2014年10月5日日曜日

第91回 水戸室内管弦楽団 定期演奏会 評

2014年10月5日 土曜日
水戸芸術館 (茨城県水戸市)

曲目:
ヨーゼフ=ハイドン 交響曲第103番「太鼓連打」 Hob.I-103
ヴィトルト=ルトスワフスキ オーボエ・ハープと室内管弦楽のための二重協奏曲
(休憩)
クロード=ドビュッシー:バレエ音楽「おもちゃ箱」

オーボエ:ハインツ=ホリガー (Heinz Holliger)
ハープ:シャンタル=マテュー (Chantal Mathieu)
語り:柳家花緑

管弦楽:水戸室内管弦楽団(MCO)
指揮:ハインツ=ホリガー (Heinz Holliger)

MCOは、ハインツ=ホリガーを指揮者に迎えて、2014年10月4日・5日に水戸で、第91回定期演奏会を開催した。この評は、第二日目の公演に対してのものである。

管弦楽配置は、舞台下手側から、第一ヴァイオリン→第二ヴァイオリン→ヴァイオリン-チェロ→ヴィオラのモダン配置で、コントラバスはチェロの後方につく。木管パートは後方中央、ホルンは後方下手側、その他の金管・ティンパニは後方下手側の位置につく。

なお二曲目のルトスワフスキは、弦楽が下手側から高音→低音の順に半円状に並び、背後にパーカッション、囲まれたスペースの下手側にハープ、上手側にオーボエが入る。

着席位置は正面中央やや後方やや下手寄り、客の入りは9割程であり、チケット完売には至らなかった。観客の鑑賞態度は、概ね極めて良好であったが、飴の包みビニールの音が気になった。

第1曲目、ハイドンはゲネラル-パウゼをかなり長めに取ったり、いきなり音量を変えて驚かしたりと、やや作為的ではある。それでも強奏部の響きは素晴らしく、曲の終盤にクライマックスを持ってくる。

第2曲目のルトスワフスキの協奏曲は、極めて素晴らしい。ホリガーのオーボエは炸裂するし、マテューのハープも鋭い。もちろんパーカッションも弦楽も言うまでもなく、ビシッと決めていて、水戸室内管弦楽団らしい完成度の高い演奏だ。テンポ設定もハイドンとは違い、自然に任せたもので、ルトスワフスキの意図そのままを実現させた感じである。水戸室内管弦楽団の現代音楽、久しぶりに聴いたが、こういった曲目はどんどん取り上げて欲しい。

第3曲目はドビュッシーのバレエ音楽「おもちゃ箱」、管弦楽が繊細に響きをコントロールしており、何もかもが夢の世界を思わせる、極めて傑出した演奏だ。神経を通わせてフランス音楽ならではの色彩感を伴う響き実現し、この響きが夢の世界、「おもちゃ箱」の世界にいざなってくれる。特別な作為を加える事なく、ただただ響きを繊細に産み出し、適度な緊張感を伴いつつも、弦管打全ての響きを心を一つにして、ドビュッシーが考えた情景を実現させる。

何年か前の、小澤征爾指揮による「マ-メール-ロワ」の名演を彷彿とさせるもので、言葉が出ない最高の演奏である。アンコールはない。とにかく幸せな気持ちに満たされる演奏会であった。