2015年2月19日木曜日

National Ballet of Japan ‘la Bayadère’ (February 2015) review 新国立劇場バレエ団「ラ-バヤデール」(2015年2月) 評

2015年2月19日 木曜日
Thursday 19th February 2015

新国立劇場(東京)
New National Theatre, Tokyo (NNTT) (Tokyo, Japan)

compagnia di balletto: National Ballet of Japan (新国立劇場バレエ団)

Nikiya: ONO Ayako (小野絢子)
Solor: Вадим Мунтагиров / Vadim MUNTAGIROV (The Royal Ballet, Coventgarden)
Gamzatti: YONEZAWA Yui (米沢唯)
Bronze Idol: YAHATA Akimitsu (八幡顕光)

Music: Leon MINKUS
Music Arranged by: John LANCHBERY
Choreography: Marius PETIPA
Production: MAKI Asami (牧阿佐美)

orchestra: Tokyo Symphony Orchestra (東京交響楽団)
direttore: Олексій Баклан/ Alexei BAKLAN (指揮:アレクセイ=バクラン)

新国立劇場バレエ団は、2月17日から2月22日までに‘la Bayadère’を計4公演、新国立劇場で上演する。

この評は、二回目2月19日の公演に対するものである。

着席位置はかなり前方やや下手側。観客の入りはほぼ満席である。学校団体鑑賞があり女子中学生が多く鑑賞していたが、物音一つ立てず(夢中になったいか寝ていたかはともかく)鑑賞態度は非常に良好であった。きっと大部分はバレエの魅力を理解して帰途についたかと思われる。その他の客も、反応は平日マチネでもありシャイであったが、極めて良好だった。

まずは、あきらにゃんが贔屓にしている米沢唯ちゃんから♪

唯ちゃんはお嬢様顔だし、優しそうな顔をしているし、どう考えてもいい子にしか見えないし、悪い事なんて一切しません!って感じであるはずなのですけど・・・。

実は、唯ちゃん、カマトトぶっていただけだったらしい♪実に恐ろしいガムザッティである。気品あるお嬢様がその方面に走り出すと、じつに怖い。ソロルをみごと略奪して、第一幕の最後、唯ちゃんは勝ち誇った表情をしている。

第二幕はガムザッティが中心人物となり、唯ちゃんの見せ場が多い。いつも通り、唯ちゃんは盤石な出来である。リフトされても全くぶれないし、静止技も綺麗に決まっている。

ニキヤのソロの場面で、ソロルは私のものよ♪とニキヤに見せつける唯ちゃんの表情は最高の出来で、むひゃむひゃな気分になってくる。獲物を狙う蛇のような唯ちゃんの視線にドキッとしたり・・・。あんな感じで狙われたら、どうしよう・・・♪♪

大僧正役のマイレーン=トレウバエフは、ロシア人ならではの顔立ちを上手く活かして、嫉妬に燃える表情を的確に表す。

寺田亜沙子さんの「つぼの踊り」は、視線の使い方がとても可愛い!子役の二人の踊りも素晴らしい。

主役ニキヤ役の小野絢子さんは、第三幕が圧巻である。第三幕になってから技術的にもキレが出てきて完成度も高く、悲しみの表現は全幕通して万全であり、あれ以上のレベルのニキヤは、世界的レベルでも味わうのは難しいだろう!Brava!!

ソロル役の、ヴァディム=ムンタギロフは実に美しく、完成度高く踊る。「眠り」の時と同様に、ゲストとは思えないほど馴染んでいる。ノーブルな雰囲気は彼ならではのもので、金の力でコヴェントガーデンから引き抜くべきだ♪純ダンス的な美しさは惹きつけられるが、どう考えても王子様♪ソロルって戦士の設定だったっけ?の感じとはなる。まあ、戦士らしさが欲しかったら、ワイルドなダンサーをパリ国立歌劇場辺りから呼べよの話しになってしまうだろう。そもそも、ソロルは戦士でなく、王子様の設定であっても全く差し支えないのだとも思わせる。

群舞は、特に第三幕で、本当に素晴らしいものを見せてくれる!。あの坂を降りてくるシーンは、誰か一人でも緊張感が解けて場面を見失うと、致命傷となるし、時間的長さを含めると、群舞にとって最も難しいシーンの一つだろうなと思うが、時間的にも空間的にもキチッと合って精度が高く、美しく踊れている。もちろん、そのような技術的な精度だけではなく、その他の面でどのように言語化するべきかわからないのだけれど、新国立劇場バレエ団全体のレベルが高いのだなと思わせる。

指揮のバクランは管弦楽を巧みに導き、東京交響楽団は完成度の高い出来でこれに応える。東フィルの楽団員とは技術的レベルはもちろんのこと、士気が違うのだろう。もちろん、東京交響楽団の方が圧倒的に上だ。管楽は全般的にしっかり鳴らすし、弦楽ソロの完成度も高い。ミューザから離れて、このまま座付きオケになって欲しい。バレエは総合芸術、東フィルのように管弦楽が「義務で伴奏しに来た」ようでは困る。管弦楽は「伴奏」であってはならない。本気を出してくれないと、バレエは成立しない。

全体的にソリストもコールドも管弦楽も、士気の高さを感じさせる出来で、非常に高いレベルの舞台芸術を実現させた。たった四公演であるのが残念である。ソワレ、週末公演と比べると、平日マチネであり観客はおとなしめではあるが、それぞれの観客に感銘を与えることが出来た公演と確信している。