2013年1月1日 火曜日
フェニーチェ大劇場 (イタリア共和国ヴェネト州ヴェネツィア市)
曲目:
ジュゼッペ=ヴェルディ 歌劇「アイーダ」より「シンフォニア」
ピョートル=イリイッチ=チャイコフスキー 交響曲第2番「小ロシア」 op.17
(休憩)
ジョアキーノ=ロッシーニ 歌劇「コリントスの包囲」より「ギャロップ」
ジュゼッペ=ヴェルディ 歌劇「椿姫」より「我らはマドリードの闘牛士」
ジュゼッペ=ヴェルディ 歌劇「シチリア島の夕べの祈り」より「ありがとう友よ」
ジュゼッペ=ヴェルディ 歌劇「リゴレット」より「あれかこれか」
ジュゼッペ=ヴェルディ 歌劇「アッティラ」より前奏曲
ジュゼッペ=ヴェルディ 歌劇「第一回十字軍のロンバルディア人たち」より「主よ、私の家から」
ジュゼッペ=ヴェルディ 歌劇「椿姫」より第一幕前奏曲
ジュゼッペ=ヴェルディ 歌劇「椿姫」より「花から花へ」
ジュゼッペ=ヴェルディ 歌劇「第一回十字軍のロンバルディア人たち」より「私の喜びを」
ジュゼッペ=ヴェルディ 歌劇「ナブッコ」より「行け、我が想いよ、黄金の翼に乗って」
ジュゼッペ=ヴェルディ 歌劇「椿姫」より「乾杯の歌」
ソプラノ:デジレ=ランカトーレ
テノール:サイミール=ピルグ
合唱:フェニーチェ大劇場合唱団
管弦楽:フェニーチェ大劇場管弦楽団
合唱指揮:クラウディオ=マリノ=モレッティ
指揮:サー=ジョン=エリオット=ガーディナー
フェニーチェ大劇場での2013年新年演奏会(Concerto di Capodanno)は、2012年12月29日から2013年1月1日まで、合計4公演開催された。この評は2013年1月1日の公演に対してのものである。なお、この演奏会は休憩後の後半部分に於いてイタリア放送協会第一テレビシオン番組(Rai 1)でも生放送されている。
昨年とは違い、イタリア国歌斉唱とはならず、いきなり「アイーダ」のシンフォニアが始まる。普通の出来と言ったところか。
第二曲目のチャイコフスキー「小ロシア」交響曲は、第一楽章こそ平凡な出来であるが、なぜか拍手が起こる。よく分からない展開となる。奇妙な感覚のイタリア人がいたのか、それともアメリカ人の田舎者が紛れ込んでいるからなのかは分からない。演奏は楽章が進むにつれ熱を帯びていく。第三楽章の終わりでも拍手が起きたが、まあ起きても良いかという程度の演奏だ。第四楽章は、それこそ第四・第五交響曲と並ぶだけの内容を持つ楽章にふさわしい演奏で、如何にもロシアを感じさせる堂々とした演奏だ。良い演奏であるとは言える。ただ、私が居住している日本での演奏ではなく、膨大な資源を投じて10,000km近い距離のヴェネツィアまで行く程の価値があるかと言われると、疑問を感じるところがあるのも否めない。
前半部については、昨年のディエゴ=マテウス指揮の方が面白かったか。プログラムにないイタリア国歌から始まってチャイコフスキーの第5交響曲だったから、前半部でも十分盛り上がれる内容だったし、実際第5の演奏も縦の線がビシっと決まった素晴らしい演奏だったから。今年は、こういったフェニーチェ大劇場管弦楽団の見せ場は少なかったように思える。
休憩は25分で、昨年より長めである。
後半が始まる。まずはロッシーニの「コリントスの包囲」からの「ギャロップ」だ。管弦楽だけの演奏で、ゆっくりとしたテンポではあるが、前半と違って大変ノリがよい。参考映像は↓
http://www.youtube.com/watch?v=MVE25H1Vpao
2曲目は「椿姫」から「我らはマドリードの闘牛士」。合唱団がここで登場する。合唱は普通の出来か。
3曲目は「シチリア島の夕べの祈り」より「ありがとう友よ」である。ここでソリスト、デジレ=ランカトーレが登場する。この演目は、ランカトーレがシチリアの出身であることをも意識しているのか。
ランカトーレの歌声は、この「ありがとう友よ」に於いては、若干安定感を欠く部分もあり、突っ込みを入れようと思えば入れられるところもあるが、全般的には声量は十分あり劇場全般に行きとどいているだけでなく、その声質も力強い。特に歌い終わりで見栄を切るところが素晴らしい。参考映像は↓
