新国立劇場バレエ団「ニューイヤー バレエ」
上演演目:「レ シルフィード」「火の鳥」「ペトルーシュカ」
2019年1月12日から14日(計3公演)新国立劇場大劇場。三公演とも臨席した。
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バレエリュスの三作品を上演した。「レ シルフィード」「ペトルーシュカ」は、ミハイル フォーキンの振り付け、「火の鳥」のみ中村恩恵による読み替え新制作。「ペトルーシュカ」の舞台装置は、バーミンガム ロイヤル バレエ団から借りたものである。
「ニューイヤー」を銘打つ割には、最後は亡霊で終わる。オメデタイ気分で来た方は・・・。
本来「トリプルビル」で売り込むべきところなのでしょうけど、「ニューイヤー バレエ」と商業的にタイトルつけないと、客が来ないっぽいからそうしているらしい。なお新国立劇場バレエ団は「ヴァレンタイン バレエ」と称して恋人同士を引き寄せておきながら、オディールのパドゥドゥを披露するという、鬼畜な演目を用意した実績があり、リア充に対する企画制作者の怨念が垣間見える(笑)。
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「レ シルフィード」は細田千晶さんの浮遊感に注目させられた。群舞は13・14日公演が素晴らしかったか。木村優里さんの長い手足を活かした華やかさがいい。他方、小野絢子さんも不利な体形を全く感じさせずに繊細に形作った。
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「火の鳥」は、ダンサーの実演面では秀逸であり、全てのダンサーが中村恩恵の意図を十二分に表現したものであった。
「娘」役は、米沢唯ちゃん・五月女遥さん、いずれも男性ダンサーに与えられる速さに適応していた。一回本番を通した後で観劇した五月女遥さんは、小柄な体格から与えられる名状しがたい印象が感じられた。14日公演の米沢唯ちゃんは、五月女さんが与えた印象の他に、さらなる舞踊自体の完成度の高さ、不安感や中性的な雰囲気の表現、王子役から羽を取り上げるために誘惑する箇所での、ワルイ子ちゃんの要素と恋してるかもの要素のどちらとも取れそうな、あるいは両方ありそうな不思議な表情があり、終盤部は特に心を打ち震わせるものであった。
他、王子役井沢駿さんと反乱軍リーダー役の福岡雄大さんとの対峙、火の鳥役の演技、黒衣、反乱軍に至るまで、士気の高さを感じさせるものである。ダンサーの実演面では、絶賛に値するものである。
しかしながら、後半にある性暴力シーン(内容は明らかに集団強姦→(プログラム記載によると)妊娠)は断じて容認できないものである。そのシーンの後の展開を考慮しても、雰囲気を単に暗澹とさせるだけで、幅広い解釈を観客に委ねながら、実は観客の想像力を限定して阻害した。ストーリー構成面を考慮しても性暴力シーンを入れた必然性は極めて乏しい。
性暴力シーンは、絶対的禁忌とまでは行かずとも、少なくとも極めて慎重な取り扱いを要する。今回、原作から敢えて改変した読み替え(歌劇「ムツェンスク郡のマクベス夫人」を上演するのとは訳が違う)の過程で、ストーリー構成の検討はなされたのか、他に手段はなかったのか、厳格な検討が実施されたとは思えない。振付者の意図を実現するダンサーには、振付家の奴隷ではなく、当然人格と言うものがあり、比較的固定されたメンバーで構成される座付きバレエ団での性暴力シーンは、ダンサーの人心の荒廃につながるだろう。1月14日の千秋楽公演が限界なのではないか。
実演が素晴らしかったから再演するべきとの考えには、強く反対する。これ以上の上演は、観客の人心の荒廃をも齎す。
前述した事情を踏まえ、振付者やダンサーの見解とは全く別の、現代社会を反映した外部の目により厳格に判断されなければならない。この内容では、封印するしかないというのが私の考えである。
この「火の鳥」は封印するべきだが、この振り付けの失敗に関わらず、当然バレエ団として新作は発表していくべきである。
客席から飛ばさない照明、反乱軍が女装して王子を誘惑しようとする「ワルイ子ちゃんになっちゃうよ」の場面等、素晴らしい箇所もあったのだから、中村恩恵さんの次作に期待をすればいいだけのことだ。中村恩恵さんの作品を再演するのであれば、「ベートーヴェン ソナタ」を本島美和さんの引退前に行うべきであろう。
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「ペトルーシュカ」は、特に核となる、人形ペトルーシュカ役奥村康祐さん、人形バレリーナ役池田理沙子さん、共に完璧であり名演であった。奥村康祐さんはいかにも弱弱しい脱力感や悲哀を見事に表現し、最後の亡霊の場面も圧巻であった。池田理沙子さんはハマり役で、人形に求められているカワイさは生得のものであり、人形役に求められる特殊技能を完璧に会得し、コミカルな仕草で魅了させた。
その他、謝肉祭の場面での群衆たちの描写を、バレエ団の総力を挙げて実現した。福田圭吾さんの女装趣味(「火の鳥」での「これから「ワルイ子ちゃん」になっちゃうよ」のシーンと、「ペトルーシュカ」での「仮装の乳母」のシーン)は本当に楽しませてもらえた。悪魔の仮装役速水渉悟さんの跳躍を始め、福田圭吾さん登場後の男性ダンサーが集結し跳躍する場面は圧巻であり、謝肉祭終盤の場面を盛り上げた。
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実質トリプルビルの「ニューイヤー バレエ」は素晴らしい実演で終わった。35分規模の作品を三つ上演する形態であったが、今後も埋もれている一幕物の作品を掘り起こしていってほしい。ヒナステラ作曲の「エスタンシア」辺り、見てみたいと思っている。
2019年1月17日木曜日
新国立劇場バレエ団プリンシパル 米沢唯さん 2019年出演記録
新国立劇場バレエ団プリンシパル 米沢唯さん 2019年出演記録
(2019年12月31日現在)
【注意事項】
・新国立劇場バレエ団プリンシパル 米沢唯さん の2019年出演記録(実績)
・特に記載がない公演は、新国立劇場バレエ団の公演、場所は新国立劇場、主催者は新国立劇場運営財団。
・情報の利用は、各自ご確認の上、自己責任で行われたい。
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2019年1月12日(土) 「ニューイヤー バレエ」(「火の鳥」娘 Maiden)
2019年1月14日(月・祝) 「ニューイヤー バレエ」(「火の鳥」娘 Maiden)
2019年1月25日(金) 「バレエダンサー吉田 都からのメッセージ』中 「We Love Piano」・「ドン キホーテ」抜粋より(キテリア役)
文京シビックホール(東京)
主催:石神井バレエ・アカデミー
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2019年3月2日(土) 「ラ バヤデール」ガムザッティ
2019年3月3日(日) 「ラ バヤデール」 ニキヤ
2019年3月9日(土)夜公演 「ラ バヤデール」ガムザッティ
2019年3月10日(日) 「ラ バヤデール」 ニキヤ
2019年3月29日(金) 「Dance to the Future 2019」中「beyond the limits of...」
2019年3月30日(土)昼公演 「Dance to the Future 2019」中「beyond the limits of...」・「Improvisation 即興」
2019年3月30日(土)夜公演 「Dance to the Future 2019」中「beyond the limits of...」
2019年3月31日(日) 「Dance to the Future 2019」中「beyond the limits of...」・「Improvisation 即興」
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2019年4月27日(土) 「シンデレラ」シンデレラ
2019年5月3日(金) 「シンデレラ」シンデレラ
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2019年6月16日(日) 「アラジン」プリンセス
2019年6月23日(日) 「アラジン」プリンセス
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2019年7月27日(土)午前公演 子ども「白鳥の湖」オデット/オディール
2019年7月28日(日)午後公演 子ども「白鳥の湖」オデット/オディール
2019年7月30日(火)午前公演 子ども「白鳥の湖」オデット/オディール
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2019年8月3日(土) バレエ アステラス2019 「ドン キホーテ」第三幕より キテリア
2019年8月4日(日) バレエ アステラス2019 「ドン キホーテ」第三幕より キテリア
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2019年8月7日(水) 「『NHKバレエの饗宴』特別企画 吉田都引退公演 Last Dance」 誕生日の贈り物 -Birthday Offering-・「ドン・キホーテ」グラン パ ド ドゥ
