2013年2月2日土曜日

諏訪内晶子・レイフ=オヴェ=アンスネス 演奏会評

2013年2月2日 土曜日
横浜みなとみらいホール (神奈川県横浜市)

曲目:
フランツ=シューベルト ソナチネ第1番 D.384
バルトーク=ベーラ ヴァイオリン-ソナタ第2番 Sz.76
(休憩)
アントン=ヴェーベルン:ヴァイオリン&ピアノのための4つの小品 op.7
ルートヴィッヒ=ファン=ベートーフェン ヴァイオリン-ソナタ第9番「クロイツェル」 op.47

ヴァイオリン:諏訪内晶子
ピアノ:レイフ=オヴェ=アンスネス

「国際音楽祭NIPPON」は諏訪内晶子を芸術監督としており、今年は横浜で3公演、仙台で1公演、開催される。この演奏会は、「国際音楽祭NIPPON」初年初回の演奏会となる。ピアノ奏者であるアンスネスはノルゲ(ノルウェー)出身で1970年生まれ、1972年生まれの諏訪内より若干年上である。

第一曲目のシューベルトは、諏訪内晶子らしい朗々とした響きが限られており、この演奏会の行方を心配させる程である。

しかしながら、第二曲目のバルトークでその懸念は一掃され、会場の雰囲気は一変する。第三曲目のヴェーベルン、第四曲目のベートーフェンに於いても同じように準備は入念になされている。

2020名収容する巨大なホールであり、室内楽を演奏するに当たってどのような響きになるか不透明な部分があった。ヒラリー=ハーンのヴァイオリンは明らかに音量不足であったし(2012年6月2日演奏会評参照)、神尾真由子では確実にアウトである。しかしながら、何年か前に長野県松本文化会館での演奏会にて、ゲルギエフもロンドン交響楽団も無気力演奏をしていた中で、たった一人だけ気迫を込めた演奏を諏訪内晶子がしていたのを知っている私としては、多分大丈夫だろうとは思っていた。

やはり、みなとみらいホールが大き過ぎるとは感じられる所は部分部分にはある。600~800名規模の小さめなホールであれば、あらゆる音量に対しても、もっと的確な響きにコントロールする事が可能であるとは確実に言える。松本市音楽文化ホールや軽井沢大賀ホール・水戸芸術館が演奏会場であれば、完璧を期する事ができると感じられる部分はある。

しかしながら、強奏部と、逆に最弱奏部に於いては、みなとみらいホールを味方につける事に成功している。バルトークでは、ロマ音楽の影響を強く受けたのだろうなという部分が実感できるとともにパッションが十二分に込められた素晴らしい演奏である。

休憩後のヴェーベルンは、全曲で10分満たない小品であるが精密で丁寧な演奏である。

ベートーフェンもヴァイオリンが表に出てくるところ、ピアノが表に出てくるところ、二人で親密に合わせて演奏するところでどのように処理するか明確な演奏である。諏訪内晶子はヴァイオリンを朗々と響かせて観客の心を掴んでいくが、ピアノのアンスネスもピアノが表になるところでちょっとテンポと音量をひねって新鮮な印象を残していく。長く緩やかなアッチェレランド掛けて、いつの間にかテンポが速くなっていたり、ちょっと長めにゼネラルパウゼを掛けてテンポを遅く再設定したりするが、全く不自然なところがない。ベートーフェンの曲に新たな生命を吹き込みながらも、完成度を高く保った立派な演奏である。

アンコールは、ヤナーチェクのヴァイオリン-ソナタ、第2楽章であった。

写真(編注:facebookに掲載。このブログでは写真の掲載はしない方針です)は、「国際音楽祭NIPPON」のチラシの中にある、諏訪内晶子芸術監督によるご挨拶(的な文)。天下のトヨタ自動車を味方につけるとは、諏訪内晶子、偉くなったなあ♪ウェブサイト見ると、来年は名古屋でもやるみたい。そりゃ、トヨタ自動車がスポンサーでは、名古屋開催は不可避だな。それにしても第一回目の主会場を横浜としたのは、横浜駅前に本社を置く某自動車会社への宣戦布告??まあ、私としては「音楽祭」云々はどうでも良くて、どんな形態であれ良い演奏が聴ければいいし、トヨタ車を買うこともないかと思いますが、このような機会を設けるのに重要な役割を果たしてくれましたトヨタ自動車様には、ただただ感謝申し上げる次第であります♪♪