2013年10月16日 水曜日
松本市音楽文化ホール (長野県松本市)
曲目:
ヨハネス=ブラームス:ピアノ五重奏曲 op.34
(休憩)
ヨハネス=ブラームス:ヴァイオリン-ソナタ 第3番 op.108
ヨハン=セバスティアン=バッハ 無伴奏ヴァイオリン-パルティータ 第2番 BWV.1004
ヴァイオリン:堀米ゆず子・山口裕之
ヴィオラ:小倉幸子
ヴァイオリン-チェロ:辻本玲
ピアノ:リュック=ドゥヴォス
着席場所は、中央上手側である。客の入りは半分強で、少なめだ。観客の鑑賞態度は概ね良好であった。
私が知る限り、同じプログラムでの演奏会は、10月18日に白寿ホール(東京)、10月20日に兵庫県立芸術文化センター大ホール(兵庫県西宮市)でも開催される。また、プログラムを半分変形させた形で、10月19日に山形シベール-アリーナ(山形県山形市)でも開催される。一連の公演の初回公演となる。白寿ホールはともかくとして、兵庫県立芸術文化センター大ホールでの公演は無謀かと思われるが・・・。
プログラムは、五人が二人になり、最後は一人になる構成である。当初発表されていたプログラムは、一人が二人になり、最後は五人になる構成だったから、当日来てみたら逆転していたという展開だ。
前半はブラームスのピアノ五重奏曲、この曲がいかに難しいかを認識させられた演奏である。この瞬間の音をどのように響かせ、その為には個々の奏者がどのような音を出すかという点で難しい。実際の演奏は、何となく響きが精緻ではないけど、堀米ゆず子の力技というか、パッションで持たせた印象が強い。個々人の技量ではなく、五重奏全体の問題として、常設の室内楽団でなければ難しいところもあるのか。
後半の曲目は、ブラームスのヴァイオリン-ソナタ第3番と、バッハ無伴奏ヴァイオリン-パルティータ第2番である。
ブラームスのヴァイオリン-ソナタは、第一楽章の堀米ゆず子がやけに大雑把である。冒頭の平板な響きや、弱奏部で二つの音の間で波打たせる表現に、特にそのように感じられる。一方で、強奏部はよく響かせており、パッションを乗せやすいように思える。
バッハの無伴奏ヴァイオリン-パルティータは、速めのテンポである。前曲の大雑把さが不安を抱かせたところであるが、予想外にいい出来だ。強めに弾いているところもあり、前曲のように苦手部分が露呈しないこともあるのか。第四楽章までは調子良かったが、やはり最後の「シャコンヌ」は、冒頭部のテンポの速さからしても、「主との対話」の領域とまでは行かない。堀米ゆず子は、どちらかと言うと如何にドラマティックに作り上げるかを意識しているのかとも思える。ヒラリー=ハーンの領域に達する事の難しさを、改めて思い知らされた。
アンコールは一曲で、おそらくバッハの無伴奏曲からの一曲である。曲名は明らかにされなかった。