2013年8月21日 水曜日
松本市音楽文化ホール (長野県松本市)
曲目:
ヨーゼフ=ハイドン 弦楽四重奏曲第78番 「日の出」 op.76-4 Hob.III-78
ドミートリイ=ショスタコーヴィチ 弦楽四重奏曲第3番 op.73
(休憩)
フランツ=シューベルト 弦楽五重奏曲 D956
ヴァイオリン-チェロ:原田禎夫
ミケランジェロ弦楽四重奏団
ヴァイオリン:ミハエラ=マルティン・ダニエル=アウストリッヒ
ヴィオラ:今井信子
ヴァイオリン-チェロ:フランス=ヘルメルソン
着席場所は、中央後方である。客の入りは8割程である。ど真ん中より僅かに後ろの、N列O列中央席は、関係者用としてリザーブして置いたのだろうが、結局空席のまま演奏会が始まる。このような最も良い場所の一つを何らの利用もされないのは、サイトウ-キネンの若手楽団員が忙し過ぎるのか、それとも、マネジメントがあまり巧くいっていないのか。
本日のプログラム構成は、まずミケランジェロ弦楽四重奏団により二曲演奏された後、休憩後に原田禎夫をゲストに招いて、シューベルトの弦楽五重奏曲が演奏される。同じプログラムでの演奏会は、8月16日に宗次ホール(名古屋市)でも開催されているが、ゲストのチェリストは中木健二であった。サイトウ-キネン-フェスティバル松本での、「ふれあいコンサート1」としての演奏会でもある。
サイトウ-キネン-フェスティバル松本は、今年は8月12日から9月7日までの日程で、歌劇・演奏会・劇音楽が開催される。このうち8月21日から8月30日までの間、「ふれあいコンサート」という名の室内楽演奏会が、それぞれ奏者・プログラムを変え計3公演に渡って繰り広げられる。
まずは、ハイドンの「日の出」であるが、冒頭からちょっとバラバラな印象を受ける演奏である。バラバラな印象は、曲が進むに従って興に乗り、集中力が増した演奏となる。決めるべき所でのニュアンスは豊かであるが、それにしても眠くなる演奏だ。
二曲目はショスタコーヴィチの3番であるが、精度が格段に良くなり、別人のような素晴らしい演奏となる。そもそも始めから終わりまで緊張感を要する曲であるが、そのような要素が却って4人のまとまりを良くしているのかもしれない。非常に良く考えられた演奏で、ヴィオラ、チェロにもソリスティックな出番が多いが、ヴィオラってこんなに響かせる事が出来たんだと思い知らされる。ショスタコーヴィチ独特の、陰影とリズム感を表出させた演奏である。
休憩後はシューベルトの弦楽五重奏曲である。第一楽章では開始後3分程で、今井信子のヴィオラの弦が切れるハプニングが生じる。二本切れたのか?ショスタコーヴィチで強く鳴らしたのが影響したのかも知れない。弦が切れた後は、おそらく主題提示部からの再開かと思われるが、再開前と比較して妙に集中力が増しているのは気のせいか。第二楽章が一番傑出した出来で、緩徐楽章では弛緩した部分もなく、響きも良くまとまっている。
第三楽章ではA-B-A形式のAの部分は、圧倒的に繰り返し部分の完成度が高い。そんな状態だから、ライブやっている分にはいいが、レコーディングはやりにくそう。第四楽章は、楽章は完成度の高い演奏で最後を締めくくる。アンコールはなし。
全般的な印象でも感じる事だが、どうもこのミケランジェロ弦楽四重奏団は、曲の冒頭、または楽章の冒頭で、何となく僅かにバラバラな印象を受ける。楽章が進み興に乗ると、ビシッとまとまって良い響きとなる。第一ヴァイオリンは、敢えて控え目に弾いていると思える部分が多い。他楽器を引き立たせる効果を感じさせた箇所もあるが、この辺りは好き嫌いが生じるところかも知れない。曲想が変わるところでのギヤの入れ替えは、全般的にマイルドだ。ぼーっとして聴いていると、いつの間にかクライマックスに達している印象が残る、不思議な弦楽四重奏団であった。