2019年8月8日(木) 「『NHKバレエの饗宴』特別企画 吉田都引退公演 Last Dance」誕生日の贈り物 -Birthday Offering-・「ドン・キホーテ」グラン パ ド ドゥ
新国立劇場大劇場
主催:日本放送協会
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2019年8月16日(金) 大和シティバレエ夏季公演 ‘Four to Four’・’accordance’
大和市文化創造拠点シリウス(神奈川県大和市)
主催:佐々木三夏バレエアカデミー
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2019年9月6日(金) Iwaki Ballet Company 「Ballet Gala 2019」「パキータ」より
新宿区立新宿文化センター(東京)
主催:Iwaki Ballet Company
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2019年10月20日(日)昼公演 「ロメオとジュリエッタ」ジュリエッタ
2019年10月27日(日) 「ロメオとジュリエッタ」ジュリエッタ
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2019年11月10日(日)「くるみ割り人形」クララ
札幌文化芸術劇場 hitaru (札幌市)
主催:札幌市芸術文化財団
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2019年11月30日(土) 「ベートーヴェン ソナタ」ジュリエッタ
2019年12月1日(日) 「ベートーヴェン ソナタ」ジュリエッタ
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2019年12月14日(土)昼公演 「くるみ割り人形」クララ【確定】
2019年12月15日(日)夜公演 「くるみ割り人形」クララ【確定】
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(2019年12月31日現在)
【注意事項】
・新国立劇場バレエ団プリンシパル 米沢唯さん の2019年出演記録(実績)
・特に記載がない公演は、新国立劇場バレエ団の公演、場所は新国立劇場、主催者は新国立劇場運営財団。
・情報の利用は、各自ご確認の上、自己責任で行われたい。
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2019年1月12日(土) 「ニューイヤー バレエ」(「火の鳥」娘 Maiden)
2019年1月14日(月・祝) 「ニューイヤー バレエ」(「火の鳥」娘 Maiden)
2019年1月25日(金) 「バレエダンサー吉田 都からのメッセージ』中 「We Love Piano」・「ドン キホーテ」抜粋より(キテリア役)
文京シビックホール(東京)
主催:石神井バレエ・アカデミー
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2019年3月2日(土) 「ラ バヤデール」ガムザッティ
2019年3月3日(日) 「ラ バヤデール」 ニキヤ
2019年3月9日(土)夜公演 「ラ バヤデール」ガムザッティ
2019年3月10日(日) 「ラ バヤデール」 ニキヤ
2019年3月29日(金) 「Dance to the Future 2019」中「beyond the limits of...」
2019年3月30日(土)昼公演 「Dance to the Future 2019」中「beyond the limits of...」・「Improvisation 即興」
2019年3月30日(土)夜公演 「Dance to the Future 2019」中「beyond the limits of...」
2019年3月31日(日) 「Dance to the Future 2019」中「beyond the limits of...」・「Improvisation 即興」
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2019年4月27日(土) 「シンデレラ」シンデレラ
2019年5月3日(金) 「シンデレラ」シンデレラ
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2019年6月16日(日) 「アラジン」プリンセス
2019年6月23日(日) 「アラジン」プリンセス
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2019年7月27日(土)午前公演 子ども「白鳥の湖」オデット/オディール
2019年7月28日(日)午後公演 子ども「白鳥の湖」オデット/オディール
2019年7月30日(火)午前公演 子ども「白鳥の湖」オデット/オディール
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2019年8月3日(土) バレエ アステラス2019 「ドン キホーテ」第三幕より キテリア
2019年8月4日(日) バレエ アステラス2019 「ドン キホーテ」第三幕より キテリア
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2019年8月7日(水) 「『NHKバレエの饗宴』特別企画 吉田都引退公演 Last Dance」 誕生日の贈り物 -Birthday Offering-・「ドン・キホーテ」グラン パ ド ドゥ
2019年8月8日(木) 「『NHKバレエの饗宴』特別企画 吉田都引退公演 Last Dance」誕生日の贈り物 -Birthday Offering-・「ドン・キホーテ」グラン パ ド ドゥ
新国立劇場大劇場
主催:日本放送協会
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2019年8月16日(金) 大和シティバレエ夏季公演 ‘Four to Four’・’accordance’
大和市文化創造拠点シリウス(神奈川県大和市)
主催:佐々木三夏バレエアカデミー
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2019年9月6日(金) Iwaki Ballet Company 「Ballet Gala 2019」「パキータ」より
新宿区立新宿文化センター(東京)
主催:Iwaki Ballet Company
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2019年10月20日(日)昼公演 「ロメオとジュリエッタ」ジュリエッタ
2019年10月27日(日) 「ロメオとジュリエッタ」ジュリエッタ
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2019年11月10日(日)「くるみ割り人形」クララ
札幌文化芸術劇場 hitaru (札幌市)
主催:札幌市芸術文化財団
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2019年11月30日(土) 「ベートーヴェン ソナタ」ジュリエッタ
2019年12月1日(日) 「ベートーヴェン ソナタ」ジュリエッタ
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2019年12月14日(土)昼公演 「くるみ割り人形」クララ【確定】
2019年12月15日(日)夜公演 「くるみ割り人形」クララ【確定】
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2018年12月24日月曜日
新国立劇場バレエ団プリンシパル 米沢唯さん 2018年出演記録
(2018年12月24日現在。12月22日にて、2018年の全ての公演が終了している)
【注意事項】
・新国立劇場バレエ団プリンシパル 米沢唯さん の2018年出演記録(実績)
・特に記載がない公演は、新国立劇場バレエ団の公演、場所は新国立劇場、主催者は新国立劇場運営財団。
・情報の利用は、各自ご確認の上、自己責任で行われたい。
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米沢唯さんの2018年出演公演数は27(内クローズド公演1)であった。
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2018年1月6日(土) ニュー イヤー バレエ 「チャイコフスキー パ ド ドゥ」(バランシン)・「シンフォニー イン C」第一楽章(バランシン)
2018年1月7日(日) ニュー イヤー バレエ 「チャイコフスキー パ ド ドゥ」(バランシン)・「シンフォニー イン C」第一楽章(バランシン)
2018年1月8日(月・祝) ニュー イヤー バレエ 「チャイコフスキー パ ド ドゥ」(バランシン)・「シンフォニー イン C」第一楽章(バランシン)【新国立劇場20周年記念式典に伴う、劇場関係者のみのクローズド公演】
