2013年10月20日日曜日

アンジェラ=ヒューイット ピアノ-リサイタル 評

2013年10月20日 日曜日
三井住友海上 しらかわホール (愛知県名古屋市)

曲目:
ヨハン=セバスティアン=バッハ(ヴィルヘルム=ケンプ編曲):「いざ来たれ、異教徒の救い主よ」 BWV659
ヨハン=セバスティアン=バッハ(ヴィルヘルム=ケンプ編曲):フルート-ソナタBWV1031より「シチリアーノ」
ヨハン=セバスティアン=バッハ(ヴィルヘルム=ケンプ編曲):カンタータ 第29回「神よ、われら汝に感謝す」 BWV29より「シンフォニア」
ルートヴィッヒ=ファン=ベートーヴェン:ピアノ-ソナタ 第28番 op.101
(休憩)
J.Sバッハ:「フーガの技法 BWV1080」より「コントラプンクトゥス」第1曲から第10曲まで

ピアノ:アンジェラ=ヒューイット

ピアノはイタリアのファツィオリ社製で、持ち込みのピアノである。

着席場所は、若干後方かつやや上手側である。客の入りは6割程である。観客の鑑賞態度はかなり良好だった。

アンジェラの演奏姿勢はそれほど動かず、二つか三つの姿勢で演奏している形である。

前半部は、一言で言うと「華やか」で見た目通りの女性的な演奏だ。第二曲目の「シチリアーノ」で調子に乗った感じがある。ある特定のフレーズで観客の方を向いたりするのは、ここが聴きどころだよと教えてくれているのか、それとも静かに聴いている観客が実は寝ているのか起きているのかをチェックしているのか、ちょっと謎だ。

バッハもベートーヴェンも、アンジェラ風に華やかに軽やかに染めている感じ。パッションを込めて強く弾く部分も、彼女独特のテンポの扱い方も相乗して、どこか蝶が舞いあがる印象がある。この印象については、ファツィオリ社製のピアノの音色も、重要な役割を果たしている事は言うまでもない。

シルバーの光沢あるドレスを着た姿はスラッとした容姿で、写真よりも美しい。妙に彼女の奏でる音と合っている。

後半はバッハの「フーガの技法」。前半とは打って変わって、時折客席を見つめる事もなく、曲にのめり込んで行くかの演奏である。後方上手側だと分からないが、楽譜はiPodを用いているらしい。それぞれの曲の導入部から全開に展開するまでの時間が微妙に長い曲想であることもあり、観客の側にも集中力を要するところがある演奏だ。ティントレットよりもティッツィアーノが好きな享楽主義の私にとっては、前半部の方が好みであるが、そのような事を言ったら怒られるだろうか。

アンコールは、グルックの歌劇「オルフェオとエウリディーチェ」から「聖霊の踊り」。前半部と同じような華やかで軽やかな演奏で、「フーガの技法」の疲れを癒してくれた。

アフタートークについては、別稿を参照願う。