浜離宮朝日ホール (東京)
曲目:
ルートヴィッヒ=ファン=ベートーフェン ピアノ-ソナタ第20番 op.49-2
ルートヴィッヒ=ファン=ベートーフェン ピアノ-ソナタ第21番「ワルトシュタイン」 op.53
(休憩)
ヨハネス=ブラームス ピアノ五重奏曲 op.34
ピアノ:田部京子
カルミナ弦楽四重奏団
ヴァイオリン:マティーアス=エンデルレ・スザンヌ=フランク
ヴィオラ:ウェンディ=チャンプニー
ヴァイオリン-チェロ:シュテファン=ゲルナー
着席場所は、一階中央下手側である。8割程の客の入りか。
前半は田部京子のピアノ-ソロでベートーフェンを二曲である。今日はチケット入手の都合上、下手側の席になってしまったが、最近行きつけの、彩の国さいたま芸術劇場との音響の差に驚愕させられる。要するに響かない。田部京子が敢えて弱めのタッチで弾いている事もあるかも知れない。
第20番はおよそベートーフェンとは言い難く、まるでモーツァルトのように弾いている。第21番は多彩な姿を見せる。弱いタッチでありながら旋律を際立たせたり、ここぞという所で強く出て行ったり、最後はちゃんと盛り上がて終わる演奏である。ニュアンスで攻めるタイプで、パワーで攻めることも出来るのだろうけど、その方向に走らずに上品に弾いていくタイプだ。
後半は、カルミナ弦楽四重奏団+田部京子のピアノによる、ブラームスのピアノ五重奏曲である。ヴァイオリンの二人がパッションを込めて先頭を走り、田部京子のピアノも、主役に躍り出るところと脇役に回るところのメリハリがはっきりしていて、良い演奏をしている事は分かるのだが、なんとなく気分が乗らない演奏だ。
気迫を込めた演奏をしているのだが、何となく精緻さに欠けていて、うまく噛み合っていない演奏である。理由はよく分からないが、プログラムにCDの宣伝があり、そこに「精緻な職人的アプローチ」とある文言に、私が引きずられたところがあるのかもしれない。あるいは、そもそもカルミナ弦楽四重奏団と浜離宮朝日ホールとの相性が良くないと言うところもあるのだろう。
浜離宮朝日ホールは、世間の評判ほど音の響きと言う点では良くないホールで、松本市音楽文化ホールや彩の国さいたま芸術劇場(与野市)、サラマンカホール(岐阜市)で感じられるような、華があり厚みがある響きにならないところがあって、その辺りの事情でパッションが空回りしてしまうのではないかと思うところがある。私の思い過ごしであるのかもしれないが、浜離宮朝日ホールは今後ちょっと敬遠したい。
アンコールは、後半で演奏されたブラームスのピアノ五重奏曲から、第三楽章であった。本番の演奏よりも、しっかりと噛み合った良い演奏であった。