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2018年2月9日(金) 「ホフマン物語」ジュリエッタ
2018年2月11日(日) 「ホフマン物語」アントニア
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2018年3月11日(日)昼公演 「ライモンダ」ライモンダ
東京文化会館(東京)
主催:日本バレエ協会
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2018年4月30日(月・祝) 「白鳥の湖」オデット/オディール
2018年5月3日(木・祝) 「白鳥の湖」オデット/オディール
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2018年6月9日(土) 「眠れる森の美女」アウロラ姫
2018年6月10日(日) 「眠れる森の美女」フロリナ王女
2018年6月16日(土)夜 「眠れる森の美女」フロリナ王女
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2018年7月21日(土)午前公演 子ども「シンデレラ」シンデレラ
2018年7月23日(月)午後公演 子ども「シンデレラ」シンデレラ
2018年7月28日(土) バレエ アステラス2018 「チャイコフスキー パ ド ドゥ」(バランシン)
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2018年8月10日(金) 大和シティバレエ夏季公演「国を越えて行く物語の旅」中 「Evony_Ivony」(宝満直也 新作)
大和市文化創造拠点シリウス(神奈川県大和市)
主催:佐々木三夏バレエアカデミー
2018年8月25日(土) JAPON dance project 2018「Summer/Night/Dream」ハーミア
2018年8月26日(日) JAPON dance project 2018「Summer/Night/Dream」ハーミア
2018年8月30日(木)2公演 「音楽と舞踊の小品集」「水・空気・光」中「空気」、メシアン:時の終わりのための四重奏曲より第5楽章「イエスの永遠性の賛美」
横浜みなとみらいホール(神奈川県横浜市)
主催:横浜市芸術文化振興財団
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2018年11月2日(金) 「不思議の国のアリス」 アリス
2018年11月4日(金) 「不思議の国のアリス」 アリス
2018年11月8日(金) 「不思議の国のアリス」 アリス
2018年11月10日(土)夜公演 「不思議の国のアリス」 アリス
2018年11月18日(日) 「ガーシュイン モナムール」(深川秀夫) 主演
名古屋市民会館中ホール(名古屋市金山)
主催:テアトル ド バレエカンパニー(旧 塚本洋子バレエスタジオ)
2018年11月25日(日) 「白鳥の湖」オディール
静岡市民文化会館(静岡市)
主催:前田バレエ学苑
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2018年12月16日(日)夜公演 「くるみ割り人形」クララ/金平糖の精
2018年12月22日(土)夜公演 「くるみ割り人形」クララ/金平糖の精
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【注意事項】
・新国立劇場バレエ団プリンシパル 米沢唯さん の2018年出演記録(実績)
・特に記載がない公演は、新国立劇場バレエ団の公演、場所は新国立劇場、主催者は新国立劇場運営財団。
・情報の利用は、各自ご確認の上、自己責任で行われたい。
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米沢唯さんの2018年出演公演数は27(内クローズド公演1)であった。
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2018年1月6日(土) ニュー イヤー バレエ 「チャイコフスキー パ ド ドゥ」(バランシン)・「シンフォニー イン C」第一楽章(バランシン)
2018年1月7日(日) ニュー イヤー バレエ 「チャイコフスキー パ ド ドゥ」(バランシン)・「シンフォニー イン C」第一楽章(バランシン)
2018年1月8日(月・祝) ニュー イヤー バレエ 「チャイコフスキー パ ド ドゥ」(バランシン)・「シンフォニー イン C」第一楽章(バランシン)【新国立劇場20周年記念式典に伴う、劇場関係者のみのクローズド公演】
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2018年2月9日(金) 「ホフマン物語」ジュリエッタ
2018年2月11日(日) 「ホフマン物語」アントニア
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2018年3月11日(日)昼公演 「ライモンダ」ライモンダ
東京文化会館(東京)
主催:日本バレエ協会
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2018年4月30日(月・祝) 「白鳥の湖」オデット/オディール
2018年5月3日(木・祝) 「白鳥の湖」オデット/オディール
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2018年6月9日(土) 「眠れる森の美女」アウロラ姫
2018年6月10日(日) 「眠れる森の美女」フロリナ王女
2018年6月16日(土)夜 「眠れる森の美女」フロリナ王女
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2018年7月21日(土)午前公演 子ども「シンデレラ」シンデレラ
2018年7月23日(月)午後公演 子ども「シンデレラ」シンデレラ
2018年7月28日(土) バレエ アステラス2018 「チャイコフスキー パ ド ドゥ」(バランシン)
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2018年8月10日(金) 大和シティバレエ夏季公演「国を越えて行く物語の旅」中 「Evony_Ivony」(宝満直也 新作)
大和市文化創造拠点シリウス(神奈川県大和市)
主催:佐々木三夏バレエアカデミー
2018年8月25日(土) JAPON dance project 2018「Summer/Night/Dream」ハーミア
2018年8月26日(日) JAPON dance project 2018「Summer/Night/Dream」ハーミア
2018年8月30日(木)2公演 「音楽と舞踊の小品集」「水・空気・光」中「空気」、メシアン:時の終わりのための四重奏曲より第5楽章「イエスの永遠性の賛美」
横浜みなとみらいホール(神奈川県横浜市)
主催:横浜市芸術文化振興財団
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2018年11月2日(金) 「不思議の国のアリス」 アリス
2018年11月4日(金) 「不思議の国のアリス」 アリス
2018年11月8日(金) 「不思議の国のアリス」 アリス
2018年11月10日(土)夜公演 「不思議の国のアリス」 アリス
2018年11月18日(日) 「ガーシュイン モナムール」(深川秀夫) 主演
名古屋市民会館中ホール(名古屋市金山)
主催:テアトル ド バレエカンパニー(旧 塚本洋子バレエスタジオ)
2018年11月25日(日) 「白鳥の湖」オディール
静岡市民文化会館(静岡市)
主催:前田バレエ学苑
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2018年12月16日(日)夜公演 「くるみ割り人形」クララ/金平糖の精
2018年12月22日(土)夜公演 「くるみ割り人形」クララ/金平糖の精
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2018年11月24日土曜日
Bach Collegium Japan Weihnachtsoratorium BWV 248
Bach Collegium Japan
Weihnachtsoratorium BWV 248 (クリスマス オラトリオ)
2018年11月24日
彩の国さいたま芸術劇場 音楽ホール
一言で言うと名演!
ソリスト・合唱・管弦楽・ホールの響き これら四者が完璧に絡み合って繰り広げられた、素晴らしい三時間の旅であった。
冒頭のティンパニからしてニュアンス溢れる連打だ。
私のお気に入りのポイントはいくつかあった。
まずは、第2部の、カウンターテナー Clint van der Linde の長いソロ アリア。今日の彼は全般的に絶好調で無敵の存在だった。歌い手の中で、最も素晴らしい。自然な声のカウンターテナーである。このアリアだけで、Franco Fagioliも真っ青だろ!
