラ」2022年4-5月 観劇記録

 新国立劇場バレエ団「シンデレラ」2022年4-5月 観劇記録

2022年4月30日(土)から5月5日(木)にかけて、「シンデレラ」が新国立劇場バレエ団により上演された。

当方、東京都内の新型コロナウイルス感染状況悪化のため観劇できず、「ワルイ子諜報団」の仲間にチケットを無償譲渡して、レポートを依頼した。以下、その記録である。

当記録の対象は、ワルイ子諜報団を派遣した2022年4月30日・5月1日・4日・5日公演を対象とし、5月3日に開催された二公演は対象としない。

1.概観

公演は全て予定通り上演された。チケットは最前2列を除いたほぼ100%収容1724席で発売し、全公演完売状態となった。

吉田都芸術監督による指導により、アシュトン版の特徴を的確に演じられる形となった。全般的に、留め撥ねがハッキリした形となった。他方で、最近の「シンデレラ」公演ではリアルのバレエ教師のような模範演技として演じられてきた「バレエ教師」役は、デフォルメ化して演じられている。おそらくこちらがアシュトンの意図なのだろう。

主演以外の、ファーストキャストとセカンドキャストとの差が概して大きく(セカンドキャストに重鎮を配置した役(仙女・秋の精)は除く)、外部からの移籍による優秀なダンサーの補強、若手ダンサーの育成が急務であると伺わせた。当面はファーストキャストのみであれば、国内バレエ最強の地位を保てるが、瓦解の兆しが見え始めている。

キャスティングについては、疑問点がなくはないが、概ね公平か。


2.シンデレラ役について

以下、公演順に述べる。

2-1.小野絢子
右脚上げ。全体的に高い水準。特に12時の鐘が鳴る場面は鮮やかに決めた。一時期の、いかにも「演技している」風な不自然さが解消され、ナチュラルな演技を取り戻していた。

2-2.米沢唯
右脚上げ。正統派のいい子ちゃんシンデレラ。従前の「シンデレラ」公演と同様に、第二幕は最強の踊りを披露し、特に2022年5月1日公演の水準には、少なくとも国内で対抗できるダンサーはいない。スケール感や踊りの力強さが振り付けとマッチしていた。王子とのパドゥドゥは、両公演とも秀逸なるもので白眉、シームレスでスイートな雰囲気を醸し出している。小回りで王子のそばを周回する場面も、王子を円心として完璧な同一の半径で円形を描く。踊りの強さ、完璧さが甘美な世界を作り上げていた。

2-3.池田理沙子
宣伝画像の通り左脚上げ。池田理沙子のお転婆な本性と、シンデレラの役との幸福な邂逅であった。特に第一幕では、振り付けとの相性が絶妙によく、ジャンプと着地のポーズが小気味よく決まる。踊り、音感とも見事である。吉田都の指導により再構成(?)されたシンデレラの振り付けとの相性が絶妙なのであろう。他方、舞踊界に行かせてもらえなくて拗ねる表情もカワイイ。第一幕に関しては、振り付けとの相性の絶妙さもあって、米沢唯・小野絢子の領域を超えたと思われる。
第二幕はパートナーの状況が思わしくない中、水準を保ち、パートナーが交代した第三幕でも何ら動揺なく高い水準で演じた。
この2022年5月5日「シンデレラ」公演は、プリンシパル昇格に向けての天王山と言える公演で、一公演しかない公演で成果を着実に出すことが求められたが、池田理沙子は見事に成功したと言える。既に2021年12月公演の「くるみ割り人形」にて、クララ役で二公演とも絶好調で大成功を掴み、今回の「シンデレラ」のパフォーマンスを重ねて、昇格の確率を70%にまで上昇させた。プリンシパル昇格に向けての残りの変数は、来月上演される「不思議の国のアリス」に於ける題名役の成果であり、これは成し遂げられると期待する。アリス役での更なる活躍を期待したい。


3.王子役について

3-1.福岡雄大
調子が良いのか、不調なのか、良く分からない感。素晴らしい箇所は素晴らしいが、そうでない箇所もある。第二幕パドゥドゥでは、「倦怠期夫婦ペア」(注:高名な某評論家のツイートの内容は事実に反しており、実際は結婚されていない)のパートナーシップの感もあったが、小野絢子が上手く処理したか?

3-2.井澤駿
米沢唯とのパートナーシップが良く、第二幕パドゥドゥの箇所は白眉であった。2022年5月5日公演では、急遽第三幕から池田理沙子のパートナーとして代役出演となったが、揺るぎないサポートで突然の交代を全く感じさせなかった。

3-3.奥村康祐
第二幕では最後まで池田理沙子を的確に支えた。怪我による第三幕降板は残念である。非定型的な踊りを要求される姉妹役との両立は可能だったのか、慎重な検討が必要だったと考えさせられる。


4.仙女役について

4-1.細田千晶
本島美和が仙女役から引退した現在、細田千晶以外に適役はいない。仙女役に求められる慈愛や踊りの様式美、舞台の支配力、いずれも最高の水準に達している。現在の新国立劇場バレエ団に於いて、シンデレラの仙女、眠れる森の美女のリラ、ドンキホーテの森の女王、これら三役を演じられる唯一のダンサーが細田千晶である。

4-2.木村優里
2022年4月30日公演では、踊りが何となく綺麗でなく(バレエとしての様式美の欠如)クネクネした印象を与えており、四季との五人ユニゾンの箇所も彼女のみ遅れており、仙女役に相応しいとは言えなかった。彼女をファーストキャストとして仙女役としたことには疑問を呈する。なお、2022年5月5日公演では、細田千晶の領域には達するのは遠いにしても、許容範囲の領域まで改善された。


5.道化役について

5-1.木下嘉人
福田圭吾が道化役から引退した現在、木下嘉人以外に適役はいない。大柄な体格であり、道化役は本来彼が演じる系統の役ではないが、それでも高い基礎的な身体能力で魅せる踊りを観客に披露した。スティック状の人形との遣り取りや、観客との遣り取りもベテランならではの領域で、芝居として高いレベルで成立している。
しかしながら、現在の新国立劇場バレエ団に於いて、道化役を一定水準以上で演じられるのは彼だけの状況ではあり、他方、彼の年齢面から道化役をいつまで演じられるのかを考慮しなければならないのも現状である。
新国立劇場バレエ団の道化役は、ファーストキャストが懸命に演じている表では見えにくいが、実のところは崩壊しかかっており、至急の補強が必要である。

5-2. 佐野和輝
山田悠貴の怪我により急遽代役として出演となった。代役にしてはよくやったという感じである。本人の工夫も、思い通りにはいかなかったかもしれないが、それなりに反映されていた。


6.四季の精

春・夏・冬については、ファーストキャストとセカンドキャストとの差が大きかった。秋の精はセカンドキャストが奥田花純であったこともあり、差はない。

「春の精」の五月女遥は、当役の規範である。踊りの美しさ、強さ、音感とも完璧である。誰がどうやっても様になるのが難しい「春の精」でこの水準は驚異だ。特に2022年5月5日公演は圧巻の出来であった。

「夏の精」は飯野萌子の得意役であり、抜群の完成度であった。渡辺与布は、2022年5月1日公演はイロイロ怪しかったが、2022年5月4日公演では満足できる水準に達する内容であった。

「秋の精」は踊りの面で手を抜いてでも、意地でも音楽から遅らせない踊りが求められる。その辺りのテクニックは奥田花純が上手い。完成度は2022年5月1日公演の方が素晴らしい。柴山紗帆は、本来「秋の精」を演じる体格ではないが、それでも高い水準で演じた。

「冬の精」は、寺田亜沙子がこれまで通りの完成度。中島春菜は、「冬の精」を演じるには、バレエ一般の基礎的なテクニックを固め、三段階くらい上げる必要がある。


7.姉たち

アシュトン版のシンデレラの姉たちは、男性ダンサーにより演じられる。三キャストとも水準を保ったが、ファーストの奥村康祐-小野寺雄組、セカンドの清水裕三郎-福田圭吾組が特に素晴らしい成果を出した。どれだけ上手く暴走するかで面白みが決まるが、この辺りの加減が絶妙だったか。古川和則が引退したが、その不在を埋めただけでなく、より高い次元に到達したと言える。


8.指揮・管弦楽
マーティン イェーツの指揮、東京フィルハーモニー交響楽団の管弦楽は申し分ない。2022年5月5日公演では、第一幕、池田理沙子のシンデレラに上手く付け、絶妙に支えた。


9.意見事項
下記の通り意見する。
・細田千晶が得意とする仙女やこれと同系統のリラ(眠れる森の美女)、森の女王(ドン キホーテ)を演じられるダンサーの補強、後継者の育成が急務である。
・道化系を本職とするダンサーの補強、後継者の育成が急務である。
・現状では、数年後に重要脇役を担うソリスト級ダンサーがスカスカとなり、公演のレベルに致命的な影響を与える状態となる。ロシア等、国外バレエ団からの帰国組にもアプローチを掛け、30歳前後以下の補強が急務である。女性ソリスト級ダンサーでは、寺田亜沙子・細田千晶・五月女遥・奥田花純・飯野萌子の後継者がいない状態を解決する必要がある。また、池田理沙子・柴山紗帆の次の世代の主役級ダンサーの補強も急務である。

2021年6月18日金曜日

新国立劇場バレエ団「ライモンダ」2021年6月 観劇記録

2021年6月5日(土)から13日(日)にかけて、「ライモンダ」が新国立劇場バレエ団により上演された。
当方、東京都内の新型コロナウイルス感染状況悪化のため観劇できず、「ワルイ子諜報団」の仲間にチケットを無償譲渡して、レポートを依頼した。以下、その記録である。

1.概観
公演は全て予定通り上演された。チケットは100%収容1688席で発売を開始したが、緊急事態宣言発出のため、2021年5月31日18時00分(日本時間)以降、総客席数に対して50%以上販売された時点で、チケット販売終了となった。米沢唯・小野絢子主演の日は、100%収容1688席ほぼ完売の状態で売り切ったと思われた。
バレエ教師たちが言いたそうな道徳律っぽい表現ではあるが、これまでどのようにダンサー人生を送ってきたかで、各ダンサーのパフォーマンスが決まったと言える。特に、主演にその要素が強い。顔芸が効かない、ごまかしが効かない演目であると言えた。
主演以外の、ファーストキャストとセカンドキャストとの差が概して大きく(セカンドキャストに重鎮を配置した役(第三幕のヴァリエーションに於ける池田理沙子)は除く)、若手ダンサーの育成が急務であると伺わせた。当面は国内バレエ最強の地位を保てるが、今のままでは数年後が不安である。
コール ド バレエは、初日公演こそ本領を発揮していなかったが、第二公演からは、絶妙な揃い方(個性を活かし、あまり揃え過ぎない故に、わずかな差異が目立たず、一定の強度を保つ踊りも相まって、逆説的に揃ってる感がでる)で、吉田都時代になって確立したスタイルを高度に実現した。
2008/09シーズン以来12年ぶりの上演であり、数名のダンサー以外に経験者がいない状態で、事実上の新作であったのにも関わらず、前演目千秋楽から中27日での初日となった。ソリスト役は全て初役であり、リハーサル日程は極めてタイトな状態と思われた。
キャスティングについては、概ね公平と思われるが、一部主演の組み合わせに疑問が残った。

2.今回の公演群で最も貢献したダンサー
・米沢唯(ライモンダ)

3. 今回の公演群で最も貢献したダンサーに準ずるダンサー
・小野絢子(ライモンダ)
・福岡雄大(ジャン ド ブリエンヌ)
・中家正博(アブデラフマン)

4.ライモンダ役について
1位:米沢唯、2位:小野絢子、3位:柴山紗帆 の順であった。この三人だけが、主演者としての力量を発揮した。

4-1.米沢唯
千秋楽公演について記述する。
第一幕から、「どこのロシアの大プリマかよ」と思わせる存在感である。スケールが大きく、かつ繊細である。慈愛を感じさせる優しい包容力を思わせるアダージョの直後に、アレグロを鮮やかに飾る変幻自在ぶりで、心を揺さぶられる。
アレクセイ バクランが導く管弦楽との音楽性は、評論家的語彙で単に「音感が優れている」と書かれるレベルではない。「音符一つ一つに踊りを合わせる繊細さ」という意味での音楽性とも違う。どこか天才的な音楽性とも言え、聖チェチーリアがいらっしゃり、お取りなしがあり、精霊が全てを導いた、人知を超えたレベルの音楽性であった。これほどまでの音楽性は、これまでのバレエ公演で見たことがなかった。
第二幕では、5番ポワント連続技の箇所を、最も高く跳び躍動感をもたらした。
第三幕は、初日公演でも傑出した内容であった。マジャール ヴァリエーションのソロは威厳を感じさせるものである。千秋楽の最後の手叩きは、かなり響いたが、何か強く叩きたくなる心境であったのか?運命に左右される女性の覚悟を思わせるものであった。
特に千秋楽での米沢唯は、踊りのスケールの大きさ、繊細さ、強さ、美しさ、音楽性の面で、要するに全ての面で無敵であった。踊りの強さが表現の強さに直結し、観客に強く深い圧を与える。随所で現れる、長く強く美しい静止ポーズに涙を流すのは、こういうことだ。
特定の超絶技巧を成功させた云々の記載は、却って米沢唯の演技の本質を見損なう。彼女の本質は、技術ではない。
米沢唯の本質は、どの場面においても、研ぎ澄まされた鋭い感覚で身体を制御し、強さと繊細さを同時に併存させ、格調の高さを保ちながら、慈愛も威厳も変幻自在に役を生きる点にある。世界的メジャーカンパニーのプリンシパルに比肩する米沢唯が本領を発揮したときに、彼女に対抗できるダンサーは、この日本にはいない。

