2013年12月14日土曜日

ラファウ=ブレハッチ ピアノ-リサイタル 評

2013年12月14日 土曜日
東京オペラシティ タケミツメモリアル (東京)

曲目:
ヴォルフガング=アマデウス=モーツァルト ピアノ-ソナタ 第9番 K.311
ルートヴィッヒ=ファン=ベートーフェン ピアノ-ソナタ 第7番 op.10-3
(休憩)
フレデリック=ショパン 夜想曲 第10番 op.32-2
フレデリック=ショパン ポロネーズ 第3番「軍隊」 op.40-1
フレデリック=ショパン ポロネーズ 第4番 op.40-2
フレデリック=ショパン 三つのマズルカ op.63
フレデリック=ショパン スケルツォ 第3番 op.69

ピアノ:ラファウ=ブレハッチ

ラファウ=ブレハッチは、12月13日から17日に掛けて来日ツアーを行い、武蔵野(東京都)、東京、横浜、与野(埼玉県)にてリサイタルを行う。12月13日は武蔵野市民文化会館、14日は東京オペラシティ タケミツメモリアル、16日は横浜みなとみらいホール、17日は彩の国さいたま芸術劇場を会場とする。東京オペラシティのような巨大なホールよりは、600名強の規模のホールである彩の国さいたま芸術劇場での演奏が適切であるとは考えたが、土日開催の都合によりタケミツメモリアルでの公演を選択した。よってこの評は二日目の東京オペラシティ タケミツメモリアルでの公演に対するものである。

着席位置は、一階中央上手側である。チケットは完売している。聴衆の鑑賞態度は良好であった。

前半のモーツァルト・ベートーフェンは楽譜通りの演奏で、ブレハッチ独自の味付けは淡白である。速めの楽章よりは、案外緩徐楽章の方が面白い。ベートーフェンについては、テンポは遅めである。響きは軽めであり、軽快であると言えばその通りであるが、しかし音が遠くに感じ臨場感が感じられない。タケミツメモリアルはやはり大き過ぎるのであろうか?いくら音響のよいタケミツメモリアルでも、18列目では難しいのか。彩の国さいたま芸術劇場のような604席しかないホールの方が、断然素晴らしい成果を上げただろう。

一方、後半のショパンでは表現の幅が増す。ピアノが近くにあるように聴こえ始め、適切な音圧で迫ってくる。テンポの扱いは自由自在となる。その一方で、感情に溺れず、放逸を排除した、貴族的とも言うべきブレハッチ独自の様式の枠を構成しながらも、パッションはよく込められてくる。特にこのようなブレハッチの個性が最も行き渡っているのは、ポロネーズ第3番「軍隊」と、アンコール一曲目の前奏曲第20番である。この二曲が私にとっては特に好みの演奏だ。

アンコールは三曲あり、いずれもショパンの作で、「24の前奏曲」第20番、ワルツop34-2、「24の前奏曲」第4番である。「24の前奏曲」第20番で見せたピアニッシモは、絶品であった。