次に、第4部、Hana Blažíková とエコーの清水梢とオーボエとが絡み合うアリア、Ja と Nein の木霊にオーボエのフーガは完璧な響きで、バンダの清水梢のエコーがまさに Hana のエコーである。綺麗な声と完璧なオーボエの見事な絡みであった。
私のお気に入り、第三は、第5部、Hana Blažíková と Zachary Wilder が仲良く指揮者のすぐ上手側にいて、奥で Clint van der Linde が歌うシーンだ。完璧としか言いようがない、夢見てるような空間だった。
第2部の、Clint van der Linde のソロをはじめ、涙腺がウルウルくる箇所も随所にある。私にとって、オペラではない音楽会では珍しいことである。
これ以上の「クリスマス オラトリオ」、世界中の古楽系オケの総力を挙げても、これほどまでの見事な演奏は難しいだろうな。
bachcollegiumjapan.org/en/schedule/xm…
Weihnachtsoratorium BWV 248 (クリスマス オラトリオ)
2018年11月24日
彩の国さいたま芸術劇場 音楽ホール
一言で言うと名演!
ソリスト・合唱・管弦楽・ホールの響き これら四者が完璧に絡み合って繰り広げられた、素晴らしい三時間の旅であった。
冒頭のティンパニからしてニュアンス溢れる連打だ。
私のお気に入りのポイントはいくつかあった。
まずは、第2部の、カウンターテナー Clint van der Linde の長いソロ アリア。今日の彼は全般的に絶好調で無敵の存在だった。歌い手の中で、最も素晴らしい。自然な声のカウンターテナーである。このアリアだけで、Franco Fagioliも真っ青だろ!
次に、第4部、Hana Blažíková とエコーの清水梢とオーボエとが絡み合うアリア、Ja と Nein の木霊にオーボエのフーガは完璧な響きで、バンダの清水梢のエコーがまさに Hana のエコーである。綺麗な声と完璧なオーボエの見事な絡みであった。
私のお気に入り、第三は、第5部、Hana Blažíková と Zachary Wilder が仲良く指揮者のすぐ上手側にいて、奥で Clint van der Linde が歌うシーンだ。完璧としか言いようがない、夢見てるような空間だった。
第2部の、Clint van der Linde のソロをはじめ、涙腺がウルウルくる箇所も随所にある。私にとって、オペラではない音楽会では珍しいことである。
これ以上の「クリスマス オラトリオ」、世界中の古楽系オケの総力を挙げても、これほどまでの見事な演奏は難しいだろうな。
bachcollegiumjapan.org/en/schedule/xm…
2018年10月8日月曜日
2018年夏休み 歌劇観劇旅行 まとめ
夏休みで臨んだ公演について、下記の通りまとめよう。
劇場ウェブサイトのURLも記録しておく。
2018年9月29日(土)
La bohème 「ラ ボエーム」(Giacomo Puccini 作) チューリッヒ歌劇場
キャスト:Rodolfo 役は Benjamin Bernheim
https://www.opernhaus.ch/en/spielplan/calendar/la_boheme/season_50348/
2018年9月30日(日)マチネ・10月4日(木)
La verità in cimento 「試練の中の真実」 (Antonio Vivaldi 作) チューリッヒ歌劇場
https://www.opernhaus.ch/en/spielplan/calendar/la-verita-in-cimento/season_50348/
2018年9月30日(日)ソワレ
Macbeth 「マクベス」 (Giuseppe Verdi 作) チューリッヒ歌劇場
https://www.opernhaus.ch/en/spielplan/calendar/macbeth/season_50348/
2018年10月1日(月)
Faust 「ファウスト」(Charles Gounod 作) テアトロ レアル(マドリード)
キャストはファーストキャスト
https://www.teatro-real.com/en/season-18-19/opera/faust/
2018年10月2日(火)
Die Gezeichneten 「烙印を押された人たち」 (Franz Schreker 作) チューリッヒ歌劇場
https://www.opernhaus.ch/en/spielplan/calendar/die-gezeichneten/season_50348/
2018年10月5日(金)
Die tote Stadt 「死の都」 (Erich Wolfgang Korngold 作) ハンブルク州立歌劇場
キャスト:Paul 役は Charles Workman
https://www.staatsoper-hamburg.de/en/playing_schedule/play.php?AuffNr=151250
2018年10月3日(水)・6日(土)
Alcina 「アルチーナ」 (Georg Friedrich Händel 作) ハンブルク州立歌劇場
https://www.staatsoper-hamburg.de/en/playing_schedule/play.php?AuffNr=151247
総じて、チューリッヒ歌劇場の公演は高いレベルであった。特に「試練の中の真実」・「マクベス」・「烙印を押された人たち」は、歌い手・演出とも傑出した内容の公演であった。
ハンブルク州立歌劇場の「アルチーナ」も、特に10月6日公演は傑出した内容の公演であった。
ハズレは、「死の都」くらいだろう。9公演に臨み8公演で当たりなのだから、大戦果と言える。
今回の夏休みでは、チューリッヒとハンブルクで相次いで上演される二つのバロックオペラ「試練の中の真実」・「アルチーナ」を第一の軸、チューリッヒ歌劇場でコスキー演出により新制作された「烙印を押された人たち」、初演地の一つであるハンブルク歌劇場で上演される「死の都」、滅多に上演されない二つの20世紀オペラを第二の軸として、日程を組んだ。余った日程で、「ラ ボエーム」・「マクベス」・「ファウスト」を入れた。
バロックオペラは、前述のとおり、チューリッヒ・ハンブルクともに絶大なる成果を挙げた。ただでさえ滅多に上演されたいバロックオペラを聴きに遠くまで行ったかいがあったと言える。
20世紀オペラについては、チューリッヒの「烙印を押された人たち」が絶大なる成果を挙げた一方で、ハンブルクの「死の都」は平凡な結果と終わった。主演歌い手の選定、アンサンブルメンバー(歌劇場付きソリスト歌手)の力量、そのアンサンブルメンバーの選定をする劇場幹部職の力量の差が露わになったと思われる。
チューリッヒ歌劇場では、Rosane役が当初 Julie Fuchs の予定であったが、妊娠のため降板した。しかし、代役の Anna Devin が優れた成果を見せ、Zelim役の Deniz Uzun はアンサンブルメンバーでありながら、優れた主役級の活躍を見せた。チューリッヒ歌劇場に於けるアンサンブルメンバーの高い充実度、歌い手の目利きの高さが伺えた。
下記の歌い手を特に称えたい。(観劇順)
Benjamin Bernheim (Rodolfo, La bohème)
Deniz Uzun (Zelim, La verità in cimento)
Anna Devin (Rosane, La verità in cimento)
Markus Brück (Macbeth, Macbeth)
Tatiana Serjan (Lady Macbeth, Macbeth)
Piotr Beczala (Dr Faust, Faust)
Stéphane Degout (Valentin, Faust)
John Daszak (Alviano Salvago, Die Gezeichneten)
Catherine Naglestad (Carlotta Nardi, Die Gezeichneten)
Agneta Eichenholz (Alcina, Alcina)
Julia Lezhneva (Morgana, Alcina)
Franco Fagioli (Ruggiero, Alcina)
劇場ウェブサイトのURLも記録しておく。
2018年9月29日(土)
La bohème 「ラ ボエーム」(Giacomo Puccini 作) チューリッヒ歌劇場
キャスト:Rodolfo 役は Benjamin Bernheim
https://www.opernhaus.ch/en/spielplan/calendar/la_boheme/season_50348/
2018年9月30日(日)マチネ・10月4日(木)
La verità in cimento 「試練の中の真実」 (Antonio Vivaldi 作) チューリッヒ歌劇場