4-2.小野絢子
第一幕から絶好調で完成度が高く、他公演と比してもその度合いは高かった。公演毎のムラが比較的少ないダンサーではあるが、他公演と比して内容は極めて充実していた。時折感じられるスケール感の小ささが、この公演ではなかった。第二公演ということもあり、群舞の出来も第一公演とは見違えており、小野絢子を素晴らしく支えた。小野絢子ファンであれば誰もが喜ぶ公演であった。

4-3.柴山紗帆
柴山紗帆の存在自体が、運命に影響されるライモンダと合致していた。
有利な体格を十全に活かした所作の美しさが特徴である。第二幕ポワントでの連続ジャンプは、たとえ跳躍の要素が希薄でも、所作は美しい。今シーズン、開幕時のキテリアこそ、主役慣れしていない感が見受けられたが、他公演に於ける重要な役での堅実な成果は目覚ましく、今回の主役起用により開花した。ファースト ソリスト昇格は確実なものにしたと断言する(8月にファースト ソリストへ昇格となった)。様式美の基礎は盤石であり、この路線を発展させ、プリンシパル昇格を目指して、更なる活躍を期待したい。

4-4.木村優里
ライモンダを演じるに当たっての基礎力の欠如が露呈し、これまでのバレエに対する姿勢が問われる。ライモンダ役への適格性を欠き、彼女を起用する意味は全くなかった。
以下具体的に挙げよう。
ピッチカートのソロは膝が曲がっており、脚が汚ない。
音の遅取りは彼女のクセであるが、特に第一幕では著しく遅い音取りであった。マトモな音取りで踊る井澤駿との二人のユニゾンが合わないのは、木村優里の責任である。
第一幕最後の大団円では、木村優里だけ一人だけ明らかに遅れる有り様であった。長大な第一幕で全力を尽くして踊り(千秋楽の米沢唯レベルでなければ、そうであったとは言えない)、その疲労により遅れたり乱れたりしたというのであれば、何も言わない。しかし、他の誰もが新国立劇場バレエ団の強みの一つである「絶妙な揃い方」で踊っているところで、第一幕の間ずっと勝手な音取りで乱したというのであれば、これは非難されなければならない。特に第一幕では、本当に木村優里はいろいろ自分勝手過ぎた。
第二幕、5番ポワント交互ジャンプの場面。交差している時としていない時が交互になる酷さ(なお、一階正面ほぼ舞台中心線上の席から観劇している)、その脚の上の上半身も汚い。あれで拍手出るのはいかがなものか。観客としての見識が問われる。
第二幕終盤で、五月女遥・廣川みくりと180度位相をズラして踊る箇所は、踊りが弱い。遥ならまだしも、みくり に踊りで負けてるようでは終わっている。
第三幕は、片脚を交互に上げる箇所、冒頭でバランス崩して上手側に1m移動してしまう。その箇所はキッチリ決めて欲しい。
2020/21シーズン、全演目(「ニューイヤー バレエ」の一部演目を除く)に主役でアサインされる破格の待遇を受けた木村優里であったが、これが正当な待遇であったとはとても思えない。特に「眠れる森の美女」と今回の「ライモンダ」はひどい出来であった。古典演目で致命的な欠点が露呈するに至っては、プリンシパル昇格は到底無理と言わざるを得ない(事実、2021年8月での昇格はなかった)。特定のワルイ子ちゃんの役(例:'Super Angels' に於けるS嬢(Mother)のような役)ならハマるが、特殊演目を除いて主役(特に いい子ちゃん系)への適格性はない。

5.ジャン ド ブリエンヌ役について
1位:福岡雄大、2位:奥村康祐、3位:井澤駿 の順であった。この三人だけが、主演者としての力量を発揮した。

5-1.福岡雄大
5月公演「コッペリア」の時点から、コロナ禍に於ける体調管理の影響から脱却したと思わせたが、この「ライモンダ」で完全に復調し、新国立劇場バレエ団に於ける男性ダンサーのトップであることを見せつけた。踊りの強さ、技量面でダントツであり、米沢唯との相性も良かった。完璧と言ってよい。

5-2.奥村康祐
小野絢子とのパートナーシップが良く、主演として小野絢子を的確に支えた。ソロの場面でも申し分ない。おバカな役だけでなく、王子の役も立派に演じている。

5-3.渡邊峻郁
男性主演ダンサーの第一の任務である女性主演へのサポートが全くできていなかった。
第一幕では、適切なタイミングで柴山紗帆のサポートが出来なかった。手を差し伸べるのが遅すぎ、何度も柴山紗帆の踊りが止まった。コロナ禍でなければ、穏健派「紗帆りんファンクラブ」からはブーイングが飛び、過激派「紗帆りんウルトラス」が発煙筒に点火して抗議するレベルである。全くお話にならない。
他方ソロも良くない。第一幕での着地は全て失敗。綺麗に5番で降りれたのは、第三幕での一回のみであった。
第三幕では、柴山紗帆をリフトから下ろす場面で、乱暴な箇所が一回あった。女性をリフトさせる場面は、高速道路を時速172kmで滑らかに走るメルセデスのようなスタヴィリティでサポートされなければならないが、その任務を果たしたとはとても思えない。
これが新国立劇場バレエ団のプリンシパルか、と疑問を呈せざるを得ない水準で、大原永子 前芸術監督の最大の失策は、彼をプリンシパルにしたことだと言われても、誰も弁護できない。
なお、7月以降の公演では、これほどまでの酷いレベルではないとのこと、一時的な不調であったと思いたい。今後の公演での、木村優里とのパートナー固定化(「ゆりたか」固定化)は、ある意味正解である。

5-4.井澤駿
本年初頭に見舞われた怪我の影響があり、本来の踊りではなく、かなりセーブした安全運転であったことは否めない。それでも木村優里へのサポートは完璧に行っており、男性主演ダンサーの任務は立派に果たしている。柴山紗帆のパートナー役は、渡邊峻郁ではなく、井澤駿にするべきであった。その方が、柴山紗帆にとってはかなり踊りやすくなっていたであろう。
なお、7月公演「竜宮」からは、本来の踊りが戻り始めている。

6.アブデラフマン役について

6-1.中家正博
盤石の出来で、演技派の真骨頂を示した。死に際の演技が抜群に上手い。千秋楽の死に際の演技は、パッションとの調和も絶妙で、涙腺を潤ませた。

6-2.速水渉悟
演技に若さを感じる。跳躍の高さには目を奪われる。死に際の演技には課題が残り、そこに中家正博との差が生じた。自然に見える死に際になるようにするためには、ダンサーの自習に頼らない、かなりの程度の導き、綿密な指導が必要だったように思われる。また、現時点での彼は主役向きであり、キャラクター系は主役の経験を積んでからでも遅くはないようにも思える。

7.その他の注目するべきダンサー

7-1.池田理沙子
第一幕でのアンリエットは、クレメンス役との細田千晶と、なぜかきちんと調和していた。全くタイプが違うダンサーとの調和も、彼女であれば可能である。
また、第三幕のヴァリエーションは、かわいいマジャール猫ちゃんで、強力な後脚技!強く上手く可愛かった。これは特別賞ものである。キャラクター的に完璧に合致し、彼女ならではの特技を見せつけられては、普通に実力があるダンサーのレベルでは太刀打ちできない。
適合するキャラクターの問題か、主役起用にはならなかったが、全公演、猫耳つけて出演し、名を捨てて実を取った感じか。

7-2.渡辺与布
ワルイ子サラセン人は、本当にワルイ子ちゃんで、他方明るく楽しそうに踊っていて惹きつけられる。
第一幕第一ヴァリエーションは、前半は頑張っていたが、後半のアレグロで総崩れになってしまった点は残念であり、飼い猫に部屋を散らかすイタズラをされた飼い主のような気持ちになる(こういう憎めない気持ちにさせられるのは、彼女独特の人徳であろう)。
年単位では、徐々に上手くはなってきているとは思うが、現時点で主役は難しい。キャラクター適合面では、いい子ちゃん役もワルイ子ちゃん役も絵になるオールマイティーさがあり(その意味では、米沢唯・小野絢子と同じ性格を持っている。柴山紗帆(いい子ちゃん)・池田理沙子(お転婆娘・人形が中核。いい子ちゃんにもウイングを広げている)・木村優里(ワルイ子S嬢)、いずれもそれぞれ適合するキャラクターに偏りがあるのとは対照的)、主役候補としては有利でありながら、これを活かせていないのは惜しい。柴山紗帆・池田理沙子・奥田花純・五月女遥、誰か一人でいい、彼女らと同じレベルまで技術力を上げて欲しい。困難ではあるが、達成すれば主役への道が開け、隠れファンたちが大手を振って顕在化するものと思われる。

7-3. 今村美由起・木村優子・関晶帆・原田舞子(あいうえお順)
新国立劇場バレエ団には コール ド バレエ にもスターがいる。第一幕ワルツファンタジアで、かわるがわる彼女らが姿を見せるシーンも、夢が現に顕れるハイライトの一つであった。

8.指揮・管弦楽
バクランの指揮に東京フィルハーモニー交響楽団の管弦楽が熱く応えた。管弦楽にミスは散見されたものの、これだけの熱い演奏であれば、大目に見たい。演奏自体の完成度は、6月11日公演が一番であったか。

9.意見事項
下記の通り意見する。
・ライモンダ役は、木村優里の枠を小野絢子に充て、小野絢子の公演を2公演にするべきだったと強く表明する。
・現状では、数年後に重要脇役を担うソリスト級ダンサーがスカスカとなり、公演のレベルに致命的な影響を与える状態となる。国外バレエ団からの帰国組にも触手を伸ばすなど、25歳前後までの強力な若手の補強が急務である。

2021年5月19日水曜日

新国立劇場バレエ団「コッペリア」2021年5月 観劇記録

 2021年5月2日(日)から8日(土)にかけて、「コッペリア」が新国立劇場バレエ団により上演された。

4月23日に発表された緊急事態宣言に基づき、無観客公演を余儀なくされ、予定されていた5公演のうち、5月1日(土)公演は中止となり、残りの4公演は無料動画配信された。

このレポートは、無料動画配信によるすべての公演を対象とする。

なお、最近の他公演を踏まえた記述については、当該公演を観劇したワルイ子諜報団(ワルイ子東京城西、ワルイ子北陸)からのレポートをも参考にした。


1.概観

ローラン プティ版によるもので、実上演時間が90分強の規模の短めな作品となる。2日、4日、5日、8日と、上演+動画配信 されたことにより、全てのキャストをリアルタイムで視聴が可能となった。

振付指導者であるルイジ ボニーノは来日できず、リモートでの指導となった。

この版での新国立劇場での初演は2007年5月であり、前回は2017年2月の上演であった。約4年ぶりの上演となった。

これまでなかった、木村優里-福岡雄大、小野絢子-渡邊峻郁の組み合わせも注目されるところであったが、残念ながらその成果は乏しいと言わざるを得ない。

公演レベルは、特殊演目に関わらず、基本的に各ダンサーの地力が反映されたが、観客の一般的なウケの面では特殊要素が働いた面もあった。


2. スワニルダ役について

2-1. 米沢唯

第一幕では拗ねてる表情が可愛らしいが、第二幕で人形の服を着ている場面では、黒の衣装も相まって、(ロシア風という意味でもなく、古典バレエ風と言う意味でもなく)オディールがコッペリアに化けたように思わせる。いい子ちゃんだかワルイ子ちゃんだか分からない、女性のミステリアスな性格を表され、ある意味マノンをコメディー化したかのようでもあった。

他方、民族舞踊や古典バレエの様式を強調する場面(第一幕6人の友人たちと絡む箇所でのアレグロのソロや、第二幕のフェッテを含めた終盤)でも、見事な完成度であり、上肢の長さを活かしたスケール感もあった。

2-2. 木村優里

弱点をかなり消せる修飾が効く演目ではあるが、それでも弱点は覆い隠せなかった。

総じて彼女にとっては、他演目と比較しかなり有利な展開ではあったが、それでも、古典的な技巧を必要とする箇所の弱さが目立った。

有利な点は下記。

i. 古典演目で見られるような定型的振付が希薄であり、バレエの定型的な技巧の巧拙が問われにくい

ii. 実演ではなく、動画配信でありアップにより顔の表情が強調された。可愛さを顔芸で実現する成果が配信先に届きやすかった

iii. 小顔体形が衣装とマッチしており、長い四肢がもたらす映えた見た目も、このプティ版にあっては極めて有利

これら三点が相まって、地力を上回る評判を得がちな有利な状況となった。一般受けが良かった理由は、この点からも説明できる。確かに、顔芸については命を懸けたかのような気合が入っていた。予想を超えて「可愛さ」アピールに成功したとは言える。

