2014年12月6日 土曜日/ Saturday 6th December 2014
松本市音楽文化ホール (長野県松本市)
The Harmony Hall (Matsumoto Municipal Auditorium) (Matsumoto, Japan)
曲目:
Wolfgang Amadeus Mozart: Divertimento n.1 K.136
Ludwig van Beethoven: Concerto per pianoforte e orchestra n.2 op.19
(休憩)
Arcangelo Corelli: Concerto grosso ‘fatto per la notte di Natale’ op.6-8(クリスマス協奏曲)
Wolfgang Amadeus Mozart: Sinfonia concertante per violino, viola e orchestra K.364
ヴァイオリン:Susanne Branny
ヴィオラ:Stephan Pätzold
ピアノ:横山幸雄 (Yokoyama Yukio)
管弦楽:ドレスデン国立歌劇場室内管弦楽団(Dresdner Kapellsolisten)
指揮:Helmut Branny
ドレスデン国立歌劇場室内管弦楽団は、2014年11月29日から12月7日まで日本ツアーを行い、東京(非公開を含め3公演)・大阪狭山(大阪府)・岡山・福山(広島県)・松本・大阪にて計8公演の演奏会を開催する。全ての公演の指揮者はヘルムート=ブラニーである。松本公演以外の共演者は全て森麻季(ソプラノ)であるが、松本公演のみ横山幸雄のピアノとなった理由は不明である。ピアニストだったら、小菅優さんとか児玉桃さんとか、日本人でもマトモなピアニスト沢山いるのに!
管弦楽配置は、舞台下手側から、第一ヴァイオリン→ヴァイオリン-チェロ→ヴィオラ→第二ヴァイオリンの左右対向配置で、コントラバスはチェロの後方につく。木管パートは後方中央、ホルンは後方下手側の位置につく。チェロ以外は全て着席せずに演奏する。着席場所は、後方上手側である。客の入りは6割程である。観客の鑑賞態度はビニールの音がした事はあったが、概ね良好であった。恐らく空調ノイズ(あるいは補聴器ノイズ?)が前半は許容範囲を超える音量であったが、後半は大幅に改善された(不満が全くない訳ではないが、受忍できる程度)。
一曲目のK.136は音取りを行うような印象である。今回の日本ツアーでは、唯一の中規模ホールかつ残響が豊かなホールであり、少し戸惑っている感じもなくもない。
二曲目はBeethovenのピアノ協奏曲第2番、ソリストの横山幸雄は鍵盤をガンガン叩きつける乱雑な演奏をするかと、ブーイングの可能性をも視野に入れて対応する程の戦闘態勢で聴き始めたが、予想よりはマトモである♪しかし淡白だ。淡白で本性が出てなかったのが良かったのか。カデンツァの音の多いところではムニャムニャ気味に聴こえるし、個性やパッションを出している訳でもない。個性やパッションが無いのが個性であるのだとするならば、まあ仕方がないことだ。残響が長いホールでもちゃんと弾く奏者は沢山いるので、残響の長さを言い訳にすることは出来ない。単なる技量の問題であるだろう。ソリスト-アンコールはベートーヴェンのピアノ-ソナタ第17番第二楽章であったが、強奏部では馬脚が出て、雑だと感じる。まあ、横山幸雄はお目当ての楽団に無理矢理セットされていただけで、管弦楽の奏者か指揮のブラニー氏に矯正されたのか、本性を出したら危険との本人の自覚があったためなのか、無難に演奏してあまり邪魔しなかっただけ良しとする。お義理の小さな拍手を送っておく。感激して大きな拍手をしている方もいるが、数多くの演奏を聴ける環境でもなく、致し方のないことだ。
休憩後の三曲目のコレルリは、チェンバロとのバランスを取りつつもよく響かせた演奏であるが、曲想もあり、ちょっと眠くなりがちにもなる。
最後の、モーツァルトの協奏交響曲K.364は絶品である。コンサート-ミストレスがヴァイオリンのソリストであるが、スザンヌ=ブラニーの演奏は見事だ。ホール中をたっぷり朗々と響かせ、技術的には完璧であるし、さりげないテンポ変動のニュアンスを違和感なくビシッと効かせる構成力もある。終始管弦楽をリードする力もある。いつでも一流のソリストとして独立出来るだけの実力が感じられる。ドイツ的美女の、凛とした強さと美しさを想像させるような演奏であり、今日の演奏会の一番の立役者だ。
ヴィオラのStephan Pätzoldは、第二楽章に於けるスザンヌ=ブラニーとの掛け合いが、ニュアンスに富んだ表現で素晴らしい。
その他、管弦楽も実力者ぞろいで、ホルンは安定した素晴らしい完成度を誇る。木管も随所でアクセントを決め、協奏交響曲を引き締めていく。松本市音楽文化ホールの残響感もキッチリ把握し、完璧な豊かな響きで観客を圧倒する。
アンコールは、日本では良くありがちな「ふるさと」であるが、木管が吠えまくりニュアンス出しまくりの名演である。これは歌うのはもったいない。木管の音色を楽しむ事とした。
さすがドイツ、ソリストを外部から呼ばなくても、地方歌劇場の管弦楽団がこれ程まで演奏会の場で高いレベルで勝負できるのだ。彼らを全員出国禁止にして、新国立劇場に一人年収1億円で強制契約させ、何なら一人2億円でもいいから日本に留まらせるべきだろう♪これだけの奏者が歌劇場専属で演奏しているドイツがただただ羨ましい。