https://www.opernhaus.ch/en/spielplan/calendar/la-verita-in-cimento/season_50348/
2018年9月30日(日)ソワレ
Macbeth 「マクベス」 (Giuseppe Verdi 作) チューリッヒ歌劇場
https://www.opernhaus.ch/en/spielplan/calendar/macbeth/season_50348/
2018年10月1日(月)
Faust 「ファウスト」(Charles Gounod 作) テアトロ レアル(マドリード)
キャストはファーストキャスト
https://www.teatro-real.com/en/season-18-19/opera/faust/
2018年10月2日(火)
Die Gezeichneten 「烙印を押された人たち」 (Franz Schreker 作) チューリッヒ歌劇場
https://www.opernhaus.ch/en/spielplan/calendar/die-gezeichneten/season_50348/
2018年10月5日(金)
Die tote Stadt 「死の都」 (Erich Wolfgang Korngold 作) ハンブルク州立歌劇場
キャスト:Paul 役は Charles Workman
https://www.staatsoper-hamburg.de/en/playing_schedule/play.php?AuffNr=151250
2018年10月3日(水)・6日(土)
Alcina 「アルチーナ」 (Georg Friedrich Händel 作) ハンブルク州立歌劇場
https://www.staatsoper-hamburg.de/en/playing_schedule/play.php?AuffNr=151247
総じて、チューリッヒ歌劇場の公演は高いレベルであった。特に「試練の中の真実」・「マクベス」・「烙印を押された人たち」は、歌い手・演出とも傑出した内容の公演であった。
ハンブルク州立歌劇場の「アルチーナ」も、特に10月6日公演は傑出した内容の公演であった。
ハズレは、「死の都」くらいだろう。9公演に臨み8公演で当たりなのだから、大戦果と言える。
今回の夏休みでは、チューリッヒとハンブルクで相次いで上演される二つのバロックオペラ「試練の中の真実」・「アルチーナ」を第一の軸、チューリッヒ歌劇場でコスキー演出により新制作された「烙印を押された人たち」、初演地の一つであるハンブルク歌劇場で上演される「死の都」、滅多に上演されない二つの20世紀オペラを第二の軸として、日程を組んだ。余った日程で、「ラ ボエーム」・「マクベス」・「ファウスト」を入れた。
バロックオペラは、前述のとおり、チューリッヒ・ハンブルクともに絶大なる成果を挙げた。ただでさえ滅多に上演されたいバロックオペラを聴きに遠くまで行ったかいがあったと言える。
20世紀オペラについては、チューリッヒの「烙印を押された人たち」が絶大なる成果を挙げた一方で、ハンブルクの「死の都」は平凡な結果と終わった。主演歌い手の選定、アンサンブルメンバー(歌劇場付きソリスト歌手)の力量、そのアンサンブルメンバーの選定をする劇場幹部職の力量の差が露わになったと思われる。
チューリッヒ歌劇場では、Rosane役が当初 Julie Fuchs の予定であったが、妊娠のため降板した。しかし、代役の Anna Devin が優れた成果を見せ、Zelim役の Deniz Uzun はアンサンブルメンバーでありながら、優れた主役級の活躍を見せた。チューリッヒ歌劇場に於けるアンサンブルメンバーの高い充実度、歌い手の目利きの高さが伺えた。
下記の歌い手を特に称えたい。(観劇順)
Benjamin Bernheim (Rodolfo, La bohème)
Deniz Uzun (Zelim, La verità in cimento)
Anna Devin (Rosane, La verità in cimento)
Markus Brück (Macbeth, Macbeth)
Tatiana Serjan (Lady Macbeth, Macbeth)
Piotr Beczala (Dr Faust, Faust)
Stéphane Degout (Valentin, Faust)
John Daszak (Alviano Salvago, Die Gezeichneten)
Catherine Naglestad (Carlotta Nardi, Die Gezeichneten)
Agneta Eichenholz (Alcina, Alcina)
Julia Lezhneva (Morgana, Alcina)
Franco Fagioli (Ruggiero, Alcina)
2018年9月30日日曜日
Opernhaus Zürich ‘Macbeth’ (チューリッヒ歌劇場「マクベス」)感想
全般的に、歌い手に全く穴がなく、主役級だけでない誰もが管弦楽を一歩抜きん出る声量と技量を持ち、管弦楽も冴えまくり、完璧な「マクベス」であった。世界中のどの「一流」歌劇場でも、これほどまでのレベルの「マクベス」は不可能であろう。
マクベス夫妻役が完全に狂っていた。
Lady Macbeth: Tatiana Serjan
このマクベス夫人役が、私にとってはベストだ。圧倒的な声量というだけではない。もうニュアンスとかコントロールとかいう技量など、どうでも良かった。ただただ狂っていた。完全に狂っていた。真の主役は彼女だ!こんな狂ったマクベス夫人が、世界中のどこの歌劇場にいるのだろう。
もう、私のニヤニヤ笑いが止まらない。
Macbeth: Markus Brück
マクベス夫人に狂わされた題名役を傑出したレベルで演じた。彼も完全に狂っていた。
演出は Barrie Kosky 完璧であった。合唱団が反乱の箇所で初めて顔を出したり、舞台袖から管楽を鳴らして絶妙な遠近感を出したり(この管弦楽が、綺麗な弱奏で見事に表現する)する。豆電球のみで舞台空間を区切ったり、奥舞台を十全に用いた点も傑出している。
まさに、音楽面・演出面共に最高の「マクベス」!
私は粗筋の把握以外の何らの予習をせずに、この公演に望んだ。もうこの公演で封印していいだろう。これ以上の出来は、もう望めない。
【以下、劇場発表のキャスト等】
Macbeth
Opera in four acts by Giuseppe Verdi (1813-1901)
Libretto by Francesco Maria Piave with amendments by Andrea Maffei after «The Tragedy of Macbeth» by William Shakespeare
Musical director: Francesco Lanzillotta
Producer: Barrie Kosky
Stage and lighting designer: Klaus Grünberg
Assistant set designer: Anne Kuhn
Costumes: Klaus Bruns
Choir director: Christian Günther
Dramaturgy: Claus Spahn
Macbeth: Markus Brück
Banco: Wenwei Zhang
Lady Macbeth: Tatiana Serjan
Kammerfrau der Lady Macbeth: Justyna Bluj
Macduff: David Junghoon Kim
Malcolm: Leonardo Sanchez
Arzt: Wojciech Rasiak
Diener Macbeths, Mörder Richard Walshe
Philharmonia Zürich
Chor der Oper Zürich
Statistenverein am Opernhaus Zürich
マクベス夫妻役が完全に狂っていた。
Lady Macbeth: Tatiana Serjan
このマクベス夫人役が、私にとってはベストだ。圧倒的な声量というだけではない。もうニュアンスとかコントロールとかいう技量など、どうでも良かった。ただただ狂っていた。完全に狂っていた。真の主役は彼女だ!こんな狂ったマクベス夫人が、世界中のどこの歌劇場にいるのだろう。
もう、私のニヤニヤ笑いが止まらない。
Macbeth: Markus Brück
マクベス夫人に狂わされた題名役を傑出したレベルで演じた。彼も完全に狂っていた。
演出は Barrie Kosky 完璧であった。合唱団が反乱の箇所で初めて顔を出したり、舞台袖から管楽を鳴らして絶妙な遠近感を出したり(この管弦楽が、綺麗な弱奏で見事に表現する)する。豆電球のみで舞台空間を区切ったり、奥舞台を十全に用いた点も傑出している。
まさに、音楽面・演出面共に最高の「マクベス」!