しかしながら、古典的な技巧を必要とする箇所は本当に弱い。

具体例としては

i. 第一幕後半の、6人の友人たちと絡むところのアレグロのソロ。

ii. 第二幕終盤のフェッテの前辺り。

これら古典的な技巧を必要とする場面では、ちゃんと踊れていなかったり、所作が何となく綺麗でなかったりした。また、民族舞踊の箇所は全キャストを通じて最も弱かった。

これらは常日頃から露呈している弱点が再現された。

木村優里のアレグロの弱さは、例えば2021年4月10日「白鳥の湖」公演に於けるルースカヤ役ソロの後半でも指摘できる(ワルイ子北陸からの情報提供)。

また、何となく所作が美しくない点についての弱点は、2021年2月の「眠れる森の美女」公演でのアウロラ・リラ両役で露呈した通りである。(ワルイ子東京城西から情報提供)

扇を飛ばしたり、瞬きをしたことについては、他が高い水準であれば目をつぶるが、このような「顔芸バレリーナ」ぶりを見ると、気になってきてしまう。まだワカイ子であり、体が思い通りに動かせるはずの年頃でこの出来では、先が思いやられる。

2-3. 池田理沙子

第一幕では、彼女が得意とするはずの「お転婆娘」が不発気味であり、本領を発揮していない感があった。体格の不利さをカヴァーしにくい版も影響しているのか?それでもアレグロのソロはキッチリこなしており、無難に終わった。

池田理沙子の本領は第二幕で発揮された。特に民族舞踊や終盤の場面は素晴らしい。基本的には米沢唯の方向性だが、米沢唯的マノン路線よりは、カワイコいい子ちゃん と 気の強さを出した表情でコントラストを出した路線であった。

2-4. 小野絢子

体格の不利さを感じさせる面が皆無ではないが、大原芸監時代からの「絢子ワールド」を、高い完成度で示し、立派な成果を残した。


3. フランツ役について

3-1. 井澤駿

「眠れる森の美女」降板の原因となった怪我の影響があるからか、安全運転気味であった。ソロの場面で見せ場を作ることはなかったが、それでもサポートは盤石であった。

3-2. 福岡雄大

コロナ禍以降、これほどまでの絶好調ぶりは見たことがなかった。ソロでの切れがある豪快さや、コッペリウス役山本隆之とのコンビネーションが光った。また、特に第一幕でのイタズラ好きな子どもっぽさの表現も見事である。フランツ役でダントツの成果を上げた。

3-3. 奥村康祐

キャラクターと合致しており、フランツの馬鹿っぽさを的確に表現した。福岡雄大に準じる成果を上げた。

3-4. 渡邊峻郁

キャラクターと全く合致していないこともあるが、全般的に演技が不自然で、フランツの馬鹿っぽさ、いたずら好きな子供っぽさを全く表現できていなかった。また、第一幕ではリフトサポートした小野絢子の挙動を乱し、サポートのスタビリティーが欠如していた。これは主役級の男性ダンサーにとっては致命的である。第二幕放り投げの場面は、落としそうとまでは思わないが、予告編で流れた2017年2月公演での福岡雄大によるものとは決定的なまでの安定感の差があった。

これまでの公演では、ここまでサポートの弱点が露呈したことはなかったが、サポートされる側の米沢唯が超絶補正していたからなのか?

また、第一幕幕切れの後ろ足は、とても綺麗とは言えないものであった。

小野絢子ファンから怨嗟を浴びてもしょうがない内容で、ファーストキャストにするべきではなかった。

第二幕終盤のソロで、難易度の高い技に挑戦した意欲は買うべきなのか?しかし、完成度の低さをしっかりと指摘するべきなのだろう。


4. コッペリウス役について

4-1. 中島駿野

かなりの頑張りが見受けられた。高い演技力を示し、初役にしては上出来であろう。

4-2. 山本隆之

元プリンシパルでもあり、卓越した演技力であった。人形遣いのサポートが実に上手い。


5. スワニルダの友人たち

ファーストキャストの中核を担った、柴山紗帆と細田千晶が素晴らしい。両者が小野絢子の脇を固めるシーンは絵になる。全体との調和を踏まえつつも、両者の強い基礎力が舞台に圧を与える。

セカンドキャストの廣川みくり は悪目立ちをしており、調和していなかった。

ファーストキャストとセカンドキャストとの差は、舞台から強い圧を発せられるか否かの面で決定的であった(当然ファーストが素晴らしい)。


6. 意見事項

下記の通り意見する。

・明らかに渡邊峻郁はファーストキャストの器ではなかった。

・小野絢子-福岡雄大、木村優里-渡邊峻郁のコンビであった方が、前者による傑出した成果が出せた可能性が高かった。公演レベルの平準化よりも、傑出した成果を狙うキャスティングを願いたい。


7. 一部の「クラスタ」に対する批判

このプティ版「コッペリア」に対しては、一部の「バレエクラスタ」(自称「評論家」「ライター」も含む)による偏見に満ちた不公正な論評が露呈しているように思われる。

自爆言語は「フランス」「フランスの風」「プティ」「プティ風」「演技力」「演技派」だ。その辺りを強調している人物に限って、ピント外れな評を表明し、中途半端に持つ発言力とともにバレエ界に対して害悪をもたらす。

もっと分かりやすく言うと、小野絢子推し且つ木村優里推し且つ渡邊峻郁推し(且つ米沢唯アンチ、この辺りは「クラスタ」内部でも差異がみられるが、古典演目では絶賛していても「コッペリア」に関してはアンチになってる事例が多い)且つ池田理沙子アンチ。(カワイイからユルイ木村優里ファン程度の方は、特段有害ではない)

まずは「フランス」や「プティ」の定義をすることが先決である。フランス風ではないとか、プティ風ではないと主張するのであれば、「フランス」「プティ」の定義をきちんと行うべきだ。

管見では、「フランス」なり「プティ」を体現しているのは、プティ自身によるコッペリウスくらいである。その意味では、プティ自身の公演以外は認めないという立場は、賛否はともかく、論理的には一貫性がある。

しかしながら、プティ芸術監督時代のマルセイユ国立バレエ団でスワニルダを演じたダンサーからして、エウスカディ人(バスク人)・カザフ人・英語圏カナダ人もおり、全く「フランス」的ではない。

それに、プティ自身によるコッペリウスも、「1970年代フランス」の体現であり、車に例えれば シトロエンDS のようなものである。現在のフランス車がドイツ車と区別できないのと同じように、現在のパリ国立オペラバレエ団のエトワールでさえも、プティの存在感は出せないであろう。当然ルイジ ボニーノなど、プティの後継者に全く値しない。

プティの死去とともに、プティ版「コッペリア」の在り方は時間の経過も相まって変容していくのは当然である。ロクでもない振り付け指導者がリモートで指導となれば、尚更だ。そのような文脈を基に、公演の評が為されなければならない。

池田理沙子のスワニルダに対して「学校的」と評した者がいた。第一幕だけならまだ理解できるが、第二幕を併せた場合にその評は失当である。百歩譲って、池田理沙子を「学校的」と評するのであれば、木村優里に対しては「学校的な水準にも達していない」と酷評するべきである。その評者は、渡邊峻郁に対してはあれ程までの低水準なパフォーマンスでありながら贔屓目な評を出している。そのような恣意的な評を発している者が、フランスバレエの理解者面し、恣意的な評価をしているのは有害である。その信奉者もまた有害であるが。

渡邊峻郁に対し「演技派」と評する者がいた。あのフランツの演技に対して「演技派」と評するのは笑止である。私にとっての彼の評価は、これまでは、女性主演ダンサーを邪魔することなく無難に演じるダンサーであったが、そのような信頼すら失墜する今回の出来であった。なお、私は本島美和以外を「演技派」とは言いたくない。

米沢唯の公演の後で「フランスの風を吹かせて欲しい」と言っておきながら、渡邊峻郁に対しては「フランスで踊っていた人でもあるし不満はなかった」と訳の分からない理由で擁護した自称「評論家」がいた。自称であれ「評論家」がそのような著しく偏った言説を発するのは公益に反するので、そいつの名前だけは公にする。門行人である。

David Mead は米沢唯を、Paul McInnes は池田理沙子をきちんと評価している。特に後者は、プティ版について嫌悪しつつも、公演水準は冷静に評価している。好き嫌いと良し悪しとを、きちんと区別しているし、「フランス(風)」「プティ(風)」には触れていない。当然、下手な日本人「クラスタ」が陥る罠に嵌まらない。外国人の方が余程マトモじゃないか!

自分の好き嫌いで、良し悪しを言うのは害悪である。下手な日本人「クラスタ」が言うところの「欧州人は大人」的な出羽守言説など、存在するに値しない。当該「クラスタ」に該当する者には、猛省を促したい。

2021年3月13日土曜日

新国立劇場バレエ団「眠れる森の美女」(2021年2月公演)ワルイ子諜報団 座談会

 2021年2月20日から23日まで、新国立劇場にて上演された、新国立劇場バレエ団「眠れる森の美女」についての座談会。

この公演については、あきらにゃん が長野県外に出られない事態になったことを踏まえ、「ワルイ子諜報団」工作員「ワルイ子東京城西」に対し、無償にてチケットが譲渡され、対価としてレポートが あきらにゃん に対して送付されることとなった。

今回、レポート提出の際に座談会を当方から申し入れたところ、ワルイ子東京城西 の快諾があり、座談会が実現できた。その内容をここに記したい。


以下)あ:あきらにゃん(司会)、 東:ワルイ子諜報団「ワルイ子東京城西」


1.レポートについて

あ:男性ダンサーについてのコメントがないが、どういうことなんだい?

東:オトコは知らね。ただそれだけ。

あ:それでも、なにがしかコメントの一つくらいあるやろ?

東:うん。速水渉悟くんは一枠でいいから早急に主役につけて、主役慣れさせるべきだね。あと、プロローグでの7人のカヴァリエは素晴らしい。揃い方が自然な感じなのもいい。


あ:今回、優里りんについてだいぶ厳しいが?

東:私もこれまで初台で何回も観劇してきたけれど、もう彼女に いい子ちゃん役 をやらせるべきではないと思う。向かないのに主役を含む大きな役を割り当てられて、逆に可哀そう。

あ:かつて、優里りんシンデレラ拝見したことがあったけど、正直シンデレラ役、優里りんは似合わないのだよね。その違和感がさらに表面化しているような感じなのかな?


2.いい子ちゃん役 についての議論

あ:バレエに於ける いい子ちゃん 役に求められる要素を最近考えます。

東:米沢唯ちゃんは「正しいポジション、美しいつま先、手先、そこにオーロラ姫のキャラクターが生まれてくる」(テアトレ誌2021年3月号通巻292号7頁、新国立劇場運営財団発行)と言っている。ポジションとポジションとの間は自由にとも発言しているけど、やはり いい子ちゃん の基礎には様式が伴うのだと思う。

あ:正しい様式による美しさがあっての いい子ちゃん だと。

東:そう。おそらく各コンクール受賞時点では未確立で、バレエ団に入り、実演と優秀なバレエミストレス/マスターの長年に渡る指導、各ダンサーの研ぎ澄まされた感覚により、年単位で確立していくものだと思う。

あ:「心を込めた演技」だとか「入魂の演技」だと勝手に観客が思う踊りは、実のところダンサーはこんなことを考えてはいないかと。「心を込め」れば上手くいくのであれば、誰も苦労しない。

東:瞬間瞬間で、体のそれぞれのパーツがどの位置になければいけないかと言った精密な作業の積み重ねなのだろうね。「心を込める」のではなく、感覚を研ぎ澄ませて精緻にコントロールしていく感じなのだろうなと、私は思っている。特に、今回のアウロラの第二幕の幻想のソロや、「ドン キホーテ」でのドルシネア姫で、その辺りが問われるような気がする。

あ:リラ役も、様式美が問われそうですね。

東:多くの観客が、リラとカラボスとの対決を「スケバンのタイマン」と勘違いしていることは嘆かわしい。ツイッターで「バレエに詳しい風」を吹かせている「大御所」「重鎮」含めて、その勘違いが蔓延している。リラ役は、優美さや慈愛、気品が基盤となる。毅然とカラボスと対峙する場面でも、これら三つの基盤を観客に伝達されなければならない。善とはそういう存在。

あ:その優美さや慈愛や気品を表現するのには、やはり様式美を正確に実現しないといけないのだよね。

東:その辺り、唯ちゃん絢子さん千晶さんは高いレベルで実現できているし、典型的お嬢様の紗帆りんがリラ役に充てられても同様だと思う。理沙子ちゃんはお転婆娘だから、リラ役が似合うかどうか疑わしいが、踊りの方向性は真っ当なので、アウロラは大丈夫と推察する。

あ:その辺り優里りんが・・・バレエ的にグレちゃっていると。

東:そういうこと。唯絢子千晶紗帆理沙子さんたちが地道に努力してやっていることを、やっていないのではないか?多分、努力の方向性を間違えていると思う。顔芸を凝らせて糊塗しようとしていたり。


3.唯ちゃん絢子さん以外のアウロラは誰が良かったのか?

あ:今回、優里りんはダメだったらしいけど、誰だったら良かった?

