2013年7月27日 土曜日
札幌コンサートホールkitara (北海道札幌市)
札幌市を中心に開催されるPacific Music Festival (PMF) 2013は、7月6日から31日まで開催され、ヴィーン-フィル等から招かれた奏者による若手音楽家に対する教育の他、多数の形態の演奏会により構成される。7月27日に開催されたガラコンサートは第一部・第二部と分けられ、第一部はカナディアン-ブラスによる吹奏楽、ワディム=レーピン・小山実稚恵による室内楽、天羽明惠による歌曲、新国立劇場オペラ研修所修了生による歌曲、PMF賛歌斉唱という、盛り沢山の内容である。
曲目:
ザミュエル=シャイト 「音楽の諧謔」第一部より 第21番「戦いのガイヤルド」
ヨハン=セバスティアン=バッハ(ロム編曲) フーガ BWV578 「小フーガ」
ジョージ=ガーシュイン(ヘンダーソン編曲) 「必ずしもそうじゃないぜ」(It Ain’t Necesarily So)
ニコライ=リムスキー-コルサコフ(ライデノー編曲) 歌劇「皇帝サルタンの物語」 op.57 より 「くまんばちの飛行」
吹奏楽:カナディアン-ブラス
ピョートル=イリイッチ=チャイコフスキー ワルツ-スケルツォ op.34
ヴァイオリン:ワディム=レーピン
ピアノ:小山実稚恵
ルチアーノ=ベリオ 「フォーク-ソングス」より
3. 月が昇った (アルメリア民謡)
4. 森の小さなナイチンゲール (フランス民謡)
6. 理想の女 (イタリア民謡)
7. 踊り (イタリア民謡)
9. 哀れな男(女房持ちはかわいそう) (フランス-オーヴェルニュ地方民謡)
10. 紡ぎ歌 (フランス-オーヴェルニュ地方民謡)
11. アゼルバイジャンのラブソング (アゼルバイジャン民謡)
ソプラノ:天羽明惠
室内楽:PMF管弦楽団メンバー
指揮:ダニエル=マツカワ
リスト=フェレンツ 「巡礼の年 第2年 イタリア」より 第7曲「ダンテを読んで:ソナタ風幻想曲」
ピアノ:小山実稚恵
(休憩)
ゲオルグ=フリードリッヒ=ヘンデル 歌劇「エジプトのユリウス=カエサル」から クレオパトラのアリア「難破した船が嵐から」
ソプラノ:吉田和夏(新国立劇場オペラ研修所修了生)
管弦楽:PMF管弦楽団
指揮:準=メルクル
ヴォルフガング=アマデウス=モーツァルト 歌劇「魔笛」より 夜の女王のアリア「私は苦しむために選び出されたもの」
ソプラノ:倉本絵里(新国立劇場オペラ研修所修了生)
管弦楽:PMF管弦楽団
指揮:準=メルクル
ジュール=マスネ 歌劇「エロディアード」から サロメのアリア「美しくやさしい君」
ソプラノ:立川清子(新国立劇場オペラ研修所修了生)
管弦楽:PMF管弦楽団
指揮:準=メルクル
ジャコモ=プッチーニ 歌劇「つばめ」から マグダのアリア「ドレッタの美しい夢」
ソプラノ:柴田紗貴子(新国立劇場オペラ研修所修了生)
管弦楽:PMF管弦楽団
指揮:準=メルクル
グスターブ=ホルスト(田中カレン編曲) PMF賛歌(「惑星」より「木星」の替え歌)
ソプラノ:天羽明惠・吉田和夏・倉本絵里・立川清子・柴田紗貴子
合唱:PMF GALA 合唱団・北海道札幌旭丘高等学校合唱部・観客
管弦楽:PMF管弦楽団
指揮:準=メルクル
着席位置は正面2階前方中央、チケットは完売している。2008席の座席の内、97席は合唱団向けに当てられ、残りの1911席が観客向けに発売されている。当日券によりチケット完売となった模様である。
休憩前は、比較的少人数のソリスティックな演奏を披露するプログラムである。
カナディアン-ブラスによる吹奏楽は、統一感のある柔らかい響きで魅了する。
チャイコフスキーの「ワルツ-スケルツォ」は、ワディム=レーピン・小山実稚恵の息がだんだん合っていく良い演奏である。
ベリオの「フォーク-ソングス」、天羽明惠のソプラノは、大きいホールであればこんなものかと思える内容である。特に速いテンポの部分では声量不足が露呈するが、2000名を超える規模のホールでは止むを得ないか。一方で管弦楽はPMFメンバーから7人出演しており、室内楽規模であるが指揮者が置かれている。PMFメンバーの演奏は力強く精度も整っており、巨大なホールであることを忘れさせる響きで素晴らしい。
リストの「ダンテを読んで:ソナタ風幻想曲」、小山実稚恵の調子はかなり良い。重箱の隅を突けば、ミスタッチしている箇所があるようにも思えるが、全般的にkitaraの響きを十全に活かした音作りだ。構成もしっかりしていて、アクセントを良く効かせている。
ここで休憩に入る。25分と日本では眺めの休憩時間であるが、ホワイエでは天羽明惠によるPMF賛歌の練習が始まる。天羽明惠の教えはちょっとサドっぽい性格が滲み出ている。年上好きでマゾな男の子には堪らないかもしれない。
休憩後は、準=メルクル指揮による大管弦楽を背景とした、新国立劇場オペラ研修所修了生によるオペラ-アリアを四曲と、PMF賛歌である。
管弦楽配置は、舞台下手側から、第一ヴァイオリン→第二ヴァイオリン→ヴァイオリン-チェロ→ヴィオラのモダン配置で、コントラバスはチェロの後方につく。木管パートは後方中央、ホルンは後方上手側、その他の金管・ティンパニは後方中央から下手側の位置につく。
四人の修了生はいずれも大きなホールにしては歌声を響かせているが。マスネによるサロメのアリア「美しくやさしい君」のソリストである立川清子が一歩進んでいる。重い声質で実に作品の雰囲気を捉えている歌唱だ。
ヘンデルを歌う吉田和夏は、バロックオペラに似合った軽い声質で心地よい響きがよい。プッチーニを歌う柴田紗貴子も、短い曲であるが良く響いた声だ。
PMF賛歌は、観客を含めた全員で参加して盛り上げる。ソリストや合唱団の歌声を聴くと言うよりは、観客の側にPacific Music Festival (PMF)に対する参加意識を高める目的の賛歌だ。
第二部は既に投稿された別の投稿を参照願いたい。