私は粗筋の把握以外の何らの予習をせずに、この公演に望んだ。もうこの公演で封印していいだろう。これ以上の出来は、もう望めない。
【以下、劇場発表のキャスト等】
Macbeth
Opera in four acts by Giuseppe Verdi (1813-1901)
Libretto by Francesco Maria Piave with amendments by Andrea Maffei after «The Tragedy of Macbeth» by William Shakespeare
Musical director: Francesco Lanzillotta
Producer: Barrie Kosky
Stage and lighting designer: Klaus Grünberg
Assistant set designer: Anne Kuhn
Costumes: Klaus Bruns
Choir director: Christian Günther
Dramaturgy: Claus Spahn
Macbeth: Markus Brück
Banco: Wenwei Zhang
Lady Macbeth: Tatiana Serjan
Kammerfrau der Lady Macbeth: Justyna Bluj
Macduff: David Junghoon Kim
Malcolm: Leonardo Sanchez
Arzt: Wojciech Rasiak
Diener Macbeths, Mörder Richard Walshe
Philharmonia Zürich
Chor der Oper Zürich
Statistenverein am Opernhaus Zürich
2018年9月2日日曜日
サイトウ キネン フェスティバル「オーケストラ コンサート Cプログラム」 2018年9月2日 演奏会 感想
サイトウ キネン フェスティバル も今年最後の演奏会。正式には9月7日までの日程でありますが、後は教育プログラムのみです。
今日は「オーケストラ コンサート Cプログラム」。私の嫌いな長野県松本文化会館が会場です。デカ過ぎて、死んだような響きのホールで、サイトウキネンのオケでなければ、まず行きません。
前半は、「音文が恋しい」気持ちでいっぱいです。まだマシな響きになる二階席、tutti 全力前進演奏でないと、音圧が掛からないし、聴衆の心に響きません。
しかし、指揮が出来なくなった(どころか、腰椎圧迫骨折により、今年は松本にすらいない)小澤征爾の降板を受け、「「セイジのために」と急遽来日を快諾」(サイトウ キネン フェスティバル ウェブページ)し、特別出演された Marcus Roberts Trio が、この演奏会の印象を一変させました。
Marcus Roberts Trio の凄い点は、そんな最悪のホールなど物ともせずに、聴衆の心を掴み取るところにあります。
あれだけ振幅が少ないピアノがどうして私の心を惹きつけるのか、理由は全く分からないが、これが事実です。
弱音の綺麗さや、基本的な技量の高さの点では、サイトウ キネン オーケストラの管弦楽も実現されていました。
しかし、観客に与える印象は、圧倒的に Marcus Roberts Trio が勝っております。
後半の Marcus Roberts Trio 単独での演奏、’Tonight’ は文句なしの白眉で、なぜか知りませんが、いつの間にか私の心を興奮させます。’Somewhere’ では弱音の美しさが光りました。
最後の曲目は ‘I Got Rhythm’ です。Marcus Roberts Trio がソリストになった協奏曲の形態となりましたが、Trio のコントラバス奏者、Rodney Jordan のソロは圧巻で、あの弱音の場面で、驚異的な聴衆の集中力を引き出しました。
Marcus Roberts Trio 、音量の振幅はクラシック音楽の比にならないほど小さいのに、どうして名手揃いの最強メンバーで構成されたサイトウキネンオケが足元にも及ばない何かを聴衆にもたらすのでしょう?
霊感でしょうか?
でも、何でも霊感で済ませるのもアレなので、強いて言及するとなると、「引き算の極み」によるものと思います。これ見よがしな余計な作為を排除しつつ、霊感を呼び寄せる。今日は Santa Cecilia が松本で微笑んでくれたのかもしれません。
彼らを招待した小澤征爾総監督に、感謝の演奏会でした。
今日は「オーケストラ コンサート Cプログラム」。私の嫌いな長野県松本文化会館が会場です。デカ過ぎて、死んだような響きのホールで、サイトウキネンのオケでなければ、まず行きません。
前半は、「音文が恋しい」気持ちでいっぱいです。まだマシな響きになる二階席、tutti 全力前進演奏でないと、音圧が掛からないし、聴衆の心に響きません。
しかし、指揮が出来なくなった(どころか、腰椎圧迫骨折により、今年は松本にすらいない)小澤征爾の降板を受け、「「セイジのために」と急遽来日を快諾」(サイトウ キネン フェスティバル ウェブページ)し、特別出演された Marcus Roberts Trio が、この演奏会の印象を一変させました。
Marcus Roberts Trio の凄い点は、そんな最悪のホールなど物ともせずに、聴衆の心を掴み取るところにあります。
あれだけ振幅が少ないピアノがどうして私の心を惹きつけるのか、理由は全く分からないが、これが事実です。
弱音の綺麗さや、基本的な技量の高さの点では、サイトウ キネン オーケストラの管弦楽も実現されていました。
しかし、観客に与える印象は、圧倒的に Marcus Roberts Trio が勝っております。
後半の Marcus Roberts Trio 単独での演奏、’Tonight’ は文句なしの白眉で、なぜか知りませんが、いつの間にか私の心を興奮させます。’Somewhere’ では弱音の美しさが光りました。
最後の曲目は ‘I Got Rhythm’ です。Marcus Roberts Trio がソリストになった協奏曲の形態となりましたが、Trio のコントラバス奏者、Rodney Jordan のソロは圧巻で、あの弱音の場面で、驚異的な聴衆の集中力を引き出しました。
Marcus Roberts Trio 、音量の振幅はクラシック音楽の比にならないほど小さいのに、どうして名手揃いの最強メンバーで構成されたサイトウキネンオケが足元にも及ばない何かを聴衆にもたらすのでしょう?
霊感でしょうか?
でも、何でも霊感で済ませるのもアレなので、強いて言及するとなると、「引き算の極み」によるものと思います。これ見よがしな余計な作為を排除しつつ、霊感を呼び寄せる。今日は Santa Cecilia が松本で微笑んでくれたのかもしれません。
彼らを招待した小澤征爾総監督に、感謝の演奏会でした。
2018年8月26日日曜日
JAPON dance project 2018×新国立劇場バレエ団 Summer/Night/Dream 「夏ノ夜ノ夢」感想
第一幕は、原作に沿ったもの、第二幕はこの公演のメンバーによる独自の解釈が加えられたもの。
実は、第二幕には米沢唯ちゃんは出演していない。カーテンコールの時にシレッと第二幕の衣装で出てきているけど。。
ハーミアは、第一幕、津川さんが唯ちゃんの腕をブランとさせた時に、なんらかの意味で「死」んだのか?
ハーミアが三人で運ばれたのは葬送だろう。
第一幕のラストは、夢の中の「大団円」なのか。パックが裸で出て、ディミートリアスにお面がつけられ、第二幕で唯ちゃんが消えたところに意味があるのだろう。
第二幕では、唯ちゃんの他にもう一人消えている説が濃厚だ。カーテンコールには14人、「記念撮影」は12人。。
米沢唯ちゃんは、クラシックの要素を前面に出した、ちょっとイタズラ好きないい子ちゃん路線を見事に貫徹した。
対照的なエレナ役の津川友利江さん、美味しい役だなあ。ストーカーユリりんの満面の微笑み。「ニッ」ってあの勝ち誇ったような微笑みに大ウケしてしまった。
新国立劇場バレエ団のダンサーたちは変幻自在。いつもと雰囲気が違い、誰が誰だか分からない。。体格の差が、どういうわけか、希薄になる。
萌子ちゃん(いつもの公演にまして可愛かった)が変な子っぷりを二箇所ほどで発揮する。うち一箇所は、第二幕、記念撮影の場から幾何学模様の行進の場への移行の箇所であるが、仕掛けの場面の表情が素晴らしい。
第二幕はよく分からんが、全てを脱ぎ捨てた無防備な姿になってからの、再生の儀式だったのかなあ。
舞台奥方の光に導かれて飛び出したのは、ディミートリアスなのかなあ?そこにはハーミアはいるのかなあ?