東:まず、4公演しかないのであれば、唯ちゃん絢子さんにそれぞれ2枠を与えるべきだったと考える。残念ながら、私は過去公演の理沙子ちゃんアウロラを観ていないので、優里りんを理沙子ちゃんに替えるのが妥当かは判断できない。

あ:それでもサードキャストを組むとしたら?

東:若手の三人でキャストを組むとするなら、アウロラ理沙子、リラ紗帆、カラボス優里で決定だな。

あ:私も同感です。

東:ていうか、リラは千晶さん紗帆りんのダブルキャスト、カラボスは美和りん優里りんのダブルキャストにするべきだったと思っている。

あ:今回のキャスティングとは方向性が違うが?

東:三つの問題がそれぞれ絡み合っていると私は思っている。第一に、近いうちに引退する世代と、現在育成するべき世代の問題。第二に、優里りんのキャリアパスの方向性の問題。第三に、新国立劇場バレエ研修所や牧麻佐美研修所長のメンツの問題。


4.若手育成の問題

あ:今の、第一と第二の問題は、若手育成の問題と整理することが可能であると思うが。

東:そうだね。近いうちに、研修所1期生と2期生は引退の時期を迎える。美和りんの引退が迫っているし、美和りん引退の二年後には2期生が引退となる。美和りん千晶さん亜沙子さんの穴をどう埋めるか?

あ:亜沙子さんを ワルイ子ちゃん にしようとバレエ団は考えているようであるし、亜沙子さんなら一定の成果は期待できると思うが?

東:確かに亜沙子さんならできるけど、でも、美和りんの穴を二年しか埋められないから、応急手当に過ぎないのだよね。

あ:そこで、バレエ的にグレちゃった優里りんを ワルイ子ちゃん に転向させようと!

東:成功するか否かは不明だけど、有望だと思う。上手くいったら、今後10年以上に渡って ワルイ子ちゃん は安泰となる。

あ:千晶さんのポジションは紗帆りんがしっかり引き継げると思うが。

東:これは確か。しかし、先ほど私が「アウロラ理沙子+リラ紗帆+カラボス優里」のキャスティングを言ってみたけど、その次の世代のキャスティングが全く考えられない状態となった。

あ:これが新国立劇場バレエ団の時限爆弾になっているんだよね。主役サードキャストから準主役級がかなりヤバい状態。現在は、千晶亜沙子紗帆理沙子の「いい子ちゃん四人組」で盤石な状態だけど、千晶さん亜沙子さんが引退したら一気に瓦解する。

東:理沙子ちゃんを2016年9月に入団させて以来、その次の世代のダンサーを全く考えず、いつの間にか五年経過しようとしている状態だからね。

あ:誰を紗帆理沙子の後について来させるかは吟味しないといけないのだよね。現在のファーストアーティストの方をソリストに昇格しても、年齢的な面で応急手当にしかならない。コロナ禍を逆用して、国外バレエ団から移籍を充てにしても、30歳前後だとやはり応急手当にしかならない。現在20歳代前半が、本来あるべき次世代のダンサーなのだけど、ファーストアーティスト階級には誰もいないし、研修所でも養成できていない。なので、前二者の応急手当で、千晶さん亜沙子さんの穴を埋めるのだろうなあ。


5.新国立劇場バレエ研修所の問題

あ:新国立劇場はバレエ研修所を持っているので、有利だと思うが。

東:劇場がバレエ研修所を持っているのは必要なことだと思うし、一見有利に見えるのだけれど、現在のバレエ研修所は機能不全に陥っていると思う。6期生修了とともに存在意義を廃したと言ってよい。

あ:小野絢子さんを輩出した後、ファーストアーティストまで昇格しているのが6期生辺りまで。それ以降は、優里りん以外全員アーティスト階級だし。

東:まともなソリスト育成機能を完全に喪失しちゃったのだよね。期待の星だった優里りんがバレエ的にグレちゃったから、絢子さんを最後にソリスト育成は終了したようなもの。研修所のセンセ大丈夫なのか?ちゃんとしたセンセ雇っているのか?

あ:紗帆理沙子と、(一見「デュオ」出身のように見えるけど、実際は)国外バレエ学校で堅実なソリストを育ててもらっているようなもの。

東:優里りん、どうしてアウロラとかリラとか、彼女に向かない いい子ちゃん にキャスティングしているのだろう?

あ:ここから先は、陰謀論であることを願って話してみるけど、木村優里をプリンシパルにしないと、バレエ研修所の存在意義をアピールできないからじゃないの~?牧阿佐美研修所長が上層部を使って みやこちゃん に圧力を加えていたりして。そんな疑惑を持っちゃうよ。冗談だと信じたいけど。

東:もし本当に、バレエ研修所のメンツのために、牧阿佐美研修所長のメンツのために、木村優里を主役(≒いい子ちゃん)に充てているのだとしたら、優里りんにとっても不幸だし、本来割り当てられるべきダンサーにとっても不幸だし、観客にとっても不幸だよね。

あ:そう、真っ当に努力している他ダンサーも犠牲になるし、公演内容にも影響してしまうのだよね。

東:大体さあ、バレエ団とバレエ研修所、同じ方向向いているの?研修所入試の際に、みやこちゃん 参画しているの?

あ:先日の21/22シーズン説明会の際に記者からの質問に対する回答で、バレエ研修所は みやこちゃん の管轄外だと話したみたいだね。バレエ団のダンサー養成計画に基づいて、研修所のカリキュラムや入所学生の選抜を行うべきなのに、完全にバラバラ。数年に一度のマトモなソリスト養成すらできないようでは、バレエ研修所の解体論がそのうち出てくるのではないのかな?


6.カーテンコールについて

あ:深刻な話題になってしまったけど、「眠り」の公演に戻ろう。カーテンコールはどうだった?

東:千秋楽は知らんけど、千秋楽以外では、やはり唯ちゃんの時が一番盛り上がっていた。てか、当然のことながら、本番の時から興奮度が高い状態だった。

あ:原因は何だったのやろ?

東:唯ちゃんの演技自体の強さと見事さ。それに、一公演しか割り当てられていないことへの同情もプラスされていたのではないかと思う。唯ちゃんファンはお互い仲悪くてバラバラだけど、血気盛んな人たち多そうだしね(笑)。あと、唯ちゃん唯一の公演が第三公演だったのも、良かったのかも知れない。初日第一公演は、観客が模様眺めで冷淡な反応になりがちだから。あと、脇が公演を重ねるごとに盛り上がっているし。

あ:その意味では、ファーストキャストだったけど初日だけのアウロラだった、2018年6月公演より好条件だったのでしょうね。それだけが唯一の救いだったのかな。

あ:唯ちゃんは、後ろ盾が誰もいないしね。研修所出身でもなければ、牧系の教室出身者でもないし、首都圏出身でもないから、チケット購入する(出身バレエ教室等の)組織票もない。本人の実力だけで今の地位に就いてその座を守っているのだからね。そんなバレエ外の要素で応援している訳ではないけれど、一応このことは頭の中では常に意識している。


あ:では、そろそろ座談会終了しましょうか。お時間作って下さり、ありがとうございました。

東:同志との語らいほど楽しいものはありません。これからも、誰も言わないことを言い続けていきましょう!


参考:新国立劇場バレエ団「眠れる森の美女」2021年2月 観劇記録↓

http://ookiakira.blogspot.com/2021/03/20212.html


2021年3月11日木曜日

新国立劇場バレエ団「眠れる森の美女」2021年2月 観劇記録

2021年2月20日(土)から23日(火)にかけて、「眠れる森の美女」が新国立劇場バレエ団により上演された。

当方、東京都内の新型コロナウイルス感染状況悪化のため観劇できず、「ワルイ子諜報団」の仲間である「ワルイ子東京城西」にチケットを無償譲渡した上で、レポートを依頼した。以下、その記録である。

なお、このレポートは、2月20日(土)公演、21日(日)昼公演・夜公演の三公演のみを対象とし、2月23日(火)千秋楽公演は対象としない。


1.概観

2021年2月20日にマチネ一公演、21日にマチソワ二公演、23日にマチネ一公演と、短期集中公演であった。そもそもが「吉田都セレクション」の上演が不可能になったことにより演目変更をしたものである。

通常下位階級が演じる役に主役準主役級のソリストが充てられた点で、ダンサー不足が露呈した感が強い。第二幕「貴族たち」では、新国立劇場バレエ団創立時から踊り続けてきた丸尾孝子も登場し、「村人たち」では、超豪華メンバーと登録アーティスト(新人)とにより演じられた。群舞をもきちんと踊れるソリスト級が、下位階級不足のあおりを受けて群舞の要素が強い役に割り当てられた、逆の言い方をすると、ソリスティックな役が充てられない形となったようにも思える。新国立劇場バレエ団では、フロリナ王女役は主役級を充てているが、池田理沙子と柴山紗帆をフロリナ王女役としたのは、バレエ団なりの、彼女たちへのせめてもの誠意か。

2014年のイーグリング版初演時以来の主演ファーストキャストは米沢唯が担当したが、今回の公演群では小野絢子に変わった。そもそも2月公演は小野絢子推しの予定であったのか(10月1月6月は米沢唯推しで、12月2月5月は小野絢子推しとして、バランスを取ってる感がある)?ファーストセカンドについては議論の余地があろうが、公演結果からすれば、米沢唯と小野絢子それぞれ二公演の上演で行うべき内容であった。米沢唯が一公演のみの割り当てとなった点については、別項の不当事項にて指摘したい。


2.今回の公演群で最も貢献したダンサー

・米沢唯(アウロラ)

・本島美和(カラボス)


3.ある公演で最も貢献したダンサー

・細田千晶(リラ)2021年2月21日(日)昼公演


4.アウロラ(オーロラ)役について

1位:米沢唯、2位:小野絢子 の順であった。この二人だけが、主演者としての力量を発揮した。


5.米沢唯

米沢唯のアウロラは、少なくとも第二幕・第三幕では、これまでの新国立劇場の歴史に残る決定的な名演であった2017年5月6日公演の水準を上回った。若干硬さが見られた第一幕に於いても、ローズアダージョでの手放し時間が最長であるなど、素晴らしい内容であったが、第二幕・第三幕は絶好調と言えるもので、理想的な形で演じられたものと察する。極言すれば、「眠り」で殊更に大きく取り上げられるローズアダージョで失敗しても痛くも痒くもない。第二幕第三幕で取り戻せる。ローズアダージョはハイライトでも何でもなく、単なるエピソードだと思えるものであった。

この公演でまず盛り上げたのは、第二幕の幻想のソロであった。厳粛な場面で、コントロールを繊細かつ高度に効かせて格調高い表現を実現し、この眠気が襲ってくる場面で観客の意識を集中させ、美しい踊りに酔わせた。

他方、第三幕のグランパドゥドゥでは、舞台奥方から上手側を半円状に回り下手側前方に至る場面で、息が止まるほどの見事な演技であった。一回速度を落として回り、元のテンポに戻した後、二つか三つほどの高度な装飾を交えたものである。米沢唯の踊りの強さであれば、単に一定のテンポできれいに回りながら終えても観客を興奮させ、絶賛されるところであるが、予想を裏切る高度な装飾により、新国立劇場の歴史に残る特別なグランパドゥドゥとなった。


6.本島美和

最強のカラボスであり、負けるのが信じがたい程である。彼女のカラボスはいつでも最良のカラボスであるが、特に2月21日夜公演のカラボスは、命懸けと思えるほどの渾身の演技であり、笑ってしまう程のコワイ悪役を演じているのにも関わらず、涙腺が潤みさえするものであった。年齢や今後の上演演目から察するに、本島美和にとって最後のカラボスであったことも、渾身の演技に繋がったのかもしれない。この公演で、米沢唯(アウロラ)と二人で歴史的名演を構築する姿を見れたことは感慨深い。

他方王妃役では、寺田亜沙子演じるカラボスにイジメられる際の困惑した表情や、紡錘を持った少女たちの赦免を王に迫る場面での妖艶さに惹きつけられた。


7.細田千晶

リラの役で涙腺が潤むとは思わなかった。細田千晶のリラは、気品と慈愛に満ちている。他方第一幕で、呪い掛け放題のカラボスの前で「やめなさい」と両手を横に出すマイムとともに、上手側奥方に登場する場面では、威厳すら感じられる。カラボスとの対決の場面でも、上品さを失う場面は全くなかった。妖精や付き人との群舞の場面では、完璧な調和の上に、真ん中であるリラとしてのあるべき存在感を示した。プロローグ終了の時点で、寺田亜沙子が演じるカラボスが敗色濃厚となる説得力は、(たとえ寺田亜沙子との八百長・・、じゃなかった、綿密な演技面での打ち合わせによるものであったとしても)驚異である。まさにリラ役の模範であり、絶賛に値する。細田千晶を超えるリラ役(と「森の女王」(ドン キホーテ))は、新国立劇場バレエ団の中にはいない。


8.小野絢子

今回の「眠り」にて、スタイルが大幅に変わった。繊細さの他方で、踊りの弱さが物足りなかった「絢子ワールド」は消滅し、踊りが強くなった。幸せな変化であり、米沢唯とともにプリンシパルとしての格を示した。


