2013年12月21日土曜日

ロレンツォ=ギエルミ オルガン-リサイタル 評

2013年12月21日 土曜日
ふれあい福寿会館 サラマンカホール (岐阜県岐阜市)

曲目:
アルノルト=ブルンクホルスト 前奏曲
ヨハン=パッヘルベル シャコンヌ
ヨハン=パッヘルベル 「高き天より、我は来たれり」
ゲオルグ=フリードリヒ=ヘンデル 「アダージョとフーガ」
ゲオルグ=フリードリヒ=ヘンデル 「メサイア」HWV56より「なんと美しい事か、平和の福音を伝える者の足は」(※)
ヨハン=セバスティアン=バッハ 「アンナ=マグダレーナ=バッハの音楽帳」より「御身がそばにあるのならば」 BWV508 (※)
ヨハン=セバスティアン=バッハ 「アンナ=マグダレーナ=バッハの音楽帳」より「あなたの心をくださるのなら」 BWV518 (※)
ヨハン=セバスティアン=バッハ 「コーヒー-カンタータ」 BWV211より「ああ!コーヒーってとってもおいしい」 (※)
(休憩)
ヨハン=セバスティアン=バッハ 「前奏曲とフーガ」 BWV539
ヨハン=セバスティアン=バッハ 「イタリア様式によるアリアと変奏」 BWV989
ヨハン=セバスティアン=バッハ 「いざ来たれ、異教徒の救い主よ」 BWV659
ヨハン=セバスティアン=バッハ 「目覚めよ、と呼ぶ声あり」 BWV645
ヨハン=セバスティアン=バッハ 「甘き喜びのうちに」 BWV751
ヨハン=セバスティアン=バッハ 「トッカータ、アダージョとフーガ」 BWV564

ソプラノ:日比野景 (※のみ)
オルガン:ロレンツォ=ギエルミ

着席位置は、一階後方上手側である。チケットは完売している。聴衆の鑑賞態度は、特に前半はあまり良いとは言えず、遅刻者の比率が多く、かつ次の曲が始まるまで着席せず、また飴の包装を破る音や話し声まである始末だった。

前半部の後半に登場した日比野景のソプラノは、音量的にはサラマンカホールを十分に響かせていたが、一本調子のところがあり、表現の多様さは見られないように思える。

さて、このリサイタルで用いたサラマンカホールのオルガンは、岐阜県加茂郡白川町に本拠を置いた辻宏(1933-2005)により建造されたものである。

辻宏は、「サラマンカホール」の名の由来になった、スペイン国サラマンカ大聖堂のオルガンを修復した実績があることで高名であり、古典的建造法によるオルガンの建造・修復のスペシャリストとして国内外で活躍してきたが、2005年の逝去に伴い、辻オルガン工房は2008年に閉鎖された。

サラマンカホールのオルガンは、46ストップ、パイプ数2997本であり、コンサートホールにあるオルガンとしては小ぶりではあるが、古典的建造法により建造されたこれとしては、日本では唯一であろうか。古典的建造法により建造されたオルガンであるからなのだろうか、やや鋭い高音部の音色も適切な音色で響いてくる。モダン指向のカール=シュッケ社のオルガンのように耳触りな響きは全くない。

ロレンツォ=ギエルミのオルガンは、テンポは中庸で基本的には作曲者の意図を伝える演奏であり、曲想上眠くなる曲もあるが、多様な音色を的確に用いている。

特に最後の、「トッカータ、アダージョとフーガ」に於けるフーガは、密かな興奮から生じる霊感を感じさせる素晴らしい演奏である。

アンコールは、J.S.バッハの「コンチェルト」BWV596から第四楽章と、作者不詳の「パストラーレ」であった。


追記:サラマンカホールに於けるオルガン建造の経緯は、下記が詳しい。
https://salamanca.gifu-fureai.jp/information/organ.html