希望を感じさせつつ、考えさせられる終盤である。
初日公演と二回目公演とは、下記の通りの差異があった。
1. 冒頭の呼吸の場面は簡略化した。
2. 第二幕、初演時の「君が代」は「シャボン玉飛んだ」に変わった。
第二幕については、ネタバレも考慮したのかな。多分計画的だろうな。
実は、第二幕には米沢唯ちゃんは出演していない。カーテンコールの時にシレッと第二幕の衣装で出てきているけど。。
ハーミアは、第一幕、津川さんが唯ちゃんの腕をブランとさせた時に、なんらかの意味で「死」んだのか?
ハーミアが三人で運ばれたのは葬送だろう。
第一幕のラストは、夢の中の「大団円」なのか。パックが裸で出て、ディミートリアスにお面がつけられ、第二幕で唯ちゃんが消えたところに意味があるのだろう。
第二幕では、唯ちゃんの他にもう一人消えている説が濃厚だ。カーテンコールには14人、「記念撮影」は12人。。
米沢唯ちゃんは、クラシックの要素を前面に出した、ちょっとイタズラ好きないい子ちゃん路線を見事に貫徹した。
対照的なエレナ役の津川友利江さん、美味しい役だなあ。ストーカーユリりんの満面の微笑み。「ニッ」ってあの勝ち誇ったような微笑みに大ウケしてしまった。
新国立劇場バレエ団のダンサーたちは変幻自在。いつもと雰囲気が違い、誰が誰だか分からない。。体格の差が、どういうわけか、希薄になる。
萌子ちゃん(いつもの公演にまして可愛かった)が変な子っぷりを二箇所ほどで発揮する。うち一箇所は、第二幕、記念撮影の場から幾何学模様の行進の場への移行の箇所であるが、仕掛けの場面の表情が素晴らしい。
第二幕はよく分からんが、全てを脱ぎ捨てた無防備な姿になってからの、再生の儀式だったのかなあ。
舞台奥方の光に導かれて飛び出したのは、ディミートリアスなのかなあ?そこにはハーミアはいるのかなあ?
希望を感じさせつつ、考えさせられる終盤である。
初日公演と二回目公演とは、下記の通りの差異があった。
1. 冒頭の呼吸の場面は簡略化した。
2. 第二幕、初演時の「君が代」は「シャボン玉飛んだ」に変わった。
第二幕については、ネタバレも考慮したのかな。多分計画的だろうな。
2018年7月14日土曜日
Noism 「ROMEO & JULIETS」 富山公演 感想
今日は、富山市オーバードホールにて、新潟市に本拠を置く Noism 「ROMEO & JULIETS」「ロメオとジュリエットたち」を観劇しました。
ジュリエットが複数形じゃないか、「たち」とは何だ?と妄想しながらの、富山入りです。。
以下、ネタバレ注意です。
今回は「ラ バヤデール」と比して spac の俳優の比率が高まりました。
第一幕では、セリフが多過ぎと感じられるかもしれません。今回私は、セリフは聴かず、モニター画面も見ず、踊りを中心に見ておりました。
精神病院に読み替えをしたのでしょうか。医師役はまさかの 金森穣 芸術監督。初めて芸術監督の舞台を見ましたが、驚くほどの踊りの完成度です。一方で、戯画的なまでのインチキ医師っぽい雰囲気も見事でした。
Noism2 監督の 山田勇気 さんは、第二幕での、井関佐和子さんとの踊りの場面が見事です。このチャリ場を見事に盛り立て、ユーモラスな雰囲気を出していました。マジメな富山の観客たちは、笑い声立てずに見ており、私が一人で笑ってしまい、恐縮しております。。拍手が出てもいいかも。地域によっては、笑いと拍手が出てもおかしくないですね。
看護師たちは病的で、過剰な胸、過剰な尻を強調する二人の看護師と、井関佐和子さんの そのまんま の体型の看護師とがいました。佐和子さん看護師は、美しいですが、やはり病的です。
「ジュリエットたち」は五人です。身長差が大きい五人で、その個性を活かした五人でした。
今回の富山公演は、唯一の大劇場での公演です。
オケピ迫り を二分割し、客席寄りは舞台面-30cmまで上げ、舞台側は沈む込ませています。いずれも照明装置を置いているが、沈み込ませた側に何を埋め込んでいるのかは不明でした。
第二幕でこれらは明らかになりました。
誰かが死ぬ時、舞台前方からオケピに落ちて、消えるのです。分厚く敷き詰められたクッションが、沈み込ませた舞台側の迫りに仕込まれていたのです。その効果は実に見事です。
オケピ迫りを分割して高さを調整出来るホールは限られます。
これは、三面半舞台を持ち、どんなオペラの演出でも対応可能なオーバードホールだからこそ出来た演出です。新潟市りゅーとぴあ劇場や9月公演の彩の国さいたま芸術劇場 にもオケピはありますが、分割出来るオケピ迫りではないでしょう。静岡芸術劇場にはオケピはありません。
大劇場ならではの演出を楽しめました。
7/21 に、静岡芸術劇場でも楽しみます。
(訂正:りゅーとぴあ劇場にはオケピ迫りは存在し、富山と同様の演出だったとのことです。7月15日に当該箇所を修正しました。
ジュリエットが複数形じゃないか、「たち」とは何だ?と妄想しながらの、富山入りです。。
以下、ネタバレ注意です。
今回は「ラ バヤデール」と比して spac の俳優の比率が高まりました。
第一幕では、セリフが多過ぎと感じられるかもしれません。今回私は、セリフは聴かず、モニター画面も見ず、踊りを中心に見ておりました。
精神病院に読み替えをしたのでしょうか。医師役はまさかの 金森穣 芸術監督。初めて芸術監督の舞台を見ましたが、驚くほどの踊りの完成度です。一方で、戯画的なまでのインチキ医師っぽい雰囲気も見事でした。
Noism2 監督の 山田勇気 さんは、第二幕での、井関佐和子さんとの踊りの場面が見事です。このチャリ場を見事に盛り立て、ユーモラスな雰囲気を出していました。マジメな富山の観客たちは、笑い声立てずに見ており、私が一人で笑ってしまい、恐縮しております。。拍手が出てもいいかも。地域によっては、笑いと拍手が出てもおかしくないですね。
看護師たちは病的で、過剰な胸、過剰な尻を強調する二人の看護師と、井関佐和子さんの そのまんま の体型の看護師とがいました。佐和子さん看護師は、美しいですが、やはり病的です。
「ジュリエットたち」は五人です。身長差が大きい五人で、その個性を活かした五人でした。
今回の富山公演は、唯一の大劇場での公演です。
オケピ迫り を二分割し、客席寄りは舞台面-30cmまで上げ、舞台側は沈む込ませています。いずれも照明装置を置いているが、沈み込ませた側に何を埋め込んでいるのかは不明でした。
第二幕でこれらは明らかになりました。
誰かが死ぬ時、舞台前方からオケピに落ちて、消えるのです。分厚く敷き詰められたクッションが、沈み込ませた舞台側の迫りに仕込まれていたのです。その効果は実に見事です。
オケピ迫りを分割して高さを調整出来るホールは限られます。