9.池田理沙子

今回の「眠り」ではキャスティングに恵まれず、内心思う所はあったようにも思える。それでも誠実に全ての役に臨み、フロリナ王女の役では鳥に思える箇所もあり、素晴らしい出来であった。


10.柴山紗帆

フロリナ王女は、池田理沙子とは別の意味で素晴らしい。宝石では速水渉悟との相性が良かった。今回リラ役への割り当てはなかったが、細田千晶の後を継ぐ筆頭候補者であると考える。


11.奥田花純

勇敢の精・エメラルドのような、音が多く踊りが詰め込まれている役のエキスパートであり、両方とも実に見事である。このような役(他には、秋の精(シンデレラ))では、基本的な地力がある優れた踊り手のレベルよりも、一日の長があるところを示している。


12.木村優里

アウロラ役もリラ役も、求められる標準的な水準に達していない。概して、踊り自体が何となく美しくない。役に求められる要素を理解しないまま、自己流(=自分勝手)にいろいろ考えて好きなように踊っているだけの印象である。

アウロラ役については、冒頭長い四肢を見せつける箇所の掴みは良いと思うが、その程度である。彼女にとって、ローズアダージョさえ目立った失敗なくできれば、得意満面だったのだろう。いつものように、ごく普通に踊っている箇所が何となく美しく決まらないが、その弱点が、特に第二幕の幻想のソロで露呈した。ただ単に振りをさらっているだけで、何も訴えてくるものがない。どうしてデジレ王子は、細田千晶のリラにお乗り換えしないのだろうと思うほどである(そのくらい、細田千晶リラに負けていた)。観客に「心が入っていない」ように思わせるのは、「この瞬間はこのようでなければならない」という研ぎ澄まされた感覚、あるいは、様式についての考慮が全く欠如しているからではないか?当然、米沢唯・小野絢子と比して著しい差がついている。米沢唯からアウロラ役の貴重な一枠を奪う正当性は全くなかった。これでは、米沢唯ファンから怨嗟を投げつけられても仕方あるまい。

他方リラ役も、プロローグで納得できる所作が見当たらない。本島美和が演じるカラボスと全く拮抗できていない。カラボスとの対決のアプローチは「スケバンのタイマン」であり、リラ役に求められる気品や慈愛が完璧に欠如している。正統的なアプローチを採らないのであれば、正統的なアプローチを凌駕する天才的な閃きで観客を納得させるしかないが、そのような力量は木村優里にはない。

また、群舞が出来ない弱点も露呈している。2月20日公演では、プロローグで、下手から上手へ妖精とリラの7人が順次踊った後で、ユニゾンにより7人で決める所で、木村優里だけが完璧なまでに遅れた。音感が悪いのか?自分勝手なのか?は不明である。遅取りであるとは承知しているが、その箇所は群舞モードに切り替えて、他の六人のダンサーと合わせるべきところである。(もっとも、2月21日夜公演では、その場面は是正された。相当強く指導者から指摘を受けたと思われる)

新国立劇場バレエ団は、プリンシパルに至るまで群舞がきちんとできることが特色であり、だからこそバランシン作品でも高い評価を受けてきた。その伝統を、木村優里は引き継ぐつもりはないようだ。今シーズンは、プリンシパルへの昇格に向けての最終考査であるかのような木村優里のキャスティング(かなり優遇されている)であるが、今の技量でのプリンシパル昇格は適切ではない。

不思議なことに誰も表立って言わないのであるが、木村優里にはカラボスが向いているのではないか?木村優里はバレエ的にグレてしまっており、正統的なバレエの様式を実現させなければならない いい子ちゃん 役は向いていない。グレてしまった以上、ワルイ子ちゃん役に転向した方が良いキャリアを積めると思う。凝った顔芸をやりたがる面も、プラスに働くかもしれない。育成が順調に進み(本島美和の引退に間に合うのが理想)、当たれば、今後10年以上にわたりワルイ子ちゃん役は安泰となる。向いていないアウロラやリラの役を割り当てられたのは、彼女にとっても不幸な話である。王道を歩めないのであれば、邪道を究めるのが、希望が持てる選択肢なのではないか?


13.不当事項他

下記の通り、不当事項を指摘するとともに、意見表明する。

13-1.不当事項

・アウロラ役に米沢唯を二公演割り当てなかったことは、明らかな不当である旨指摘する。

13-2.意見事項

下記の通り意見する。

・アウロラ役は、米沢唯・小野絢子、それぞれに二公演割り当てるべきだったと強く表明する。

・議論の余地はあるものの、アウロラ役のファーストキャストは、やはり米沢唯であるべきだった。

・リラ役は、細田千晶のような、気品と慈愛を醸し出せるダンサーに割り当て願いたい。


参考:新国立劇場バレエ団「眠れる森の美女」(2021年2月公演)ワルイ子諜報団 座談会↓

http://ookiakira.blogspot.com/2021/03/20212_13.html

2021年1月6日水曜日

新国立劇場バレエ団プリンシパル 米沢唯さん ご出演情報

(2021年5月9日現在)

【注意事項】
・特に記載がない公演は、新国立劇場バレエ団の公演、場所は新国立劇場、主催者は新国立劇場運営財団。
・全ては、公にされた情報であり、未公開情報は一切掲載していない。
・【確定】は主催者から明確にご出演が発表されている公演。
・(ほぼ確定)は主催者から発表されていないが、過去の実績から95%の確立でご出演が間違いないと私が判断した公演。
・(濃厚)は主催者から発表されていないが、過去の実績から(ほぼ確定)よりも低い確率でご出演があり得ると私が判断した公演。
・情報の利用は、各自ご確認の上、自己責任で行われたい。

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2021年6月5日(土) 「ライモンダ」ライモンダ【確定】
2021年6月13日(日) 「ライモンダ」ライモンダ【確定】
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2021年7月8日(木) 「ROCK BALLET with QUEEN」【確定】
新宿区立新宿文化センター(東京)
主催:ダンサーズサポート

2021年7月17日(土) 堀内元 BALLET FUTURE 2021 「チャイコフスキー パ ドゥ ドゥ」【確定】
メルパルクホール大阪(大阪市)
主催:BALLET FUTURE 2021 公演実行委員会/オフィス・エイツー

2021年7月24日(土)昼公演 子ども「竜宮 りゅうぐう ~亀の姫と季の庭~」プリンセス亀の姫【確定】
2021年7月26日(月)夕公演 子ども「竜宮 りゅうぐう ~亀の姫と季の庭~」プリンセス亀の姫【確定】
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新国立劇場バレエ団プリンシパル 米沢唯さん 2021年出演記録

 新国立劇場バレエ団プリンシパル 米沢唯さん 2021年出演記録
(2021年5月7日現在)

【注意事項】
・新国立劇場バレエ団プリンシパル 米沢唯さん の2021年出演記録(実績)
・特に記載がない公演は、新国立劇場バレエ団の公演、場所は新国立劇場、主催者は新国立劇場運営財団。
・情報の利用は、各自ご確認の上、自己責任で行われたい。
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(2021年1月9日(土) ニュー イヤー バレエ 「パキータ」パキータ、「ペンギン カフェ」ユタのオオツノヒツジ は公演中止となった)
(2021年1月10日(日) ニュー イヤー バレエ ‘Contact’、「ペンギン カフェ」ユタのオオツノヒツジ は公演中止となった)
2021年1月11日(月) ニュー イヤー バレエ 「パキータ」パキータ、「ペンギン カフェ」ユタのオオツノヒツジ・ケープヤマシマウマ【無観客による公演・動画配信による中継】
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2021年2月21日(日)(夜公演) 「眠れる森の美女」アウロラ姫

2021年2月28日(日) 「音楽×空間×ダンス」第二回公演 米沢唯 島地保武 木ノ脇道元 を迎えて
武蔵ホール(埼玉県入間市)
主催:笠松泰洋
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2021年3月21日(日) 「白鳥の湖」オデット
吹田市市民会館(大阪府吹田市)
主催:公益財団法人 吹田市文化振興事業団

2021年3月28日(日) CCJオープニング パフォーマンス『みち』
BankART Temporary(横浜市)
主催:一般社団法人コレオグラフィックセンター
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2021年4月10日(土) 「白鳥の湖」オデット/オディール
山形県総合文化芸術館(山形市)
主催:山形県総合文化芸術館オープニング事業等実行委員会
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2021年5月2日(日) 「コッペリア」スワニルダ【無観客による公演・動画配信による中継】
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2020年12月31日木曜日

新国立劇場バレエ団プリンシパル 米沢唯さん 2020年出演記録

新国立劇場バレエ団プリンシパル 米沢唯さん 2020年出演記録
(2020年12月31日確定)

【注意事項】
・新国立劇場バレエ団プリンシパル 米沢唯さん の2020年出演記録(実績)
・特に記載がない公演は、新国立劇場バレエ団の公演、場所は新国立劇場、主催者は新国立劇場運営財団。
・情報の利用は、各自ご確認の上、自己責任で行われたい。

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2020年1月11日(土)ニューイヤー バレエ DGV(Danse à Grande Vitesse)第三区
2020年1月12日(日)ニューイヤー バレエ DGV(Danse à Grande Vitesse)第三区
2020年1月13日(月)ニューイヤー バレエ 「ライモンダ」よりパ ド ドゥ・DGV(Danse à Grande Vitesse)第三区
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2020年2月22日(土) 「マノン」マノン
2020年2月23日(日) 「マノン」マノン
(2020年2月29日(土) 「マノン」マノン は公演中止となった)
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(2020年3月27日(金) 「Dance to the Future 2020」’Contact’、「神秘的な障壁」/’Les Baricades mistérieuses’、’accordance’は公演中止となった)
(2020年3月28日(土) 昼公演・夜公演 「Dance to the Future 2020」’Contact’、「神秘的な障壁」/’Les Baricades mistérieuses’、’accordance’は公演中止となった)
(2020年3月29日(日) 「Dance to the Future 2020」’Contact’、「神秘的な障壁」/’Les Baricades mistérieuses’、’accordance’は公演中止となった)
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(2020年4月4日(土) 「白鳥の湖」オデット/オディール は公演中止(2021年4月10日(土)に延期)となった)
山形県総合文化芸術館(山形市)
主催:山形県総合文化芸術館オープニング事業等実行委員会
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(2020年5月2日(土) 「ドン キホーテ」キテリア は公演中止となった)
(2020年5月9日(土) 「ドン キホーテ」キテリア は公演中止となった)
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(2020年6月5日(金) 「不思議の国のアリス」 アリス は公演中止となった)
(2020年6月7日(日) 「不思議の国のアリス」 アリス は公演中止となった)
(2020年6月10日(水) 「不思議の国のアリス」 アリス は公演中止となった)

(2020年6月20日(土) 「不思議の国のアリス」 アリス は公演中止となった)
愛知県芸術劇場 (名古屋市)
主催:公益財団法人 愛知県文化振興事業団

(2020年6月28日(日) 「不思議の国のアリス」 アリス は公演中止となった)
高崎芸術劇場(群馬県高崎市)
主催:公益財団法人 高崎財団
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2020年7月24日(金) 子ども「竜宮 りゅうぐう ~亀の姫と季の庭~」プリンセス亀の姫
2020年7月26日(日)昼公演 子ども「竜宮 りゅうぐう ~亀の姫と季の庭~」プリンセス亀の姫
(2020年7月30日(木) 子ども「竜宮 りゅうぐう ~亀の姫と季の庭~」プリンセス亀の姫 は公演中止となった) 
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2020年8月14日(金) 大和シティバレエ夏季公演 「牡丹灯篭」・’Contact’
大和市文化創造拠点シリウス(神奈川県大和市)
主催:佐々木三夏バレエアカデミー

2020年8月17日(月) SHIVER京都 ‘Contact’
2020年8月18日(火) SHIVER京都 ‘Contact’
京都会館ノースホール(京都市)
主催:株式会社ソイプランニング
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2020年9月19日(土) 子ども「竜宮 りゅうぐう ~亀の姫と季の庭~」プリンセス亀の姫
アルカスSASEBO (長崎県佐世保市)
主催:公益財団法人 佐世保地域文化事業財団
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2020年10月23日(金) 「ドン キホーテ」キテリア
2020年10月31日(土)夜公演 「ドン キホーテ」キテリア
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2020年11月15日(日) 「眠れる森の美女」アウロラ姫
札幌文化芸術劇場 hitaru (札幌市)
主催:公益財団法人 札幌市芸術文化財団

2020年11月29日(日) 「Shakespeare THE SONNETS」
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2020年12月12日(土)夜公演 「くるみ割り人形」クララ
2020年12月18日(金) 「くるみ割り人形」クララ
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2020年11月4日水曜日

新国立劇場バレエ団「ドン キホーテ」2020年 観劇記録

 2020年10月23日(金)から11月1日(日)にかけて、「ドン キホーテ」が新国立劇場バレエ団により上演された。

当方、東京都内の新型コロナウイルス感染状況悪化のため観劇できず、「ワルイ子諜報団」にチケットを無償譲渡した上で、レポートを依頼した。以下、その記録である。

1.概観

新国立劇場バレエ団の芸術監督が、吉田都に代わり、三代ぶりに当地在住となった意味は大きい。ビントレー、大原とUK在住、日頃のリハーサルから立ち会うことはできなかったのだろう。概してダンサーのスタイルが変わり、表現が強化されたところに、吉田都芸監の指導の成果がさっそく現れた。

