2015年8月11日火曜日

国立劇場おきなわ 県外公演 「琉球フェスタ in 川越」 感想

2015年8月8日 土曜日
ウェスタ川越 (埼玉県川越市)

演目:
・組踊公演「二童敵討」
・三線音楽「うた・さんしん」
・うちなーミュージカル公演 「かりゆし・かりゆし~恋するシーサー~」

出演:
・組踊公演「二童敵討」
[配役]
あまをへ:宇座仁一 
亀千代:玉城匠
鶴松:西門悠
供一:川満香多
供二:伊野波盛人
供三:阿嘉修
母:真境名律弘
きょうちゃこ持ち:大浜暢明

[地謡] 
(歌三線)玉城正治・上原睦三・玉城和樹
(箏)新垣和代子(笛)入嵩西諭(胡弓)森田夏子(太鼓)高宮城実人


・三線音楽「うた・さんしん」
[宮廷音楽の世界]
古典音楽斉唱「かぎやで風節・揚作田節」  (踊り手) 宇座仁一
若衆踊「四季口説」            (踊り手) 喜納彩華  玉城知世
二才踊「前の浜」             (踊り手) 伊野波盛人
女踊「天川」               (踊り手) 真境名律弘
古典音楽独唱 「二揚仲風節」       (歌三線) 玉城正治  
   
[島々のうた]
宮古島のうた          (歌三線) 川満香多 
八重山諸島のうた        (歌三線) 入髙西諭
沖縄本島のうた         (歌三線) 仲村逸夫 島袋奈美
                (踊り手) 西門悠雅 玉城知世 喜納彩華 
雑踊「加那よー天川」      (踊り手) 阿嘉修  小嶺和佳子
   
(地謡)
(歌三線)上原睦三・仲村逸夫・玉城和樹
(箏)新垣和代子 (笛)入髙西諭 (胡弓)森田夏子 (太鼓)川満香多


・うちなーミュージカル公演 「かりゆし・かりゆし~恋するシーサー~」
シーサー(夫)・人間(女):小嶺和佳子
シーサー(妻)・人間(男):玉城匠

(地謡)髙宮城実人・玉城和樹・入髙西諭・森田夏子・島袋奈美・新垣和代子
(後見)川満香多・大浜暢明・喜納彩華・玉城知世
(脚本・演出)嘉数道彦 
(振り付け)阿嘉修 
(音楽)仲村逸夫


国立劇場おきなわ は、2015年8月7日から8月9日に掛けて、「琉球フェスタ」を、竣工間もないウェスタ川越にて「開館記念公演」の一環として上演した。国立劇場おきなわ の沖縄県外公演の機会は少ないので、貴重な機会である。7日は前夜祭、8・9日が本公演である。本公演は13時から21時頃まで掛けて、古典からコンテンポラリーまで幅広いジャンルの琉球舞踊を展開した。この感想は、8月8日公演のものである。なお、この公演は沖縄県文化観光戦略推進事業の助成を受けている。

着席位置はど真ん中やや前方。客の入りは3割弱であろうか、二階席・三階席は閉鎖、観客の鑑賞態度は、若干のノイズと公演中の入退場があった。29列まである一階席は、22列目に音響調整卓を置いていて、その前方に観客がいる形であるが、当然左右両端には空席が目立った。

 「かりゆし・かりゆし~恋するシーサー~」では観客の数が200名規模で、苦笑してしまうほどのガラ空き状態である。

この客席の状況は妥当で、誰かの努力不足だとか、そんな問題ではなく、そもそもウェスタ川越の1700名規模のホールが大き過ぎる。国立劇場おきなわ の張り出し舞台時の席数は600名弱、東京から離れた川越での公演、琉球舞踊に対する関心を持っている人たちの少なさを考えれば、これだけ集まればいい数字である。

組踊「二童敵討」は、張り出し舞台の形であるが、舞台の上に張り出し舞台を載せた形で、本拠地と同様に客席に張り出す形にならなかったのは残念であるが、アウェイ公演でもあり止むを得ないか。

演目の性格上、踊りの見所が少なめであり、初めて組踊を観る観客を対象とするには、刺激が足りないかもしれない。本年1月に上演した「辺戸の大主」にしておいた方が、ストーリー性はないけれど、純舞踊的要素としては圧倒的に面白いような気はする。

三線音楽「うた・さんしん」と合わせ、宮廷舞踊であれ雑踊であれ、様式美を満たしているように思えた。歌と楽器とのバランスが概して取れていたため、声量の小ささは感じられなかった。[島々のうた]でのみ、生音でなく電気的に増幅を掛けていたかもしれない。

このような事を書いたら怒られるかもしれないが、実のところ、現代琉球舞踊劇「かりゆし-かりゆし-恋するシーサー」が一番好みであった。2014年3月3日に初演になったばかりの、伝統のない現代演目であり、意外な結果であったのだけれど。

沖縄県文化観光戦略推進事業の補助金を受け、2014年3月と2015年3月に国立劇場おきなわ小劇場でそれぞれ四公演上演され、第9公演目にしてようやく本土での公演となった。

国立劇場おきなわ の芸術監督である嘉数道彦による脚本・演出である。

伝統と現代を組み合わせたり、琉球語と共通語を対比させたりするのが巧妙だ。歌も踊りも完成度が高い。伝統的な琉球の楽器を用いたのは効果的である。楽器と舞踊についてはブレずに伝統路線を堅持したのは正解である。ストーリーの構成も無理がない展開である。人間ではそのままであるが、シーサーでは夫を女性が演じ、妻を男性が演じたのも面白い。

伝統を知り尽くした嘉数道彦ならではの、初心者向けとは侮れない、実に素晴らしい作品であった。