2015年2月14日 土曜日
Saturday 14th February 2015
紀尾井ホール (東京)
Kioi Hall (Tokyo, Japan)
曲目:
Johann Sebastian Bach: Variazioni Goldberg BWV.988 (ゴルドベルク変奏曲)
(arranged for strings by Дмитрий Ситковецкий)
(休憩)
Пётр Ильич Чайковский / Pyotr Ilyich Tchaikovsky: Serenata per archi op.48 (弦楽セレナーデ)
violino: Дмитрий Ситковецкий / Dmitry Sitkovetsky /ドミトリー=シトコヴェツキー
orchestra: Kioi Sinfonietta Tokyo(紀尾井シンフォニエッタ東京)
direttore: Дмитрий Ситковецкий / Dmitry Sitkovetsky /ドミトリー=シトコヴェツキー
紀尾井シンフォニエッタ東京(KST)は、ドミトリー=シトコヴェツキーをソリスト兼指揮者に迎えて、2015年2月13日・14日に東京-紀尾井ホールで、第98回定期演奏会を開催した。この評は、第二日目の公演に対してのものである。
管弦楽配置は、舞台下手側から、第一ヴァイオリン→ヴィオラ→ヴァイオリン-チェロ→第二ヴァイオリンの左右対向配置で、コントラバスはチェロの後方につく。ゴルドベルク変奏曲はチェンバロがあり、上手側後方の位置につく。
着席位置は一階正面後方僅かに上手側、チケットは完売している。観客の鑑賞態度は、ゴルドベルク変奏曲の冒頭のみ鈴の音が目立ったが、他は概ね良好であり、二曲目の弦楽セレナーデは、紀尾井シンフォニエッタを私が聴き始めて以来の極めて良好なものであった。
ゴルドベルク変奏曲BWV.988は、冒頭固さが見られたものの、曲の進行とともに完成度を高める。全般的に節度あるパッションで表現する。トゥッティで演奏する場面、首席奏者がメインで他が伴奏する場面、シトコヴェツキーのソロのみが前面に立つ場面、この曲の持つ様々な表情を、その場その場で適切な音色を考え抜いた演奏で、バッハの曲想を活かした、素晴らしい演奏だ。
後半はチャイコフスキーの弦楽セレナーデ。節度を保ち、涙腺ウルウル要素が過剰にならない方向性であるが、シトコヴェツキーの見通しの良い構成力が光る、いい意味で中庸な表現である。派手さはないが、この場面ではこの響きでという必然が理解でき、奏者に示せている。一方でKSTは、シトコヴェツキーの意図を的確に理解し、実際の響きにその精緻さで実現される演奏である。好みはともかく、この路線のスタイルでは完璧な出来であった。
アンコールは、J.S.バッハ作管弦楽組曲第3番BWV1068より第2曲アリア、これも完璧な演奏でシトコヴェツキーとKSTとの相性の良さを実感させるものであった。