2013年4月13日土曜日

日本フィルハーモニー交響楽団 特別演奏会 評

2013年4月13日 土曜日
東京オペラシティ タケミツメモリアル (東京)

曲目:
ヨハネス=ブラームス 「大学祝典序曲」 op.80
フェリックス=メンデルスゾーン=バルトルディ ヴァイオリン協奏曲 op.64
(休憩)
シャルル=カミーユ=サン-サーンス 交響曲第3番 「オルガン付き」op.78

ヴァイオリン:成田達輝
オルガン:長井浩美
管弦楽:日本フィルハーモニー交響楽団(JPO)
指揮:山田和樹

山田和樹は、2012年9月から2015年8月までの三年間にわたり、JPO「正指揮者」として活動する。今回の特別演奏会は「今は一度でも多く共に演奏をと双方呼び合って」(注1)との、良くわからないけどまあいいや的な理由により、定期演奏会の枠外としての開催となる。

演奏会場は20から30歳代の若い女性の姿が多い。「ヤマカズ」人気によるものか成田達輝人気によるものかは不明である。演奏会前のプレトークには山田和樹が登場する。内容は、JPOがこの4月1日より目出度く「公益財団法人」に移行できたこと。この演奏会は「公益財団法人」に移行できたことを祝う意味があり、祝典的要素を持つこと。配布されたプログラムに「創立指揮者 渡邉暁雄」の文言を復活させたこと。渡邉暁雄が行った先駆的施策を引き継ぎ、9月13日に協奏曲を主体とした「コンツェルト-シリーズ」演奏会を行うことである。

「大学祝典序曲」は、出だしこそ管弦楽は固めであったが、次第に安定感を増していく演奏である。結尾部は強く綺麗な響きでまとまる。

メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲は、ややゆっくり目のテンポである。ソリストの成田達輝は若干詰めを欠いている部分はあるが、決めるべきところでは何故か、ちゃんと決めている。第二楽章・第三楽章の出来は良い。最も注目させられる点は、ソリストと管弦楽とのバランスは非常に良くかんがえられている点である。ソリストを引き立たせるところと木管ソロを引き立たせるところの切り替えは見事である。成田達輝をサポートする山田和樹の管弦楽に対する指示は実に的確で、成田達輝の実力を150%際立たせることに成功している。

休憩後の三曲目、いよいよ「オルガン付き」である。タケミツメモリアルのオルガンは、スイス連邦チューリッヒ近郊メンネドルフに本拠を置く、クーン社製であり、日本には兵庫県宝塚市にあるヴェガホールを皮切りに、タケミツメモリアルの他、大阪シンフォニーホール、川崎ミューザホール、川口リリカホール、群馬県安中市の新島学園高等学校に導入され、計6台となる。タケミツメモリアルは日本導入第5台目である。

http://www.operacity.jp/concert/facilities/ch/organ/index.php

第一部後半からオルガンが登場する。オルガンの響きは管弦楽と溶け合わせるようなアプローチを取っている。クーン社のオルガンの音色は柔らかいが、涙腺を潤ませる程のロマンチックな響きではなく、音楽そのものに集中しやすい音色だ。

管弦楽は序盤に固さが見られたが、山田和樹の明晰な指揮により適切に導かれ、テンションが高まっていくのが非常に良く分かる演奏である。JPOがいかなる箇所に於いても、ベルリン-フィル程の完璧な表現力を発揮している訳では決してないが、それでも金管ソロの演技が実に的確に決まるなど、失敗のリスクを冒して跳んだトリプルアクセルを見事に決めたかのような箇所もある。山田和樹が10の指示を出すと、期待以上の13の結果でフィードバックされ、パッションがさらに込められていく素晴らしい熱演である。JPOの実力を150%は引き出したのではないだろか。

一方でタケミツメモリアルの残響の良さも十二分に計算され、テンションを強く掛けた引き締まった演奏である一方で、バランスも良く保たれ、素晴らしいホール、明晰で鋭い指揮、パッションに溢れた演奏者が三位一体となった、優れた演奏である。

アンコールは、シベリウスを紹介したJPO創立指揮者-渡邉暁雄に因んで、「フィンランディア」となる。熱気が収まらない中での「フィンランディア」は、完成度の面で序盤から隙がなく、これまた素晴らしい演奏であった。

注1: http://www.japanphil.or.jp/cgi-bin/news.cgi#712