これは、三面半舞台を持ち、どんなオペラの演出でも対応可能なオーバードホールだからこそ出来た演出です。新潟市りゅーとぴあ劇場や9月公演の彩の国さいたま芸術劇場 にもオケピはありますが、分割出来るオケピ迫りではないでしょう。静岡芸術劇場にはオケピはありません。
大劇場ならではの演出を楽しめました。
7/21 に、静岡芸術劇場でも楽しみます。
(訂正:りゅーとぴあ劇場にはオケピ迫りは存在し、富山と同様の演出だったとのことです。7月15日に当該箇所を修正しました。
2018年4月22日日曜日
新国立劇場「アイーダ」(2018年) 感想
新国立劇場が五年毎の節目に上演する「アイーダ」が終わった。
「アイーダ」世界初演のデータを示そう。
・1871年12月24日
・エジプト カイロの Khedivial Opera House (1971年焼失)
・劇場客席数:約850。
・政治体制:オスマン帝国、90%程のイスラムと10%ほどのキリスト(コプト)
・対するエチオピア。エチオピア帝国。3分の2のエチオピア正教(キリスト)、他はイスラム。
そんな状況下のカイロで、850席規模の、中小規模の歌劇場での初演であった。
なので、「アイーダ」はもともと精緻なアンサンブルの響きで攻める、中小規模の劇場向けの演目であるということだ。
第一幕冒頭序奏から弱奏での演奏であり、第三幕ではアカペラのようで微かに弦を鳴らしている場面があり、第四幕も裁判の場面で微かにティンパニを鳴らす。まさに中小規模の劇場向けの演目だ。
1814席もの巨大な新国立劇場で上演するべき演目かと聞かれたら、かなり違うだろう。新国立劇場でのゼッフィレッリ演出版は、良くも悪くも、ヴェルディの意図した劇場環境とは違うのだ。壮麗な舞台、アイーダ-トランペット10砲(もともとは6砲)、やはり別物だろう、良くも悪くも。
バレエが出てくるなど「グランド オペラ」の要素や、良くも悪くもゼッフィレッリの演出の壮麗さに、幻惑されるところもあるかとおもうが・・・。
2018年のキャストは、中小規模の劇場での公演の延長線の路線で行けば、アイーダ役以外の歌い手の選定は納得がいく。
しかし、新国立劇場は席によって本当に響きが異なる。今回は三回観劇したが、一階前方では素晴らしい響きの歌い手が、後方や二階正面だと音圧が掛からないし、一階後方や二階正面では「そこまで」は気にならない大声が、一階前方ではキンキンうるさく響く。響き作りは難しい。
どの席にいたかで、評価は大きく異なる。
アイーダ役の Rim Sae-Kyung は、その意味で評価は割れるだろう。私の見解は、彼女だけは戦艦大和級の46cm主砲で攻めて、アンサンブルを壊している。歌い手の人選がアイーダ役だけバランスを崩しているのだ。
Rim Sae-Kyung はNHKホールやメトロポリタン歌劇場のような超巨大劇場でしか、活躍の舞台がないだろうと思った。皮肉な表現で申し訳ないが。
アムネリス役の Ekaterina Semenchuk は、もう少し声量が欲しい箇所が無きにしも非ずだが、第四幕は素晴らしい。涙腺がウルウルする。
しかし、一番の功績者は、新国立劇場合唱団だろう。繊細な弱唱から迫力ある強唱まで、精緻に美しくコントロールされた合唱で、第一幕第二場の場面から感激の余り泣き出しそうになった。
「アイーダ」を、祝祭的な側面で評価することは間違っている。個々の歌い手のスタンドプレーではなく、アンサンブルとして、全体のハーモニーとして如何に精緻な響きを実現させたかによって評価されるべき作品だ。
新国立劇場で言えば中劇場でさえも大き過ぎるだろう。「アイーダ」こそ、三桁規模の中小規模の箱で上演するべき作品だと、思い知らされた。
「アイーダ」世界初演のデータを示そう。
・1871年12月24日
・エジプト カイロの Khedivial Opera House (1971年焼失)
・劇場客席数:約850。
・政治体制:オスマン帝国、90%程のイスラムと10%ほどのキリスト(コプト)
・対するエチオピア。エチオピア帝国。3分の2のエチオピア正教(キリスト)、他はイスラム。
そんな状況下のカイロで、850席規模の、中小規模の歌劇場での初演であった。
なので、「アイーダ」はもともと精緻なアンサンブルの響きで攻める、中小規模の劇場向けの演目であるということだ。
第一幕冒頭序奏から弱奏での演奏であり、第三幕ではアカペラのようで微かに弦を鳴らしている場面があり、第四幕も裁判の場面で微かにティンパニを鳴らす。まさに中小規模の劇場向けの演目だ。
1814席もの巨大な新国立劇場で上演するべき演目かと聞かれたら、かなり違うだろう。新国立劇場でのゼッフィレッリ演出版は、良くも悪くも、ヴェルディの意図した劇場環境とは違うのだ。壮麗な舞台、アイーダ-トランペット10砲(もともとは6砲)、やはり別物だろう、良くも悪くも。
バレエが出てくるなど「グランド オペラ」の要素や、良くも悪くもゼッフィレッリの演出の壮麗さに、幻惑されるところもあるかとおもうが・・・。
2018年のキャストは、中小規模の劇場での公演の延長線の路線で行けば、アイーダ役以外の歌い手の選定は納得がいく。
しかし、新国立劇場は席によって本当に響きが異なる。今回は三回観劇したが、一階前方では素晴らしい響きの歌い手が、後方や二階正面だと音圧が掛からないし、一階後方や二階正面では「そこまで」は気にならない大声が、一階前方ではキンキンうるさく響く。響き作りは難しい。
どの席にいたかで、評価は大きく異なる。
アイーダ役の Rim Sae-Kyung は、その意味で評価は割れるだろう。私の見解は、彼女だけは戦艦大和級の46cm主砲で攻めて、アンサンブルを壊している。歌い手の人選がアイーダ役だけバランスを崩しているのだ。
Rim Sae-Kyung はNHKホールやメトロポリタン歌劇場のような超巨大劇場でしか、活躍の舞台がないだろうと思った。皮肉な表現で申し訳ないが。
アムネリス役の Ekaterina Semenchuk は、もう少し声量が欲しい箇所が無きにしも非ずだが、第四幕は素晴らしい。涙腺がウルウルする。
しかし、一番の功績者は、新国立劇場合唱団だろう。繊細な弱唱から迫力ある強唱まで、精緻に美しくコントロールされた合唱で、第一幕第二場の場面から感激の余り泣き出しそうになった。
「アイーダ」を、祝祭的な側面で評価することは間違っている。個々の歌い手のスタンドプレーではなく、アンサンブルとして、全体のハーモニーとして如何に精緻な響きを実現させたかによって評価されるべき作品だ。
新国立劇場で言えば中劇場でさえも大き過ぎるだろう。「アイーダ」こそ、三桁規模の中小規模の箱で上演するべき作品だと、思い知らされた。
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