2014年10月31日 金曜日/ Friday 31st October 2014
水戸芸術館 (茨城県水戸市)(Mito, Japan)
曲目:
ヴォルフガング=アマデウス=モーツァルト:ピアノ四重奏曲第1番 K.478
コダーイ=ゾルターン:ヴァイオリンとチェロのための二重奏曲 op.7
(休憩)
セザール=フランク:ピアノ五重奏曲
弦楽四重奏:新ダヴィッド同盟 (New "Davidsbundler" )
第一ヴァイオリン:庄司紗矢香(Shoji Sayaka)
第二ヴァイオリン:佐藤俊介(Sato Shunsuke)
ヴィオラ:磯村和英(Isomura Kazuhide)
ピアノ:小菅優 (Kosuge Yu)
ゲスト奏者(guest):
ヴァイオリン-チェロ:クライヴ=グリーンスミス(Clive Greensmith)
新ダヴィッド同盟は、10月31日・11月2日に別のプログラムを一公演ずつ、計2公演、水戸芸術館にて演奏会を開催する。チェロの石坂団十郎は今回は出演せず、代わりにクライヴ=グリーンスミスが担当する。コダーイのヴァイオリンは、佐藤俊介の演奏となる。
着席位置は正面後方上手側、観客の入りは7割程である。左右・舞台背面に空席が目立っている。弦楽五重奏かつ地方での公演となると、庄司紗矢香出演とはいっても集客には苦労するのだろうか。
前半のモーツァルトは、まあ普通の演奏である。水戸芸術館のデッドな響きでは、モーツァルトは厳しいのかもしれない。二曲目のコダーイは素晴らしい。チェロのグリーンスミスがソロの場面でニュアンスを効かせた音色に惹きつけられる。ヴァイオリンが盛り立てるのは当然だけど、あれだけチェロが響くと盛りあがるなあ。
後半はフランクのピアノ五重奏曲。もう言葉を失うほどの名演である。冒頭、小菅優の気だるいピアノが素晴らしい。これに(当時の先鋭的な女流作曲家だったらしい)オーギュスタ=オルメスにフランクが抱いた情欲を表す鋭い弦楽との対比からして、全観客を惹きつける!
曲の進行とともに、「気だるさ」と「情欲」との対比の展開となっていくが、的確に描き分けている演奏だ。ドラマティックな展開である一方で、決して溺れず、パッションを全開に出した一瞬後には、実に気だるい表現になったりする。
もちろん、純音楽的にも庄司紗矢香を筆頭とする奏者は、全てが完璧な技巧で表現する。例えば、庄司紗矢香と佐藤俊介とのユニゾンは完璧に合っており、完璧に合っているからこその厚みのある響きを実現させる。
個々の技術は完璧で、全奏者それぞれがニュアンスに富んだ表現でよく響かせる。あのデッドな響きの水戸芸術館で、あれ程まで響かせるのだ。
一方で個々の技巧だけに決して頼らず、五重奏団としての統一体として完璧な響きを考え抜き実現させる。吉田秀和さんが生きていらっしゃったら、どんなに喜んだだろう。
いつもはそれぞれが別々の活動を繰り広げつつ、二年ぶりに集まったと言うのに、まるでアルカント-カルテットのような世界第一級の常設楽団のように精緻な響きを実現させている。もう手放しで賞賛するのみ。無理して松本から来て良かった!
アンコールは、ドヴォルジャークのピアノ五重奏曲より第三楽章であった。