2013年6月16日日曜日

マーラー室内管弦楽団 名古屋公演 演奏会評

2013年6月16日 土曜日
愛知県芸術劇場 コンサートホール (愛知県名古屋市)

曲目:
ロベルト=シューマン 交響曲第3番「ライン」 op.97
(休憩)
アントニーン=ドヴォルジャーク 交響曲第9番「新世界から」 op.95

管弦楽:マーラー室内管弦楽団(MCO)
指揮:ダニエル=ハーディング

マーラー室内管弦楽団は、ダニエル=ハーディングを指揮者に迎えて、2013年6月15日・16日に、軽井沢・名古屋で来日公演を行った。この評は、第二日目名古屋公演に対してのものである。

着席位置は三階(実質的には二階)正面前方やや上手側、客の入りは7割くらいであろうか、二階・三階のバルコニーは空席が非常に目立つ。

第一曲目の「ライン」は、冒頭部で愛知県芸術劇場の響きに戸惑ったのか、乱れが生じていたが徐々に軌道修正されていく。軽井沢公演でも感じた事ではあるが、ホルンの響きがとても明瞭で綺麗な響きである。ハーディングの左手の動きに、管弦楽は敏感に反応している。

後半の「新世界から」は、曲の展開こそ軽井沢公演とほぼ同じであるが、改めて曲の最初から最後まで仕掛けられたハーディングの音作りに感嘆させられる。第一楽章におけるフルートの取り扱いについては、他のオーボエ・クラリネットとのバランスを考慮すると、もっと強く自己主張しても良かったような気がするが、敢えて弱めたのか。第二楽章のイングリッシュ-ホルンは、軽井沢公演と同様に素晴らしい出来だ。

軽井沢公演と違うところは、やはりホールの響きであろうか。軽井沢大賀ホールでは、中規模ホールならではの緊密かつ親密な空間が特色であるし、愛知県芸術劇場では残響の豊かさを味わえるところが良い。

最終局面では、敢えてギアを落としてゆっくりと余韻を聴かせながら終わらせる。このような終わらせ方はなかなか無いものであるが、実に効果的だ。軽井沢公演・名古屋公演とも、指揮棒を降ろすまで拍手・掛け声もなく、観客をも巻き込んで一つになって終わる。一人の観客も見当違いな振る舞いをしなかったのが素晴らしい。

アンコールは、ドヴォルジャークのスラブ舞曲第一集より、第四番であった。

今回のマーラー室内管弦楽団の来日公演は、軽井沢と名古屋だけという、変則的な場所での公演であった。土日の公演であったが、名古屋で空席が目立ったのは少し残念である。ダニエル=ハーディングの知名度が浸透しているのは、東京だけなのだろうか。また、マーラー室内管弦楽団の知名度が日本で浸透していない事を、痛感させられた。

今回のマーラー室内管弦楽団の公演では、やはりダニエル=ハーディングが本領を発揮し、その実力を日本に知らしめる事が出来た事が大きい。在日オーケストラではリハーサル時間が足りないのか、音作りにムラがあり、本気を出しているところと流している(手を抜いている)ところとの差を感じられるところがあったが、今回はそのような場面が無かった。手兵であり、来日直前までオーストラリアで本番を重ねていたところもあり、テンションが高い状態で演奏できる所もあっただろう。どうしてダニエル=ハーディングが欧州で高い評価を得ているのかを、実感する事ができた。松本の地の利を活かした、軽井沢→名古屋への追っかけは、実に有意義であった。