2016年4月9日土曜日

国立文楽劇場「妹背山婦女庭訓」感想

2016年4月9日に、国立文楽劇場にて「妹背山婦女庭訓」を通しで観劇しました。11:00から21:04までの長丁場です。

当日は散り始めておりましたが、国立文楽劇場前の二本の桜がまだまだ咲いておりました。うまく撮影すれば、まだまだ葉桜になっていないように誤魔化せるレベルです。

第一部での「妹山背山の段」は桜の季節の背景です。ギリギリとはいえ、桜が完全に散る前に来れて良かったです。この段は、二時間近くに渡る場面です。雛鳥の首を整える定家の仕草に涙腺が緩みました。この段では、出語り床を上手・下手両側に設置しています。雛鳥は下手側、久我之助は上手側、その間は人の行き来ができない国境の川です。雛鳥側の太夫・三味線を下手側に置く珍しい形態でした。

後半の第二部では、橘姫とお三輪とで藤原淡海(偽名:求馬)を取り合う、よくありがちな場面です。かなり積極的なお三輪に同感される方は多いでしょう。橘姫よりもお三輪の方が、興味深い描かれ方をしています。

四段目、終盤の、お三輪 が鱶七に殺害される場面は圧巻でした。人形劇でこれ程までの表現が出来る事に、いつも感歎します。10時間もの長丁場も、ここ場面で疲れが吹き飛びました。

それにしても、この10時間で五人の命が失われました。暗殺が1件、自害が3件、「大義」のための殺害が1件です。今の時代に生きていて良かったと思います。。外国人の観客もいらっしゃいましたが、このような江戸時代の日本の価値観は、理解し難いでしょうね