2015年8月30日 日曜日
Sunday 30th August 2015
松本市音楽文化ホール (長野県松本市)
The Harmony Hall (Matsumoto Municipal Concert Hall) (Matsumoto, Japan)
曲目:
Johann Sebastian Bach: Sonata per flauto e basso continuo BWV1035 (arranged for flute, cello and Harp by Jacques Zoon )(フルート-ソナタ)
flauto: Jacques Zoon / ジャック=ズーン
violoncello: Iseut Chuat / イズー=シュア
arpa: 吉野直子 / Yoshino Naoko
Fryderyk Chopin: Trio con pianoforte op.8 (arranged for flute, cello and Piano by Jacques Zoon )(ピアノ三重奏曲)
flauto: Jacques Zoon / ジャック=ズーン
violoncello: Iseut Chuat / イズー=シュア
pianoforte: 江口玲 Eguchi Akira
(休憩)
Aaron Copland: Fanfare for the Common Man (市民のためのファンファーレ)
Richard Strauss: Feierlicher Einzug der Ritter des Johanniter-Ordens (ヨハネ騎士修道会の荘重な入場)
Giuseppe Verdi: “la Traviata” preludio atto primo (「椿姫」から第一幕前奏曲)
Irish Forl Song: Londonderry Air (ロンドンデリーの歌)
John Williams --Special selection--
1. Main Title from “Superman”
2. The Imperial March from “Ster Wars : The Empire Strikes Back”
3. The Raiders March from “Raiders of the Lost Ark”
4. Main Title from “JFK”
5. The Throne Room and Finale from “the Star Wars” suite
ジョン=ウィリアムズ スペシャル-セレクション
1. スーパーマンのテーマ(映画「スーパーマン」から)
2. ダース=ベイダーのテーマ(インペリアル-マーチ)(映画「スター-ウォーズ 帝国の逆襲」より)
3. レイダース-マーチ(映画「レイダース 失われた聖櫃」より)
4. JFK プロローグ(メイン-タイトル)(映画「JFK」より)
5. 王座の間とエンド-タイトル(スター-ウォーズ組曲より)
tromba: Gábor Tarkövi, Karl Sodl, 高橋敦 / Takahashi Osamu, 服部孝也 / Hattori Takaya
corno: Radek Baborák, 阿部麿 / Abe Maro
trombone: Walter Voglmayr, 呉信一 / Go Shin-ichi, Randall Hawes
tuba: 杉山康人 / Sugiyama Yasuhito
timpani e percussioni: Don Liuzzi, 竹島悟史 / Takeshima Satoshi
サイトウ-キネン-フェスティバルは、今年も2015年8月9日から9月15日までに掛けて、松本市を中心に長野県内で歌劇・大管弦楽演奏会・室内楽演奏会・ジャズ演奏会・教育プログラムを繰り広げる。室内楽演奏会は「ふれあいコンサート」の名に於いて、2プログラム2公演、いずれも松本市音楽文化ホールにて演奏される。
なお、「セイジ-オザワ松本フェスティバル」の名称は、そもそもその名称への変更自体に正当性がなく、松本市民の私としては承認できないため、今後も一切用いず、従前通り「サイトウ-キネン-フェスティバル」の名称を用いる。
着席位置は最後方上手側、チケットは完売している。観客の鑑賞態度は、かなり良好であった。
今回の「ふれあいコンサートII」は、前半はクラシックの室内楽、後半は金管アンサンブルによるガラ-コンサートの形態を取る。後半に関しては映画音楽を演奏するなど、ポピュラー路線に振っているプログラムであるとも言える。どのような演奏会になるのだろう?
前半の二曲は、普通にいい演奏である。ジャック=ズーンとイズー=シュアの二人は、ピンク色の衣装を着ている。ショパンの第三楽章・第四楽章は良かったかな。
圧巻は後半の金管サンサンブルである。まさに世界最強の金管アンサンブルが、この松本市音楽文化ホールに現れた!
第一曲目のコープランドの作品から完璧な演奏である。完璧な響きでありテンポであり構成であり、パッションと様式の両方を満たす演奏だ。
完璧とはなんであろう?
第一点として、松本市音楽文化ホールは残響が長めで、かつ696席の中規模ホールであり、飽和点を適切に見極める必要がある。最強奏をどのくらいの音量とするべきかについて、飽和点ギリギリの点を的確に把握している。その点から逆算して、中音量・小音量の音量をシームレスに定義し、的確に音量をコントロールしている。
第二点として、響きが美しい。本拠としている出身楽団が違うと言うのに、12名金管・打楽器奏者の心が一致している。合奏精度は高く、ズレは全く感じられない。また、一人ひとりがどのように演奏すれば、ブレンドされてどのように聴衆に伝わるか、誰もが的確に認識している。ソロの響きも美しいが、トゥッティで演奏している時の響きも絶妙にブレンドされ、夢見るような響きとなるのだ。
第三点として、特定のスーパースターに依存する演奏ではない。Gábor Tarköviは案外控えめで、他のトランペット奏者に演奏させている時間が長かったが、誰もが的確な響きを産み出している。重ねて書くが、全員が心を一つにしている演奏であるのだ。
完璧な音楽とは、ホールの響きを知り、曲を深く理解し、個々の奏者がどのように演奏すればどのような響きになるか綿密に計算し、その通りに演奏する事である。その全てが決まっていたからこその、世界最強の金管アンサンブルである!!
曲目がクラシカルなリヒャルト=シュトラウスであろうと、ジョン=ウィリアムズの映画音楽であろうと、古典的様式美を完璧に満たしている。この古典的様式美が全ての基礎であり、その上にパッションを乗せる技術が、傑出した音楽を産み出すのだ
松本市音楽文化ホールでの公演では、2014年10月2日(Arcanto Quartett)以来の、即スタオベを、私は敢行した。
アンコール一曲目は「威風堂々」、二曲目は予定されていなかったが、観客半立ち(後方の観客がスタンディング-オベーションを行っていた)の熱狂に応え、「レイダース-マーチ」をもう一回演奏し、観客総立ちとなった!
演奏会終了後の観客の顔は、みんなどこか高揚した顔をしている。いい演奏会の後はいい顔をしているものであるが、違った顔をしている。どこかみんな冷静さを失い興奮し切っている。どれだけ凄い演奏を展開したかが分かるような顔だ。
1920年生まれのRobert Mann(ロバート=マン、ジュリアード弦楽四重奏団の奏者だった)が演奏していた時の、サイトウ-キネン-フェスティバル室内楽演奏会の黄金時代を取り戻した。サイトウ-キネンの室内楽演奏会で、観客総立ちのスタンディングオベーションが起こったのは、何年ぶりの事だったろうか?
2015年8月30日、日曜日、ふれあいコンサートII 、世界最高の金管アンサンブルは、 サイトウ-キネン-フェスティバルの歴史に残る名演を披露した。サイトウ-キネンに於ける歴史的名演である事に、疑いを持つ者は誰もいない!!松本市音楽文化ホールの響きを熟知し、完璧な計算による響きを見事に実現した!この歴史的名演は、私たち松本市民の誇りである、松本市音楽文化ホールの響きと、世界最高の演奏者たちによって成し遂げられた。 全ての演奏者たちに感謝と万歳を贈る。そして、音文万歳!松本市音楽文化ホール万歳!!