2015年10月10日土曜日

Nagoya Philharmonic Orchestra, the 428th Subscription Concert, review 第428回 名古屋フィルハーモニー交響楽団 定期演奏会 評

2015年10月10日 土曜日
Saturday 10th October 2015
愛知県芸術劇場コンサートホール (愛知県名古屋市)
Aichi Prefectural Art Theater Concert Hall (Nagoya, Japan)

曲目:
Guillaume Lekeu: Adagio per orchestra da camera op.3 (弦楽のためのアダージョ)
Alban Berg: Concerto per violino e orchestra “Alla memoria di un angelo” (ある天使の想い出に)
(休憩)
Johannes Brahms: Sinfonia n.4 op.98

violino: Алина Ринатовна Ибрагимова / Alina Rinatovna Igragimova (アリーナ=イブラギモヴァ)
orchestra: Nagoya Philharmonic Orchestra(名古屋フィルハーモニー交響楽団)
direttore: Christian Arming (指揮:クリスティアン=アルミンク)

名古屋フィルハーモニー交響楽団は、アリーナ=イブラギモヴァ(ヴァイオリン)をソリストに迎えて、2015年10月9日・10日に愛知県芸術劇場で、第428回定期演奏会を開催した。この評は、第二日目の公演に対してのものである。

管弦楽配置は、舞台下手側から、記録をし忘れている。

着席位置は一階正面後方中央、客の入りは9割程であろうか、かなり観客数は多いと思われたが、チケット完売には至らなかった。観客の鑑賞態度については、ベルクの協奏曲終了時に、指揮者が明確な合図を出す前にフライングの拍手があり、余韻を害した。

アリーナ=イブラギモヴァは、特に第二楽章前半部が素晴らしい。彼女以外の奏者が少なくなればなるほど、彼女は活き活きとしてくる。名フィルの管弦楽も丁寧に演奏していたが、アリーナはリサイタル向けの奏者だとの印象を持った。決して大ホールで大勢の観客を相手にするべき奏者ではない。アリーナ=イブラギモヴァのような、大ホールで演奏させるべきでない奏者の例は、ヒラリー=ハーンを挙げる事が出来る。アリーナが電気文化会館でリサイタルを行う理由が良くわかる。ベルクの協奏曲は、しらかわホールでやっていたら、かなり違った成果が得られただろう。

アリーナ=イブラギモヴァは、音量で攻めるタイプではない。音量的には多分小さいのだろうけど、なぜか響いて、かつ音色の深さで攻めるタイプである事が分かった。いくら愛知芸文でも、大ホールでは無理がある。尚且つあれだけの大管弦楽相手であの曲想では、成果は限定的にならざるを得ない。

後半のブラームス4番は、特に弦楽のパッションが入りまくっており、管楽(特にフルートは素晴らしい)との響きも綺麗にブレンドされ、速めのテンポで躍動感もあり、かつ端正な印象を持つ、素晴らしい演奏であった。若干の、わざとらしさが無いわけでは無く、その点で評価が分かれるかも知れないが。

アルミンクを見捨てた新日フィルは、今頃深く後悔しているであろう。やはり、弦楽が吠えると全てがしっくりし、管楽の装飾と絶妙にブレンドして、パッションと美しさとを兼ね備えた響きが迫ってくる。

3.11の時、福島第一原発があのような事故を起こした状態で、日本在住者でないアルミンクが避難したのは正当な行為だ。それを日本からの逃亡とみなし、追い出した狭量な観客に満たされた東京に戻る必要はない。あれだけキチンとした響きを作り上げる指揮者を追い出した東京は、どうかしている。