2013年11月16日土曜日

第92回 紀尾井シンフォニエッタ東京 定期演奏会 演奏会評

2013年11月16日 土曜日
紀尾井ホール (東京)

曲目:
フェリックス=メンデルスゾーン=バルトルディ 弦楽のためのシンフォニア第7番
ロベルト=シューマン ピアノ協奏曲 op.54
(休憩)
フランツ=シューベルト 交響曲第5番 D485

ピアノ:ペーター=レーゼル
管弦楽:紀尾井シンフォニエッタ東京
 ゲスト-コンサートマスター:アントン=バラホフスキー
指揮:イェルク-ペーター=ヴァイグレ

紀尾井シンフォニエッタ東京は、ペーター=レーゼルをソリストに、イェルク-ペーター=ヴァイグレを指揮者に迎えて、2013年11月15日・16日に東京-紀尾井ホールで、第92回定期演奏会を開催した。この評は、第二日目の公演に対してのものである。

1945年にドレスデンで生まれたペーターレーゼルは、この11月に来日し、全て紀尾井ホールにて計4公演に臨む。その内容は、11月7日に室内楽、11月9日にソロ-リサイタル、11月15・16日に紀尾井シンフォニエッタ第92回定期演奏会のソリストとしての公演である。

指揮のイェルク-ペーター=ヴァイグレは旧東ドイツ出身の指揮者でクルト=マズアに師事した。歌劇場・合唱の指揮の経験も豊富であるようだ。ゲスト-コンサートマスターのアントン=バラホフスキーはロシア連邦ノボシビルスク生まれで、現在バイエルン放送交響楽団の第一コンサートマスターである。

管弦楽配置は、舞台下手側から、第一ヴァイオリン→第二ヴァイオリン→ヴァイオリン-チェロ→ヴィオラのモダン配置で、コントラバスはチェロの後方につく。木管パートは後方中央、ホルンは後方下手側、その他の金管・打楽器群は後方上手側の位置につく。

着席位置は正面後方中央、チケットは完売している。観客の鑑賞態度は良好であった。

第一曲目はメンデルスゾーンの「弦楽のためのシンフォニア第7番」である。冒頭弦の響きの細さが気にはなるが、しり上がりに良くなっていき、第四楽章では熱を帯びる演奏となる。第四楽章では、12-13歳の作品とは思えないメンデルスゾーンの天才ぶりを再現させる。

第二曲目、シューマンのピアノ協奏曲は、ソリストと管弦楽とは協調的な方向性であり、ソリストを立てる方向性の音の響きである。ペーター=レーゼルのピアノは、ユジャ=ワンやマルタ=アルゲリッチとは対極にあるのだろう。ダイナミックレンジを敢えて拡げず、奏者による装飾を敢えてつけず、楽譜を深く読み込み解釈したらこうなるのだろうという説得力がある。テンポの変動は、11月9日のピアノ-ソロ-リサイタルの時よりはつけている形だ。

欲を言えば、クラリネットにもう少し朗々とした響きがあれば、第一楽章のピアノとクラリネットとの二重奏が活きたかも知れない。特に、個人的に印象的なのは第二楽章である。

ソリスト-アンコールは、シューマンの「子どもの情景」より「トロイメライ」であった。

休憩後の第三曲目は、シューベルトの第五交響曲である。冒頭の弦の響きはやはり細い。指揮者の指示によるものであろうか。あまり強い自己主張がない演奏で、室内管弦楽団ならではの精緻さ、あるいは技巧的な完璧さを活かしたかと言えば若干の疑問が残る、まあまあ普通の演奏ではある。どの音符も失敗すれば目立つプレッシャーを与えられる木管は良い出来で、フルート、オーボエとも良いアクセントを与えている。ホルンの響きも、よく管弦楽に溶け込ませていた。