2019年10月18日金曜日

‘Das Mädchen mit den Schwefelhölzern’ Ballett Zürich

‘Das Mädchen mit den Schwefelhölzern’
Ballett Zürich
Choreography: Christian Spuck
Music: Helmut Lachenmann
Friday, 18th October 2019

チューリッヒバレエ
「マッチ売りの少女」

改めて前から5番目の席から観劇して、心が打ち震える想い。私のこれまでの舞踊観劇歴の中で、音楽面振付面で最高水準の演目だ。

ドイツ語知らないで何が分かる?
難解な作品だけど理解してるの?
これらの批判は受け入れよう。
それでも、この音楽と舞踊との総合芸術の成果は凄いとは間違いなく言える。

「マッチ売りの少女」役、あの目は、金持ち平土間客への訴えであろうか?
佇まいがまさに マッチ売りの少女 であった。素晴らしいステージプレゼンス。

トップレスで抗議する女性活動家(手で胸を隠してる)の存在感。
デパート放火と思われる映像を背景に、見苦しい鵞鳥のような金持ちたちを燃やして奈落に突き落とす、社会批判の強さだ。

水兵による マッチ売りの少女 に対するセクハラ場面の直後に、肌色ボディスーツ(一見ヌード)を着た長身美女が出てくる。彼女たちは「火」を象徴しているのか?冷たい舞台の上で、彼女らの美しさ故なのか、奇妙にも暖かさを感じる。Christian Spuck の振り付けの素晴らしさだろう。

人間の身体を楽器にしてしまう、Lachenmann の天才ぶり。終盤の笙が出て来る場面の静謐な天国的な世界だけでも、彼の天才ぶりは証明される。

その Lachenmann の現代音楽に大胆にも振り付け、その世界観を視覚面で傑出した水準で示した Christian Spuck の振り付けには驚嘆させられた。

この演目は、単なるバレエの演目ではない。高度な水準のダンサー・歌い手・管弦楽・適切な規模の歌劇場、この四点が融合して傑出した舞台芸術を生み出す。歌劇場の総力が必要だ。

その意味で、この「マッチ売りの少女」は Opernhaus Zürich の歌劇場組織が総力を挙げた作品でもある。この作品を発表したチューリッヒ歌劇場には称賛を惜しまない。