昨シーズンまでシニアバレエミストレスだった板橋綾子が退任し、湯川麻美子がバレエミストレスに昇格となった。既に「竜宮」(2020年7月から9月に上演)から指導を開始し、吉田都芸監との方向性も合致しており、コールドに至るまでダンサーたちの士気が上がり、今回の「ドン キホーテ」の強化に貢献したように思える。第一公演からコールドを含めて舞台に熱気が満ちていた。ストーリーに難があるファジェーチェフ版が面白く感じられたのも、その成果であろう。

表現するための知見をダンサーに伝授する体制が、吉田都-湯川麻美子ラインにより確立されたと思える公演群であった。

2.キテリア(キトリ)役について

ベストスリーは、1位:米沢唯、2位:小野絢子、3位:池田理沙子の順であった。

3.米沢唯

米沢唯のキテリア(キトリ)は、2016年公演と比して身体の使い方が変化した。ニュアンスやアクセントがより豊かになった。2016年の時点で高水準でありながら、敢えて踊りのスタイルを変え、さらに表現が強くなった。もちろん顔芸も濃厚にはなっているが、そもそもの踊りのスタイルの基礎から進化させたのが最も大きな要因である。長い上肢はコントロールが良く効き、絶大なる圧を観客に与える。この圧は、米沢唯でなければ実現できない。トリプルを交えたフェッテが取り沙汰されがちな彼女であり、もちろんフェッテは誰よりも回転が掛かり安定し見事なものであるが、これとは対照的な第二幕第三場でのドルシネア姫を演じる際の、様式美と気品、優美さで涙腺が潤む。世界的にも最高のドルシネアであろう。

この「ドン キホーテ」での公演は、井澤駿・速水渉悟の二人をパートナーとした。二人のパートナーと演じることは、二演目演じるも同然であり、また、リハーサル時期も重なり、大きな負荷が掛かったと考えられるが、二公演とも熱く引っ張った。

4.小野絢子

特段スタイルの変更はなく、いつもながらの繊細に計算されつくされた「絢子ワールド」を進化させたもの。特に11月1日千秋楽公演は明らかに絶好調であり、彼女が意図した演技が見事に実現されていた。

5.池田理沙子

初役でありながら、池田理沙子の本性丸出しの演技で楽しめた。カワイイ顔立ちでありながら気が強い彼女の性格をそのまま出せばよく、キテリアとキャラクターの相性が合っていた。入団から四年近く経過し、技術面を年々進化させ、不利な体格の中であるべき所作を見つけ出して来ていたが、首から上に大きな課題が残っていた。しかしながら、「竜宮」とこの「ドン キホーテ」を演じる過程で、笑顔は自然となり、本性丸出しの表現が豊かになった。パートナーの奥村康祐との相性も抜群に素晴らしい。第一幕でのタンバリン片手リフトも、余裕の滞空時間の長さを保った。若手主役グループの中では頭二つ抜け出し、最もプリンシパルに近い候補と評価できるほどに進化した。

別の役であるが、第三幕の第二ヴァリアシオンも揺るぎない脚の強さや無音着地が活き、全般的にも素晴らしい出来であった。

6.柴山紗帆

彼女は、池田理沙子とは対照的にリアルお嬢様であり、お転婆娘のキテリア役とキャラクターが適合しているとは言い難かった。また体調が良くなかったからか、日頃の美しい所作が活きたとは言い難かった。それでも第三幕は見違えたようになり、ヴァリエーションの場面で彼女の特質が活かされた。サポートに定評がある中家正博の助けも活き、第一幕でのタンバリン片手リフトも長時間保った。

7.木村優里

第一幕でのガマーシュへのおざなりレヴェランスの場で舌を出すなど、独特な芝居は波紋を呼びそうだが、これは是とする。しかしながら、渡邊峻郁(どういう訳か、踊りの線が細く感じた)との相互作用は希薄で、二人で細かく演技を設定して勝負する「ゆりたか」コンビの特質は出なかった。また、彼女の恵まれた体格は活かされず、進歩が停滞しているようにも感じられる。フェッテはトリプルが入り、ニューイヤーバレエの時とは違い音楽に遅れることもなかったが、しかしフェッテだけが出来ればいいという問題ではなく、バレエの様々な所作について、基礎からの見直しが必要な感がある。所作が何となく綺麗に決まらない。せっかくの長い上肢がコントロールされておらず、ニュアンスが希薄なのは残念である。「街の踊り子」の衣装とは抜群に似合い、その意味での「華」はあるが、「華」だけでバレエは成立しない。

8.メルセデス

やはり本島美和を役につけるべきであった。渡辺与布、益田裕子とも、本島美和の2016年公演の水準には達していない。益田裕子は頑張っているが、最後の回転の場面で止まってしまうのが惜しいところである。しかしながら、両手持ちのスカート捌きは良かった。渡辺与布は本当に美女で、登場の場面は映えるが、あまり品がなく(まあそれは許す)、終盤に行くに従って技量不足が露呈した。踊りの技量不足の他、スカート捌きも雑な状態なのはあり得ない。

9.カスタネット

これは特殊技能が必要な役柄で、特に初日は完全にズレていた。朝枝尚子は比較的オケとのテンポが合っており、キャラクターとも適合しており、抜擢組の中では成果を上げていた。

10.森の女王

なんだかんだ言っても、やはり細田千晶がよく似合う役柄で、細田千晶を超えるダンサーは現れないだろう。

11.その他注目するべきダンサー

奥田花純・五月女遥の第三幕第一ヴァリアシオンは無音着地を含め実に見事。

速水渉悟は初主役であったが、第二幕第一場米沢唯ダイブギリギリ直前までの回転や540を決めるなど、アメリカンなショーマンシップを交え、鮮烈な主役デビューであった。

木下嘉人のエスパーダは、キレッキレであり強い印象を与える。井澤駿のエスパーダは端正でありながらイケメンオーラ炸裂。二人ともマント捌きが実に巧みなのも素晴らしい。2016年のマイレンの名演を超えたと言える。

福田圭吾は、空中投擲の場面で体の軸を東西から南北に替える技を披露、二人の次席ロマの役も木下嘉人とともに激しさを表現した。

12.抜擢されたダンサー

重ねて言及するが、カスタネットの朝枝尚子が最も期待に応えたか。第三幕第二ヴァリアシオンの廣川みくりは、明らかに技量不足であった。

2020年8月25日火曜日

「竜宮」ワルイ子諜報団 座談会

2020年7月24日から29日まで、新国立劇場にて上演された、新国立劇場バレエ団「竜宮」についての座談会。

この公演については、あきらにゃん が長野県外に出られない事態になったことを踏まえ、「ワルイ子諜報団」工作員に対し、無償にてチケットが譲渡され、対価としてレポートが あきらにゃん に対して送付されることとなった。

今回、ワルイ子諜報団 工作員各位の好意があり、座談会が開催できた。その内容をここに記したい。

以下)あ:あきらにゃん(司会) ・:ワルイ子諜報団工作員

1. 企画面について

・ホワイエに入った途端、「竜宮」に特化したBGMが流れ、海の物語への期待感を持った。森山開次氏の目の行き届き具合が素晴らしい。

・会場運営面でも、予想以上にスムーズな入場であった。すでに小劇場で「願いがかなうぐつぐつカクテル」が13公演も実施されており、オペレーション面での経験値が「竜宮」開催の時点で上がっていたと思われる。観客が最大745名(あ注:4階席を用いないため、定員は1490名、新型コロナウイルス感染症対策のため空席があり、観客数は最大でもその半分の745名となる)に制限されたことも、円滑な入場の助けになったと考えられる。

・亀の姫・浦島太郎・タイ女将・竜田姫を除き、AキャストとBキャストはかなり厳格に分けられていた。全公演に出演(AキャストとBキャスト両方に入っている)したダンサーは、広瀬碧さんと横山柊子さんの二名だけだった。万一の事態でも、最低限のレベルによる公演が持続できる体制にしていたか?

あ:役の数は90ありますが、34名のダンサーで演じており、一人二役や三役は当たり前でしたね。


2. 舞台装置・照明・音楽・振り付けについて

・生オケが入らない演目であり、オケピに舞台を2mほど延長していた。

・客席に入った時点で、特設のプロセニアムアーチが設営されており、観客を物語の環境へ導いていた。

・照明についてはプロジェクションマッピングを用いた秀逸なもの。舞台天井部から床への照射もしており、二階席・三階席からも楽しめるもの。

・春や秋の場面は美しかったですね。亀の姫が最後舞台奥から進む場面の光の道も素晴らしい。

・音楽は、タンゴから琉球音楽を思わせるものまで多様な素材を用い、パッチワークを上手く組み合させていた。

・振り付けは、「亀の姫」の出演時間が短めで物足りないが、最低限は確保したと言える。改訂の必要性があるとするならば、「亀の姫」の振りをより充実させる方向性になるか?

・多様なディヴェルティスマンを揃え、見どころは多かった。新人を含め、下位階級のダンサーたちにも見所がある配役で、アピールのチャンス、ダンサー各位からの宣伝がいつもより熱を帯びていた感があったが、道理である。

・被せるのが実に上手い。亀の小舟の場面は、単なる道行きになるところ、ウサギと亀の寓話を挿入したり、浦島太郎から鶴に着替える場面で天平美人二人組で視線を引き付けたりして、退屈にならないようにしている。

・ダンサーの背中を強調していますね。エイボンは背中を観客に見せるのが定位置だし。冬の場面の婚礼も、背中を見せての登場だった。


3. 主役級のダンサーについて

・やはり米沢唯さんがダントツであった。長い上肢の扱いが実に巧みで、鳥のよう(亀のヒレだけど(笑))。鷹揚でありながら自立心が強い亀の姫。夫婦明神になる場面はプリマオーラが輝かしく圧巻。随所で感じられる所作の美しさは、誰にも真似できない。

・井澤駿さんは、本来浦島太郎のキャラではないが、優しさが表に出るので、妙に王子っぽいが適合する。「どんぐり」の場面での踊り真似が「下手」なのはご愛敬。鶴になってからが妙にカッコ良すぎで、イケメンオーラ炸裂。

・森山開次さんが、キャラクター設定をするに当たって焦点に当てたのは、池田理沙子さんと奥村康祐さんのコンビか?衣装からしても、この二人に焦点を合わせたような感がある。何も作為を加えなくても、そのままで成立している。

・池田理沙子さんは、別れの場面での悲しみの表現が実現されていた。これまで、明るめな役か人形役かが適任で、古典演目の際に、例えばグランフェッテの間全く表情が変わらない場面も見受けられたが、その弱点は克服されたと思う。表情が動く振り付けに助けられたかも知れないが。

・奥村康祐さんも本当に浦島太郎が似合ってたなあ。役に想定される「大衆」的な外見とか。タイ女将と金魚たちの踊り手(女性7人))に囲まれて、うれしそうにニンマリする場面は、リアルな性格そのものだろ(笑)

・木村優里さんは、圧倒的な米沢唯さん、演目のキャラクターそのまんまの池田理沙子さんと比べると、役の在り方に難しさを感じたが、まあまあ。

・優里さん、小舟をポワントで20cm前方に動かして出発して欲しかった。彼女だけポワントで小舟が動かない。

・たかふみ君が完全にキャラを外していて、全く「浦島太郎」ではなかった。見た目の問題の要素があり、難しいところではあるが。

・たかふみ君、キャラが中途半端な感じがする。駿君のような優しさが感じられず、康祐くんのような「そのまんま」感もないので、「違う」「弱い」という印象になってしまう。

・たかふみ君、小舟の場面で、垂直に立ってる柱を押すのは、あり得ない。あれはない。あの場面は、亀の姫が竜宮に浦島太郎を運んでいるのだから、「浦島太郎が手伝っている」ような在り方は絶対にあり得ない。女性を使役させてるのかよ、って感じになってしまうけど、そういう設定なのだから。

・小舟の場面、米沢唯さんは全部自分で引っ張り、井澤駿くんはほんの僅か軌道修正をしたくらいで、あちこち景色を楽しんでいた。この在り方が正しい。たかふみ君は小舟を押してばかりだった。

・小舟の場面は、奥村康祐さんは前後方向に延びている手すりを掴んでいる形であり、手伝っている感を全く出していない。全部理沙子さんが引っ張った形にしている。女の子大好き~の康祐の奴、なんだかんだ言って優しいのだと思う。

・いわゆる「ゆりたか」コンビ、是非はともかく、綿密に演技のすり合わせをして臨むスタイルなのに、今回はチグハグ感が否めない。

あ:そうでしたか。たかふみ君にとっては相性が悪かった役なのかも知れないですね。


4. その他の役のダンサーについて

・本島美和さんが、タイ女将、竜田姫、両方とも素晴らしい。

・美和りんのタイ女将、すごい貫禄でしたな。ヤクザのリーダーになれるよ(笑)

・コラコラ、呪われちゃうぞ(笑)

・細田千晶さんの竜田姫は、儚さを感じた。

・美和さんの竜田姫は、激しい女の情念でしたなあ。千晶さんとは対照的。

・竜田姫はどういう解釈ですか?皆さん?

