2014年11月30日日曜日

エスパーニャ国立ダンスカンパニー 名古屋公演 評 Compañía Nacional de Danza de España, Nagoya perfomance, review

2014年11月30日 日曜日 / Sunday, 30th November 2014
愛知県芸術劇場(愛知県名古屋市)/ Aichi Prefectural Arts Theater (Nagoya, Japan)

演目:
'Sub': Itzik Galili (2009)
'Falling Angels': Jirí Kylián (1989) 「堕ちた天使」
(休憩)
'Herman Schmerman': William Forsythe (1992) 「ヘルマン=シュメルマン」
part of 'Les Enfants du Paradis': José Carlos Martínez (2008) 「天井桟敷の人々」より
(休憩)
'Minus 16': Ohad Naharin (1999) 「マイナス16」

ダンスカンパニー:エスパーニャ国立ダンスカンパニー (Compañía Nacional de Danza de España)

芸術監督:ホセ=カルロス=マルティネス (José Carlos Martínez)

エスパーニャ国立ダンスカンパニーは、2014年11月30日から12月6日まで日本ツアーを実施し、上記演目を、愛知県芸術劇場で1公演、神奈川芸術劇場(神奈川県横浜市)で2公演、計3公演上演する。

この評は、2014年11月30日、愛知県芸術劇場に於ける公演に対するものである。

着席位置は一階やや前方やや上手側。前方上手側から変調する電子音のノイズが常時あった(補聴器?)。観客の鑑賞態度については、「天井桟敷の人々」で私語があったものの、概ね良好、「Minus 16」に於ける公演参加態度は極めて良好であった。

私の好みは、キリアン振り付けの「堕ちた天使」と、フォーサイス振り付けの「ヘルマン=シュメルマン」である。物語系はちょっと苦手なので、「天井桟敷の人々」はコメントしない事とする。なお、「天井桟敷の人々」に出演する予定であったホセ=カルロス=マルティネス芸術監督は、肩の負傷のため出演せず、エステバン=ベルランガ(プリンシパル)が代役を務めた。

「堕ちた天使」に於けるキリアンは天才だ。8人の女性ダンサーは不思議に美しく見えるし、タイミングのズラし方が絶妙だし。照明技法もある意味単純だけど、効果は絶大だ。

女性ダンサーはコンテンポラリー系であるのか、クラシックダンサーと比べてがっしりしているのだけれど、がっしりしているだけに強く踊ると美しく見えるのか。細身の女性がタイプの私にとって(♪)、その辺りの作用は本当に不思議だ。ソロで回転技を見せてくれたのは誰だろう?回転技が入ると私のツボにハマるので、一番好みのタイプの演技となる。

一回目の休憩後は、フォーサイスの「ヘルマン=シュメルマン」が好きである。「堕ちた天使」とは対照的に、体が細いクラシック系の女性ダンサーに変わって、ウフフな気持ちになるし。いや、そんなウフフ要素は別としても、クラシックダンサーならではの精度が高く三人の女性ダンサーの統一感があり、背も高くて、手指の大きさを生かした、力強さを伴った美しさに、惹きつけられる。フォーサイスの振り付けの構成力も素晴らしい。11月9日に、Los Angeles Dance Projectによる、'Quintett'を見たばかりだけど、この「ヘルマン=シュメルマン」も見事な作品であるし、この作品に要求される、クラシックとコンテンポラリーの要素の統合を、CNDのダンサーは完璧に演じた。

最後の「マイナス16」は、開始前(休憩時)からパフォーマンスがあったり、観客参加型だったりする異色の作品である。最初の15人による群舞っぽいものは、男女取り混ぜているが、顔と体つきをよく見ないと、男女の区別がつかないほど統一感が取れている。その一方で時間差も完璧で、綺麗なウェーブを築き上げている。

この「マイナス16」は観客参加型の作品であり、ダンサーに「強制連行」される観客のノリにも左右される。名フィルの演奏会に通い詰める音楽系観客と比べると、名古屋の舞踊系観客は冷めてるように思えたけど(キリアンの作品の後でさえ、小さなbraveが一つ飛んだ程度♪)、舞台に「強制連行」された観客はノリノリ♪観客参加型で盛り上げる事を邪道系と言ってしまえばそれまでだけど、とっても楽しい。私も赤いトレーナー着て「強制連行」されて見たら良かった♪♪

休憩35分を含めて、2時間45分の上演時間ではあったが、私にとっては短過ぎる♪でも、あれだけパワー溢れる踊りを繰り広げたのですから、ダンサーはバテバテでしょう。

今シーズンは、私のホームバレエカンパニーである新国立劇場バレエ団がクラシック偏重ということもあり、外来公演はコンテンポラリー系に絞っているが、なかなか観ることが難しい演目を楽しむ事が出来た。公立の劇場ならではの、このような公演が増える事を期待したい。