http://www.youtube.com/watch?v=iLZBpNEjvTQ
4曲目は歌劇「リゴレット」より「あれかこれか」である。もう一人のソリスト、サイミール=ピルグが登場する。イベリア地方の出身かと思いきや、実はシュキペリア(アルバニア)出身の若手テノールである。ピルグの歌声は完璧の一言だ。声量が十二分に劇場全般に行き渡り、崩れるところが一切なく、軽やかで甘い声質を存分に活かしている。これ以上の完璧さを求めるのは難しいだろう。参考映像は↓。
http://www.youtube.com/watch?v=rYeYdNJMPws
5曲目は歌劇「アッティラ」より前奏曲は管弦楽のみの演奏である。テンポは遅めでしっとりとした演奏だ。参考映像は↓。
http://www.youtube.com/watch?v=wlhMfYKwhH8
6曲目は歌劇「第一回十字軍のロンバルディア人たち」より「主よ、私の家から」である。
参考映像は↓。
http://www.youtube.com/watch?v=TIBRuPQ1atw
7曲目は歌劇「椿姫」より第一幕前奏曲である。遅めのテンポでしっとりと進めていく。参考映像での2分57秒頃で微妙にリタルランドを掛けているが、とても効果的だ。この日の管弦楽単独の演奏の中では最もよい演奏である。
参考映像は↓。
http://www.youtube.com/watch?v=nHfDxtlMpw0
8曲目は歌劇「椿姫」より「花から花へ」である。ランカトーレの歌声はより完成度を増し、完璧な歌声である。途中、ピルグが舞台裏で歌い出す。ピルグのパワーは音響板をものともせず、ランカトーレとの完璧なバランスを保って客席まで響かせる。演奏会も終わりが近づく所で、劇場中を一気に盛り上げていく。
参考映像は↓。
http://www.youtube.com/watch?v=9eqw_R4MSvk
9曲目は歌劇「第一回十字軍のロンバルディア人たち」より「私の喜びを」である。ピルグの歌声が変わらずに冴えわたっている。
http://www.youtube.com/watch?v=6SxleoSb3lc
10曲目は歌劇「ナブッコ」より「行け、我が想いよ、黄金の翼に乗って」である。今年はあまり合唱が前面に出なかったところもあるが、それでもこの歌唱はこの演奏会の中では一番良い。
参考映像は↓。
http://www.youtube.com/watch?v=OIpkUf5eF0c
11曲目は歌劇「椿姫」より「乾杯の歌」である。本番最後の曲であると同時に、アンコールでも演奏される。ヴィーンの新年演奏会で「美しき青きドナウ」と「ラデツキー行進曲」をアンコールで演奏するのと同じ約束事である。
ランカトーレ・ピルグ・合唱・管弦楽が全て揃って、新年演奏会の幕を閉じる。今年のソリストは二人とも完璧に近く、このような歌声であれば例え短い一時間程の時間であっても、遠いヴェネツィアまで行って良かったと思える。このような力のあるソリストが揃った歌劇なら、どんな遠くの歌劇場にでも駆けつけたいと強く思う。
参考映像は(本番のみ)↓。
http://www.youtube.com/watch?v=X11tKxJ-5qc
アンコール(同曲)付の参考映像は↓。
http://www.youtube.com/watch?v=MsumKsptexo
画像が悪いが、本番とアンコールの間の情景付↓
http://www.youtube.com/watch?v=RvrqIZF1LSU
なお余談であるが、Rai 1は生放送に当たって下記↓のイントロダクションを放映している。
http://www.youtube.com/watch?v=rAyStaowowg
上記参考映像の中にはバレエ風景もあり、これもヴィーンでの新年演奏会の真似か何かで賛否両論かとは思うが、賛否は別として、さすがにミラノ-スカラ座のバレエ団には美男美女が揃っていて、絵になっている。
このイントロダクションでは、ヴェネツィアのサン-ジョルジョ-マジョーレ島や、総督宮殿でロケが行われている。
本番のカメラワークとともに、日本のNHKでは到底為し得ない映像美を楽しむのも良いだろう。