・うーん、秋の儚さだったり、散るという印象なのかなあ?あまり考えすぎない方が良さそう?

あ:タイ女将や竜田姫は、ワルイ子ちゃんだったの?

・いや違う。貫禄だったり情念だったりであっても、ワルイ子ちゃんじゃない。

あ;ワルイ子ちゃんいなかったんだ?

・「わっぱ六兄弟」がワルイ子ちゃん。誰が演じているのかは知っているのに、六人それぞれが、誰が誰だかさっぱり分からなかった。


・五月女遥さんの織姫、妙に似合っていた。

・遥さん、福田圭吾くんと良く似合ってましたね。

・Aキャストは小柄、Bキャストは長身の印象!スケール感がかなり統一されていたような。

・バレエ団公式ウェブサイトからの動画配信で見られるけれど、金魚六人群舞はAキャストBキャストとも実に見事。世界最強の群舞の実力を発揮している。


5. その他何か伝えたいことありましたか?

・ブラヴォー禁止令が出たため、スタオベで称賛する形が瞬く間に定着した感じ。

・最大でも745名しか観客がいないはずなのに、1790名満席の時と同様の拍手の圧。その一員になれたことに、変な言い方だけど、観客としての誇りがあった。


6. 終わりに

あ:長野県から出られない我が身、その私の目となり耳となってくださった「ワルイ子諜報団」のレポートに感謝しております。座談会での生の感想も役立ちます。

・いえいえ、良席を無償提供してくださり、ありがとうございました。

・前から9列目で、床へのプロジェクションマッピングをも背景にした席で見られて、感謝感激です。

あ:今後、新型コロナウイルス感染症蔓延が落ち着くか改善するか分かりませんが、私自身も佐世保や富山で、この目で見てみようと思います。座談会に出席ありがとうございました。

2020年2月23日日曜日

Manon (Kenneth MacMillan) National Ballet of Japan, February 2020, review

Manon ('L'histoire de Manon') (Kenneth MacMillan) review
National Ballet of Japan
Saturday, 22nd February 2020
Sunday, 23rd February 2020
New National Theatre, Tokyo (Japan)

Manon: YONEZAWA Yui / 米沢唯
Des Grieux: Вадим Мунтагиров / Vadim Muntagirov

新国立劇場バレエ団「マノン」
2020年2月22日(土)・23日(日)
新国立劇場

表記の公演を観劇した。当該公演は他キャスト含め5公演を予定していたが、26日(水)開催の第三公演をもって、予定外に終了となった。新型コロナウイルス蔓延防止を理由とする日本政府の公演中止要請に基づき29日(土)・3月1日(日)公演は中止となった。

よって、私が観劇したのは、この二公演のみとなった。

公演の水準は、名演と称するべきで、特に23日公演は歴史的名演と称しても良いものであった。2017年5月6日「眠りの森の美女」の歴史的名演を超えたかもしれない。

Des Grieux役 Vadim Muntagirov は、公演四日前からリハーサルに参加したと思われるが、いつもながらに米沢唯との相性は抜群であった。技術的には、Vadim の卓越したサポートが盤石な基礎となって、新国立劇場バレエ団の中で断然トップの米沢唯の技巧が十二分に活かされた。第三幕の「沼地」はもちろんのこと、第一幕・第二幕のパドゥドゥも完璧であった。ゲストとして招かれたのは Des Grieux 役のみであり、Manon 役にゲストは不要であった。双方とも対等のレベルで演じられ、即興的な要素があっても演技の方向性は一致され(米沢唯がどんな演技をしても完璧に受け止めリアクトできる Vadim の包容力の大きさもあるのだろう)、歴史的名演を形作った。

米沢唯の Manon は、古典的な Manon の在り方であった。彼女の心には何ら邪心がない。Des Grieux も好き、兄 Lescaut も好き、お金(ブレスレットが象徴的)も好き、全て真実である。これら三面の姿を見せる米沢唯の Manon の根底には、邪悪さはなく、罪悪感もなく、(たとえ G.M. なり金を選んだにしても)無垢であった。
‘femme fatale’とは、まさに米沢唯の Manon であった。米沢唯の femme fatale の性質は、通例的な「どう見ても悪女であるが、その美貌を用いて男を屈服させる」性質のものではない(そういう性質の femme fatale が得意なのは本島美和である)。米沢唯の Manon は、男を騙す気など全くなく、悪女とは対極にあり、本当に Des Grieux を愛している。しかしながら米沢唯の Manon は燦然とした姿を誇示しつつ(第二幕のソロ)、「流されて」、結果的に男を破滅に導いていく。本島美和的な悪女には警戒するが、米沢唯は悪女ではないから無警戒だ。男にとって、一番怖い femme fatale とは、米沢唯の Manon なのである。

米沢唯の踊りは、振り付けの影響はもちろん受けるが、いつも通りの米沢唯の特質の延長線上にある。彼女の特質である、堅固な様式美と、踊りの強さとが、Manon 役と完璧に調和している。第一幕第二場での、G.M. と Lescaut との三人の踊りや、第二幕第一場での数人の男たちにリフトされる場面での完璧な様式美は、第二幕第一場でのソロと合わせて、燦然とした Manon の絶頂期を形成する。
Des Grieux とヨリを戻した後の第二幕第二場での、ブレスレットを愛でる米沢唯の Manon は、強く、美しく、純粋で、燦然と輝く故に、最も悲しい場面であろう。寝室のパドゥドゥで見せた愛の歓びに満ちた米沢唯の Manon は、金を愛でる Manon に変貌を遂げる。Vadim の Des Grieux が取り戻した(その場面のパドゥドゥも心を強く動かされた)と思った Manon は、金の魔力の作用で変わり果てた姿を見せる。その後の G.M. による Lescaut 銃殺になだれ込む場面は、「兄 Lescaut も好き」を無垢に米沢唯が演じてきたからこそ、劇的で観客の感情を揺さぶらせる。
極論すると、Manon のクライマックスは「沼地」ではない、第二幕だと、強く思わされる。

第三幕での米沢唯と Vadim Muntagirov との演技も、もちろん傑出している。看守からの虐待を受けた後でブレスレットを捨てたところで、Manon は「寝室のパドゥドゥ」の時の愛を取り戻す。放心状態の瀕死の肉体を現す他方で、Des Grieux への愛を示す場面の超絶技巧は強く美しい様式を保ち、その対比が凄絶であった。

よく「英国バレエ」では「演技力」が語られる。しかし「演技力」とは装飾に過ぎないことを、米沢唯の演技を見ると強く感じる。Manon でさえも同じだ。演出・個々の役や場面にもよるのだろうが、観客に響くのは、最後は、踊りの様式美と強さだ。米沢唯の踊りには、装飾を必要以上にしないため、いつもそこに「米沢唯」が感じられる。そのままの米沢唯で舞台の上で生きる Manon の大成功が、何よりもこのことを物語った。

2019年10月29日火曜日

バレエに於ける「演技力」とは何か?

よく(特に「英国バレエ」ファンや、「英国バレエ」に拘りを持っている評論家たちが使う)「演技力」の概念を考えている。その役になるために「作り上げる」ことなのかなと考える。小野絢子さんに対して「絢子姫」と言う言葉がある通り、「姫」になり切るために「作り上げ」ている。木村優里りんもその系列かな?

他方、米沢唯ちゃんが「唯ちゃん」と言われるのは、舞台の上にいるのはその役と言うよりは「唯ちゃん」であるから。あたかも唯ちゃんがそこにいるかのように存在する。
唯ちゃんは「演じて」いるのだろうか?と思うくらいに、どの役のどの場面を現わす場合でも、リアルにそこに「唯ちゃん」がいる。

「ロメオとジュリエット」に於いて、ジュリエット役の唯ちゃんが乳母に対してイタズラを仕掛ける時、本当に日頃から仲のいい他ダンサーにイタズラ仕掛けているように思う。唯ちゃんはその時、何かを「加える」「味付けのソース」を掛けることは、多分考えていない。私には「演技力」と言うものは装飾に過ぎないと思っている。

(わる〜い女の美和りん(本島美和さん)が演じるような役のような、専ら「キャラクター」的要素で構成されている役であれば別だけど)通常バレエの「演技力」と言うものは、「踊り」の基盤の上にある「飾り」に過ぎない。
唯ちゃんほどになると、「飾り」で味つける必要は殆どないんだよね。「踊り」自体のニュアンスで攻めていく。

唯ちゃんは、「飾り」のために「踊り」のフォルムを崩すようなことはない(少なくとも、新国立劇場バレエ団の中では、最も崩さない)。
だから、純舞踊的に美しく上品で、しかし強い踊りが実現でき、(パートナーに最低限の技倆さえあれば、)観客に世界を示すことができる。

新国立劇場バレエ団は、ビントレー政権以降、「英国風」と言われる。「英国」=「演技力」の図式もよく言われ、妙に重視される。
しかし、米沢唯ちゃんを観ていると、人口に膾炙する「演技力」とは何か、再定義が必要なのではと思わせる。
そのように思わせるダンサーは、新国立劇場バレエ団では米沢唯ちゃんしかいない。

2019年10月20日日曜日

'Romeo and Juliet' (Kenneth MacMillan) National Ballet of Japan, Sunday, 20th October 2019

'Romeo and Juliet' (Kenneth MacMillan)
National Ballet of Japan
Sunday, 20th October 2019
New National Theatre, Tokyo (Japan)

YONEZAWA Yui (米沢唯)(Juliet Capulet) acts naturally and excellently. Her Juliet is pretty and mischievous character girl at Act 1, and ambiguity with both strength and weakness at Act 3. Especially Yui’s Juliet at Act 3 is incredible.

Her natural act is based on orthodox style beauty of ballet. Yui’s dancing with Count Paris is filled with empty beauty, for example her progress backward on point.

YONEZAWA Yui usually focuses style beauty. Her real Juliet is composed of (of course, intense act, but) style beauty. Her act teaches me that Juliet cannot be acted by acting skill alone.

MOTOJIMA Miwa(本島美和)(Lady Capulet) is also incredible acting at the lamentation of Tybalt’s death.
FUKUOKA Yudai(福岡雄大)(Tybalt) is the best Tybalt all over ballet in Japan. His Tybalt is filles with intimidation. I cannot believe Yudai’s Tybalt is beaten by the Romeo.

KINOSHITA Yoshito(木下嘉人)(Mercutio), HAYAMI Shogo(速水渉悟)(Benvolio), and TERADA Asako(寺田亜沙子), MASUDA Yuko(益田裕子), YAMADA Utako(山田歌子)(Three Harlots) are all excellent.

SEKI Akiho(関晶帆)(Rosaline) is excellent stage presence of her beauty and cold treat for Romeo. I think that she is best Rosaline of National Ballet of Japan.

2019年3月31日日曜日

新国立劇場バレエ団 DANCE to the Future 2019 感想

新国立劇場バレエ団 DANCE to the Future 2019 感想

2019年3月31日(日) 新国立劇場小劇場

「Improvisation即興」、米沢唯ちゃんの舞踊語彙の豊かさが活きる。

唯ちゃんと中島瑞生さんとの関わりが序盤で充実していた時点で、今回の即興の大成功が約束された。

福田紘也さんをネクラキャラにして、前半は完全封印したのも功を奏したのだろう。異質の性格を一つ作り上げるのに成功した。にしても、「静かにして下さい」とはね(笑)

それにしても、米沢唯ちゃんの活き活きとした明るい表情
音楽家イジリや鳥の仕草も完璧で、唯ちゃんの舞踊の輝くような明るさが現れていた。茶目っ気も溢れ、心の底から楽しくさせる。

米沢唯ちゃんの活き活きとした明るさが、渡邊峻郁さんや中島瑞生にも及び、四人のダンサーによる「即興」を極めて高い水準で成立させた。

疑いようもない名演であり、今回の DANCE to the Future 2019 最強の素晴らしさ!終演後のスタオベは当然であると言える。本当に、本領を発揮できた時の米沢唯ちゃんは無敵である。

その他、第一部「猫の皿」は落語であった。3月31日公演については、福岡雄大くんはピルエットで回り過ぎて頭のネジが外れた変わり者だと悪口を言っていたら、後ろから 背後霊雄大 が現れて・・・のネタ(笑)。本島美和さん・福田圭吾くん・福岡雄大くんの、動物的とも言える視線が独特の雰囲気を醸し出していた。

第二部の「Danae」は、木村優里さん渡邊峻郁さんのステージプレゼンスがポイントで、「beyond the limits of...」も八人の群舞的性格が活きた作品であった。

2019年1月17日木曜日

新国立劇場バレエ団「ニューイヤー バレエ」(2019) 感想

新国立劇場バレエ団「ニューイヤー バレエ」

上演演目:「レ シルフィード」「火の鳥」「ペトルーシュカ」

2019年1月12日から14日(計3公演)新国立劇場大劇場。三公演とも臨席した。

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バレエリュスの三作品を上演した。「レ シルフィード」「ペトルーシュカ」は、ミハイル フォーキンの振り付け、「火の鳥」のみ中村恩恵による読み替え新制作。「ペトルーシュカ」の舞台装置は、バーミンガム ロイヤル バレエ団から借りたものである。

