2013年1月20日日曜日

戸田弥生 ヴァイオリン-リサイタル 評

2013年1月20日 日曜日
福井県立音楽堂(ハーモニーホールふくい) 小ホール (福井県福井市)

曲目:
バルトーク=ベラ 無伴奏ヴァイオリン-ソナタ Sz.117
セルゲイ=プロコフィエフ 無伴奏ヴァイオリン-ソナタ op.115
(休憩)
ウジェーヌ-オーギュスト=イザイ 無伴奏ヴァイオリン-ソナタ第6番 op.27-6
ヨハン=セバスチャン=バッハ 無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番 BWV1004

ヴァイオリン:戸田弥生

戸田弥生の演奏を聴くのは初めてである。実は、戸田弥生の出生地は福井市であるとのこと、福井県立音楽堂が供用されて15年経つが、14回もの演奏をこの福井県立音楽堂で行う事となる。

選曲はかなりハードな路線である。地方都市の場合、「聴きやすい」というか、いわゆる有名な「名曲」で固め、商業的に無難な路線に走る事が多いように思うが、福井の聴衆に受け入れられるか心配する程の曲目だ。

戸田弥生は、かなり強靭な精神の持ち主である。協奏曲であれば20分から30分程の間、断続的に演奏していれば良いが、無伴奏の場合連続して弾き続けなければならない。実演奏時間は約80分であるが、その時間緊張を維持するのは並大抵でないだろう。

第一曲目のバルトークから飛ばす演奏だ。楽章の間は、楽器の調整を必要とする場面以外は、10秒弱で次の楽章に入る。これ見よがしのテンポの変化や強弱の変化はない。純音楽的な展開の面白さを追求するタイプではなく、音の密度の濃さと緊迫感を漲らせるタイプの演奏である。その緊迫感は、楽章の間で咳をする雰囲気ではない程だ。ある意味、ロマ音楽のような、ここぞといった焦点に向けて熱を帯びる演奏でもあるとも言える。

最後、バッハのパルティータ第2番の第五楽章も、最も疲労がたまってくるところではあるが、そもそもが舞曲とは信じがたい程の緊迫感を一層高めていた。

非常に硬派な演奏会であり、最後はアンコールはなかったこととされている。プログラム終了後に福井県立音楽堂の橋本氏が出てきて(演奏にちゃんと臨席して聴いていた)、戸田弥生とのちょっとしたトークショウのような異例の展開となる。2013年7月14日に福井県立音楽堂にて、どこぞの管弦楽団とベートーフェンのヴァイオリン協奏曲の競演を行うとか、そのプログラムでラヴェルのツィガーヌを演奏するとか、面白そうな噂が囁かれている。最後に「亜麻色の髪の乙女」事件が発生したが、この内容について詳細な事情は敢えて書かないでおく。