2013年5月12日日曜日

東京都交響楽団 福井公演 演奏会評

2013年5月12日 日曜日
福井県立音楽堂(ハーモニーホールふくい) (福井県福井市)

曲目:
カール=マリア=フォン-ヴェーバー 歌劇「オベロン」序曲
ピョートル=イリイッチ=チャイコフスキー ロココ風の主題による変奏曲 op.33
(休憩)
ピョートル=イリイッチ=チャイコフスキー 交響曲第5番 op.64

ヴァイオリン-チェロ:宮田大
管弦楽:東京都交響楽団(TMSO)
指揮:エリアフ=インバル

このプログラムは、5月13日にフェスティバルホール(大阪市)の公演と同一であるが、音響面では圧倒的に福井県立音楽堂が優れており、当然のことながら本公演を選択する。

着席位置は、前方中央である。

チャイコフスキー「ロココの主題による変奏曲」、奇を衒わない演奏であるが、宮田大のチェロは緩徐楽章的変奏部が特に素晴らしい。管弦楽とのバランスも保たれた、よく考えられた演奏だ。もっとも、宮田大が2012年1月の水戸室内管弦楽団演奏会で見せたような凄みは、残念ながらあまり感じられなかった。水戸芸術館のような中規模ホールでの演奏と、福井県立音楽堂のような大きなホールとではやはり違ってきてしまうのだろうか。やはりチェロ協奏曲は、中規模ホールで室内管弦楽団規模の演奏との共演でなければ、十分に楽しむことはできないのか。

休憩後のチャイコフスキー交響曲第5番については、チャイコフスキーの第五交響曲、弦楽が先頭を切っていた演奏だ。と書いたのはちょっと皮肉がこめられており、金管パートが精彩を欠いたのは事実である。確かに弦楽器は非常に良い出来である。特にヴァイオリンは怒涛のようにうねりを伴う強烈さがあり、お膳立てを十二分に整えている。後は、金管が弦楽と真っ向勝負し、弦楽の響きに負けない、強く華やかな音で観客を圧倒するところであるが、その部分が達成されているとは言い難い。金管が乗っていないのだ。特にトランペットの調子が良くない。楽章間の取り扱いは、全楽章間休みなしのアタッカである。前の楽章の残響が消えたら、次の楽章が即続く形態である。福井県立音楽堂の残響は、このような場面で効果を発揮する。第三楽章まではインバルの個性はあまり表れなかったが、最終第四楽章で化けの皮が剥がれる。テンポの取り扱い方は個性的でありながら、観客に受け入れし易い点は見事である。

アンコールは、ソリスト=アンコールはサン-サーンスの「白鳥」、最後のアンコールは、ブラームスのハンガリー舞曲第1番であった。