2013年7月24日水曜日

イル-デーブ(IL DEVU) 松本公演 評

2013年7月24日 水曜日
松本市音楽文化ホール (長野県松本市)

曲目:
武満徹 「混声合唱のための『うた』」より 
 「明日ハ晴れカナ曇リカナ」(ソロ 青山貴)
 「小さな空」(ソロ 望月哲也)
 「死んだ男の残したものは」(ソロ 山下浩司)
 「うたうだけ」(大槻孝志)
「ふるさとの四季」 唱歌メドレー 故郷→春の小川→朧月夜→鯉のぼり→茶摘み→夏は来ぬ→われは海の子→村祭→紅葉→冬景色→雪→故郷

(休憩)

ジュリオ=カッチーニ 「新音楽」より「麗しのアマリッリ」
フランツ=シューベルト 「シルヴィアに」
ボブ=チルコットによる編曲集より
 「O danny boy」(アイルランド民謡)
 「Oborozukiyo」(岡野貞一作曲)
 「Over the wave」(ネイティブアメリカン オジプワ族の歌)
BIGIIN 「涙そうそう」(ピアノソロ)
井上陽水 「少年時代」
木下牧子 「ロマンチストの豚」
木下牧子 「さびしいカシの木」
アレアンドロ=バルディ 「Passera」
クロード=フランソワ 「My way」

合唱:イル-デーブ
構成員
 テノール:望月哲也・大槻孝志
 バリトン:青山貴
 バスバリトン:山下浩司
 ピアノ:河原忠之

着席位置はやや後方僅かに上手寄り、客の入りはほぼ9割5分位であろうか。空席はチケットを購入したものの来れなかった人たちだけで、693席全てが完売であるのは、地元アマチュア合唱団体の恐るべき力によるものだろう。私としては全くの予想外だ。

二日前の、東京の白寿ホールに続く公演となる。白寿ホールのプログラムと比較すると、松本公演はかなりポピュラー系に振った演目だ。

松本市音楽文化ホール(音文)でこの演奏会があることは何カ月も前から知っていたが、宣伝文句は「5人の太メンが醸し出す重量級の響き」。むさい男の歌など誰が聴くかと言うことで、チケットの購入対象から外していた。若くて綺麗なロシア人やスペイン人女性ソプラノのリサイタルだったら、チラシの写真を見てチケット購入を決意してしまうだろうけど、男の声を聴きに行く動機が、このあきらにゃんにあるはずがない。絶対にない。

ところが前日になって、予定がダブルブッキングになってしまったので、一枚上げるから聴きに行ってという話があり、せっかくの機会でもあり、急遽臨席する事となった。

前半は、ソロ+ピアノにより、武満徹の「混声合唱のための『うた』」より、一曲ずつ歌い手が変わって四曲演奏される。どの歌い手も十分に体調を整えたようで、ホールを味方につけて響かせている。バスバリトンの山下浩司の声が、一番音文の特性に合致した響きを持っており、一歩進んだ印象を受ける。

その後の、唱歌メドレーからは合唱形式だ。宣伝文句にある「重量級」は出演者の体重だけのお話で、実際は軽い声質でよく通る声である。バスバリトンの山下浩司の声でさえこのように感じられる程だ。バスがいないIL DEVUならではの特質だろう。

休憩後、ピアノソロ「涙そうそう」の前の五曲は、なんとなく統一感が取れていない歌唱である。

しかしながら、井上陽水の「少年時代」で音がガラっと変わり、統一感が抜群に取られ始める。バリトンの望月哲也を前面に出し、他の三人が的確に下支えする展開だ。木下牧子の「ロマンチストの豚」・「さびしいカシの木」も同様の調子で良い出来である。最後の二曲、「Passera」・「My way」では、統一感に加えパッションを込めた熱唱で、演奏会の最後を熱く締めくくる。予想外に素晴らしい演奏会である。

アンコールは二曲、Andrew Lloyd Webberの「Pie Jesu」、John Rutterの「All Things Bright and Beautiful」であった。