2014年10月4日 土曜日
彩の国さいたま芸術劇場 (埼玉県与野市)
曲目:
ヨハン=セバスティアン=バッハ:「平均律クラヴィーア曲集第1巻」全曲 BWV846-869
(休憩は第12曲と13曲の間)
ピアノ:ピエール-ロラン=エマール (Pierre-Laurent Aimard)
着席位置は、一階中央上手側である。チケットは公演三日前に完売した。止むを得ない咳が時折ある程度で、聴衆の鑑賞態度は極めて良好である。弱奏部で呼吸音が聞こえてきたには、エマール自身のものなのか?呼吸器疾患の有無を心配してしまう。
当初予定では、休憩無しとされていた。80分クラスの長さの曲だと思っていたら、110分もの長さの曲だ。休憩有りに変更したには妥当な判断だろう。いくら座っているとはいえ、ずっと弾きっぱなしのソロ、演奏終盤で疲労が影響してくるでしょうし。
始まりは、ピアノの自己残響機能を殺して、クリアな音色を印象づける。しかし貧しい響きにはならない。彩の国さいたま芸術劇場ならではの残響の長さが活きてくる。
曲が進むに連れて、演奏様式は変えてくる。静謐な曲に於いては、夾雑物を取り除いたクリアな演奏に思え、バッハが求めていたものを探求していたように思えるが、速いテンポの曲になると、少しエマールのパッションが入り込んでいるような感もある。
技術面では、彩の国さいたま芸術劇場の響きの特性を完璧に捉えており、曖昧さを感じさせるところはない素晴らしいものがある。テンポの揺らぎは控えめで、作為的な不自然さもない。
黒一色の衣装のせいか、修道士のようで、ピレネーの修道院からやって来て演奏したかのようにも感じられる。ある種のストイックさを感じさせるところにエマールの個性があるのだろう。エマールのピアノは初めて聴く感覚だ。
実演奏時間110分と言うこともあり、アンコールはなかった。