2015年10月6日 火曜日
Tuesday 6th October 2015
電気文化会館コンサートホール (愛知県名古屋市)
Denki Bunka Kaikan Concert Hall (Nagoya, Japan)
曲目:
Wolfgang Amadeus Mozart: Sonata per violino e pianoforte n.25 K.301
Wolfgang Amadeus Mozart: Sonata per violino e pianoforte n.5 K.10
Wolfgang Amadeus Mozart: Sonata per violino e pianoforte n.41 K.481
(休憩)
Wolfgang Amadeus Mozart: Sonata per violino e pianoforte n.35 K.379
Wolfgang Amadeus Mozart: Sonata per violino e pianoforte n.15 K.30
Wolfgang Amadeus Mozart: Sonata per violino e pianoforte n.9 K.14
Wolfgang Amadeus Mozart: Sonata per violino e pianoforte n.28 K.304
violino: Алина Ринатовна Ибрагимова / Alina Rinatovna Igragimova
pianoforte: Cédric Tiberghien
アリーナ=イブラギモヴァは、10月1日から6日に掛けて、セドリック=ティベルギアンとともにモーツァルトのヴァイオリン-ソナタの演奏会を、王子ホール(東京)、電気文化会館(名古屋)にて行う。王子ホールに於いては、五回の演奏会で全曲を演奏する形を取り、この10月では第一から第三のプログラムを演奏した。電気文化会館に於いては、王子ホールでは10月1日に演奏された第一のプログラムのみの公演となる。
この評は、10月6日電気文化会館の公演に対する評である。
着席位置は後方正面中央、観客の入りは9割程か。観客の鑑賞態度は、概ね良好だった。
やはり、アリーナは弱奏を実に深い音色で響かせる。モーツァルトなのに、誤解を恐れずに言えば、どこかロマン派風に、シューベルトの歌曲を聴いているかのように思える箇所もあった。
アリーナの調子は第一曲目からして素晴らしいものがあった。中三日の休息の効果は絶大で、3日の王子ホールでの疲れが目立った公演とは見違える程である。電気文化会館の響きの素晴らしさが、アリーナを的確に援護した。
アリーナの深い音色は、東京の王子ホールでは実現出来ないものだ。電気文化会館でのアリーナは、モーツァルトなので頻度は少ないが、強奏部では伸びやかに激しさを出していたし、弱奏部では深みを伴う音色で響かせいた。
ピアノのティベルギアンも出るべき所は主張して、モーツァルトの比較的ピアノを重視したソナタの真価を表現していた。アリーナとのコンビネーションや、よく考えられた構成も素晴らしく、魅了させられた。
K14 は初期の作品であるが、非常に面白かった。初期のモーツァルトであれだけ深みを出したり、星のようなキラキラした音色を実現させたり、諧謔の要素も盛り込んだりと、様々な意味で興味深い演奏だった。
最後の K304 は、アリーナは控えめでピアノを際立たせる解釈であったが、特にメヌエットが実に深みのある音色で、感銘を受けた。あんなメヌエットがあるんだと、信じ難く、かつ素晴らしい時間でただただ陶酔していた。
アンコールはK296の第二楽章で、 K304 で到達した深みのある音色で魅了させられた。アリーナの真価は、電気文化会館で無ければ分からない。アリーナの真実を知っているのは、東京の観客ではなく、名古屋の観客なのだ!