「ニューイヤー」を銘打つ割には、最後は亡霊で終わる。オメデタイ気分で来た方は・・・。
本来「トリプルビル」で売り込むべきところなのでしょうけど、「ニューイヤー バレエ」と商業的にタイトルつけないと、客が来ないっぽいからそうしているらしい。なお新国立劇場バレエ団は「ヴァレンタイン バレエ」と称して恋人同士を引き寄せておきながら、オディールのパドゥドゥを披露するという、鬼畜な演目を用意した実績があり、リア充に対する企画制作者の怨念が垣間見える(笑)。

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「レ シルフィード」は細田千晶さんの浮遊感に注目させられた。群舞は13・14日公演が素晴らしかったか。木村優里さんの長い手足を活かした華やかさがいい。他方、小野絢子さんも不利な体形を全く感じさせずに繊細に形作った。

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「火の鳥」は、ダンサーの実演面では秀逸であり、全てのダンサーが中村恩恵の意図を十二分に表現したものであった。

「娘」役は、米沢唯ちゃん・五月女遥さん、いずれも男性ダンサーに与えられる速さに適応していた。一回本番を通した後で観劇した五月女遥さんは、小柄な体格から与えられる名状しがたい印象が感じられた。14日公演の米沢唯ちゃんは、五月女さんが与えた印象の他に、さらなる舞踊自体の完成度の高さ、不安感や中性的な雰囲気の表現、王子役から羽を取り上げるために誘惑する箇所での、ワルイ子ちゃんの要素と恋してるかもの要素のどちらとも取れそうな、あるいは両方ありそうな不思議な表情があり、終盤部は特に心を打ち震わせるものであった。

他、王子役井沢駿さんと反乱軍リーダー役の福岡雄大さんとの対峙、火の鳥役の演技、黒衣、反乱軍に至るまで、士気の高さを感じさせるものである。ダンサーの実演面では、絶賛に値するものである。

しかしながら、後半にある性暴力シーン(内容は明らかに集団強姦→(プログラム記載によると)妊娠)は断じて容認できないものである。そのシーンの後の展開を考慮しても、雰囲気を単に暗澹とさせるだけで、幅広い解釈を観客に委ねながら、実は観客の想像力を限定して阻害した。ストーリー構成面を考慮しても性暴力シーンを入れた必然性は極めて乏しい。

性暴力シーンは、絶対的禁忌とまでは行かずとも、少なくとも極めて慎重な取り扱いを要する。今回、原作から敢えて改変した読み替え(歌劇「ムツェンスク郡のマクベス夫人」を上演するのとは訳が違う)の過程で、ストーリー構成の検討はなされたのか、他に手段はなかったのか、厳格な検討が実施されたとは思えない。振付者の意図を実現するダンサーには、振付家の奴隷ではなく、当然人格と言うものがあり、比較的固定されたメンバーで構成される座付きバレエ団での性暴力シーンは、ダンサーの人心の荒廃につながるだろう。1月14日の千秋楽公演が限界なのではないか。

実演が素晴らしかったから再演するべきとの考えには、強く反対する。これ以上の上演は、観客の人心の荒廃をも齎す。

前述した事情を踏まえ、振付者やダンサーの見解とは全く別の、現代社会を反映した外部の目により厳格に判断されなければならない。この内容では、封印するしかないというのが私の考えである。

この「火の鳥」は封印するべきだが、この振り付けの失敗に関わらず、当然バレエ団として新作は発表していくべきである。
客席から飛ばさない照明、反乱軍が女装して王子を誘惑しようとする「ワルイ子ちゃんになっちゃうよ」の場面等、素晴らしい箇所もあったのだから、中村恩恵さんの次作に期待をすればいいだけのことだ。中村恩恵さんの作品を再演するのであれば、「ベートーヴェン ソナタ」を本島美和さんの引退前に行うべきであろう。

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「ペトルーシュカ」は、特に核となる、人形ペトルーシュカ役奥村康祐さん、人形バレリーナ役池田理沙子さん、共に完璧であり名演であった。奥村康祐さんはいかにも弱弱しい脱力感や悲哀を見事に表現し、最後の亡霊の場面も圧巻であった。池田理沙子さんはハマり役で、人形に求められているカワイさは生得のものであり、人形役に求められる特殊技能を完璧に会得し、コミカルな仕草で魅了させた。

その他、謝肉祭の場面での群衆たちの描写を、バレエ団の総力を挙げて実現した。福田圭吾さんの女装趣味(「火の鳥」での「これから「ワルイ子ちゃん」になっちゃうよ」のシーンと、「ペトルーシュカ」での「仮装の乳母」のシーン)は本当に楽しませてもらえた。悪魔の仮装役速水渉悟さんの跳躍を始め、福田圭吾さん登場後の男性ダンサーが集結し跳躍する場面は圧巻であり、謝肉祭終盤の場面を盛り上げた。

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実質トリプルビルの「ニューイヤー バレエ」は素晴らしい実演で終わった。35分規模の作品を三つ上演する形態であったが、今後も埋もれている一幕物の作品を掘り起こしていってほしい。ヒナステラ作曲の「エスタンシア」辺り、見てみたいと思っている。

新国立劇場バレエ団プリンシパル 米沢唯さん 2019年出演記録

新国立劇場バレエ団プリンシパル 米沢唯さん 2019年出演記録
(2019年12月31日現在)

【注意事項】
・新国立劇場バレエ団プリンシパル 米沢唯さん の2019年出演記録(実績)
・特に記載がない公演は、新国立劇場バレエ団の公演、場所は新国立劇場、主催者は新国立劇場運営財団。
・情報の利用は、各自ご確認の上、自己責任で行われたい。

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2019年1月12日(土) 「ニューイヤー バレエ」(「火の鳥」娘 Maiden)
2019年1月14日(月・祝) 「ニューイヤー バレエ」(「火の鳥」娘 Maiden)

2019年1月25日(金) 「バレエダンサー吉田 都からのメッセージ』中 「We Love Piano」・「ドン キホーテ」抜粋より(キテリア役)
文京シビックホール(東京)
主催:石神井バレエ・アカデミー
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2019年3月2日(土) 「ラ バヤデール」ガムザッティ
2019年3月3日(日) 「ラ バヤデール」 ニキヤ
2019年3月9日(土)夜公演 「ラ バヤデール」ガムザッティ
2019年3月10日(日) 「ラ バヤデール」 ニキヤ

2019年3月29日(金) 「Dance to the Future 2019」中「beyond the limits of...」
2019年3月30日(土)昼公演 「Dance to the Future 2019」中「beyond the limits of...」・「Improvisation 即興」
2019年3月30日(土)夜公演 「Dance to the Future 2019」中「beyond the limits of...」
2019年3月31日(日) 「Dance to the Future 2019」中「beyond the limits of...」・「Improvisation 即興」
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2019年4月27日(土) 「シンデレラ」シンデレラ
2019年5月3日(金) 「シンデレラ」シンデレラ
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2019年6月16日(日) 「アラジン」プリンセス
2019年6月23日(日) 「アラジン」プリンセス
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2019年7月27日(土)午前公演 子ども「白鳥の湖」オデット/オディール
2019年7月28日(日)午後公演 子ども「白鳥の湖」オデット/オディール
2019年7月30日(火)午前公演 子ども「白鳥の湖」オデット/オディール
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2019年8月3日(土) バレエ アステラス2019 「ドン キホーテ」第三幕より キテリア
2019年8月4日(日) バレエ アステラス2019 「ドン キホーテ」第三幕より キテリア
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2019年8月7日(水) 「『NHKバレエの饗宴』特別企画 吉田都引退公演 Last Dance」 誕生日の贈り物 -Birthday Offering-・「ドン・キホーテ」グラン パ ド ドゥ
2019年8月8日(木) 「『NHKバレエの饗宴』特別企画 吉田都引退公演 Last Dance」誕生日の贈り物 -Birthday Offering-・「ドン・キホーテ」グラン パ ド ドゥ
新国立劇場大劇場
主催:日本放送協会
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2019年8月16日(金) 大和シティバレエ夏季公演 ‘Four to Four’・’accordance’
大和市文化創造拠点シリウス(神奈川県大和市)
主催:佐々木三夏バレエアカデミー
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2019年9月6日(金) Iwaki Ballet Company 「Ballet Gala 2019」「パキータ」より
新宿区立新宿文化センター(東京)
主催:Iwaki Ballet Company
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2019年10月20日(日)昼公演 「ロメオとジュリエッタ」ジュリエッタ
2019年10月27日(日) 「ロメオとジュリエッタ」ジュリエッタ
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2019年11月10日(日)「くるみ割り人形」クララ
札幌文化芸術劇場 hitaru (札幌市)
主催:札幌市芸術文化財団
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2019年11月30日(土) 「ベートーヴェン ソナタ」ジュリエッタ
2019年12月1日(日) 「ベートーヴェン ソナタ」ジュリエッタ
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2019年12月14日(土)昼公演 「くるみ割り人形」クララ【確定】
2019年12月15日(日)夜公演 「くるみ割り人形」クララ【確定】
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2017年3月19日日曜日

新国立劇場バレエ団「ベートーヴェン-ソナタ」雑感

二度とも後方中央ブロックで観劇できたのは、本当に幸せな気持ちだった。二度観て良かったなと思える事は、一度見てるだけに、二回目で見えるものが見えてくる事である。一度目は、純舞踊的な要素で観て、二度目は物語を踏まえながら観劇出来た。

振り付けの中村恩恵さんは、三人の女性プリンシパルの特徴を捉え十二分に活かした振り付けを行なったように思える。

ジュリエッタ役の米沢唯ちゃんはテクニックを活かした踊りを披露しつつ「無邪気に、いつの間にかお乗り換え」♪

ベートーヴェンからガレンベルク伯爵役の木下嘉人さんの肩の上に乗って、拍手を受けてご結婚である♬

この過程があまりに無邪気で、何の罪の意識を感じていない無邪気さがいかに残虐なものであることを示した🎶🎶

ここは、わる〜い女の要素が全くない、どこまでもいい子ちゃんの米沢唯ちゃんだからこそ、その無邪気さが活きる。わる〜い女の本島美和りんだと、真実味がなくなるのだ!(←本島美和さんにこっぴどく怒られるぞ!!)

小野絢子さんは、ベートーヴェンと愛し合っているのに引き裂かれるアントニア役で、似合っているし、本島美和さんは「わる〜い女」役がハマりまくっている妖艶さで魅了される。

本当に三人のプリンシパルの特質を活かした中村恩恵さんの振り付けは凄い。

私のツボにハマったのは、op.59-3で家族が出てくる場面で、クスクス笑いまくっていた。全般的に観客の皆さん、真面目に観ていらっしゃったようだけど♪

終盤部での、op.132の曲想を活かした構成は素晴らしいと思えた。

来シーズンは新国立劇場バレエ団はこのような演目はない。残念でならない。

「ベートーヴェン-ソナタ」の再演を強く望むものである。

2016年11月20日日曜日

新国立劇場バレエ団「DANCE to the Future 2016 Autumn」雑感

昨日・今日(2016年11月19/20日)と、新国立劇場バレエ団「DANCE to the Future 2016 Autumn」を観劇しました。三公演あるうちの、第二公演と第三公演(千秋楽)です。

音楽面で、特にヘンデルとショスタコーヴィチに目が向けられた事が素晴らしいと思います。ヘンデルのオラトリオに目を向け、前衛的なショスタコーヴィチを的確に扱う点に注目させられました。

ショスタコーヴィチのop.67(ピアノ三重奏曲第2番 第四楽章)から「3匹の子ぶた」を思いついた宝満直也は凄いと思います。私だったら、同じ旋律を用いながらもキレッキレのop.110(弦楽四重奏曲第8番 第二楽章)で攻めに掛かると思いつきますが。op.110 しか知らない私にとっては、どうしてあんなユルユルの演奏になるんかと思ったけど、op.67だからあの演奏があって、「3匹の子ぶた」が成立するのですね。

それに、純音楽的にショスタコーヴィチのop.110は完璧な名曲で、第二楽章なんて特別な感情無くして聴けませんし(水戸室内管弦楽団で室内管弦楽団版で初めて聴いた時の衝撃は忘れられない)。でも同じ旋律が「3匹の子ぶた」などとコメディに適用できると言うのが、興味深いところです。

「3匹の子ぶた」については、プログラム上の「怠け者の長男」「誰よりもしっかり者」との記載は、ツボにハマって爆笑してしまいました!それぞれ、八幡顕光さんと小野絢子さんですね♪如何にもそんな感じですから。

三日目千秋楽は、第三部の「即興」が面白かったです。米沢唯ちゃんは、航空会社客室乗務員風の衣装から上着を脱いでダンスパーティー風に変わる衣装です。今日の唯ちゃんはやりたい放題♪官能的に挑発したり、オーボエ奏者をおちょくってるし♪公演毎に登場する楽器・奏者が違う事もあり、千秋楽ではアコーディオンが出てくる事もあるのか、アルヘンティーナ風にタンゴを取り入れていました。

第三部の「即興」は、多分最初と最後の場面や、「今日はアコーディオンが出てくるからタンゴを踊る」と言う程度は決めていて、後は本当に即興だったのですね。振りが昨日の公演とは全面的に(冒頭から!)異なっていました。昨日よりスリリングな展開で楽しめました。