2015年10月3日土曜日

Alina Rinatovna Igragimova + Cédric Tiberghien, (3nd October 2015), review アリーナ=イブラギモヴァ + セドリック=ティベルギアン 東京公演 評

2015年10月3日 土曜日
Saturday 3rd October 2015
王子ホール (東京)
Oji Hall (Tokyo, Japan)

曲目:
Wolfgang Amadeus Mozart: Sonata per violino e pianoforte n.40 K.454
Wolfgang Amadeus Mozart: Sonata per violino e pianoforte n.12 K.27
Wolfgang Amadeus Mozart: Sonata per violino e pianoforte n.24 K.296
(休憩)
Wolfgang Amadeus Mozart: Sonata per violino e pianoforte n.43 K.547
Wolfgang Amadeus Mozart: Sonata per violino e pianoforte n.16 K.31
Wolfgang Amadeus Mozart: Sonata per violino e pianoforte n.30 K.306

violino: Алина Ринатовна Ибрагимова / Alina Rinatovna Igragimova
pianoforte: Cédric Tiberghien

アリーナ=イブラギモヴァは、10月1日から6日に掛けて、セドリック=ティベルギアンとともに、モーツァルトのヴァイオリン-ソナタの演奏会を、王子ホール(東京)、電気文化会館(名古屋)にて行う。王子ホールに於いては、五回の演奏会で全曲を演奏する形を取り、この10月では第一から第三のプログラムを演奏する。なお、第一のプログラムのみ、10月6日に電気文化会館にて演奏される。

この評は、10月3日第三プログラムの公演に対する評である。

着席位置は後方正面ほぼ中央、観客の入りは9割5分ほど。観客の鑑賞態度は、時々唸り声が聞こえてきたような気もするが、概ね極めて良好であった。

やはり最後のK.306が一番素晴らしい。

それでも、演奏会全般に渡って、アリーナとセドリックとの二人のコンビネーションは完璧で、どこで誰を前面に立たせるか、二人でどのような響きにブレンドするかの点は、よく考えられている。Mozartのヴァイオリン-ソナタはピアノも同格で主張しなければならないが、セドリックによる的確かつ見事なピアノの演奏により、素晴らしいMozartになる。

劣悪な王子ホールの響きであるが、アリーナはその劣悪な響きを克服する術と力を持っている。セドリックとのコンビネーションの巧みさと合わせ、ピアノとよく調和させた響きを、アリーナは実現させる。

東京の人たちには、アリーナはまろやかで優しい響きの奏者だと思われていると思うけど、それはアリーナが激しく弾くと王子ホールが響きを減衰させて、結果優しい響きになってしまうからである。名古屋の電気文化会館で演奏すれば、アリーナのヴァイオリンは、もっと豊かに、もっと鋭く響くはずだ。激しく鋭い響きこそアリーナの持ち味と考える私としては、きちんと響くホールで演奏して欲しいと思うところであり、紀尾井ホール以外にマトモな中小規模のホールがない東京の聴衆は不幸だと思う。

アリーナには連日かつ別プログラムの疲れが見受けられたが、それでも、最後のK.306は圧巻である。一曲だけでも、王子ホールの響かない特性と折り合いをつけ、あのレベルでやってくれただけで十分だ。

演奏会終了は開始時刻から150分後であり、総演奏時間は120分前後か?これだけ演奏者に負担が大きいプログラムであったのにも関わらず、アンコールを一曲演奏してくれた。K.14の第一楽章であった。