2017年4月15日土曜日

New National Theatre Tokyo, Opera ‘Otello’ (2017) review 新国立劇場 歌劇「オテロ」 感想

2017年4月15日 土曜日
Saturday 15th April 2017
新国立劇場 (東京)
New National Theatre Tokyo (Tokyo, Japan)

演目:
Giuseppe Verdi: Opera ‘Otello’
ジュゼッペ=ヴェルディ 歌劇「オテロ」

Otello: Carlo Ventre
Desdemona: Serena Farnocchia
Iago: Владимир Стоянов / Vladimir Stoyanov
Lodovico: 妻屋秀和 / Tsumaya Hidekazu
Cassio: 与儀巧 / Yogi Takumi
Emilia: 清水華澄 / Shimizu Kasumi
Roderigo: 村上敏明 / Murakami Toshiaki
Montano: 伊藤貴之 / Ito Takayuki
un Araldo: Tang Jun Bo

Coro: New National Theatre Chorus (合唱:新国立劇場合唱団)
Coro dei bambini: Setagaya Junior Chorus (児童合唱:世田谷ジュニア合唱団)

Production: Mario Martone
Set design: Margherita Palli
Costumes design: Ursula Patzak
Lighting design: 川口雅弘 / Kawaguchi Masahiro

orchestra: Tokyo Philharmonic Orchestra (管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽
団)
maestro del Coro: 三澤洋史 / Misawa Hirofumi)
direttore: Paolo Carignani

新国立劇場は、2017年4月9日から22日までの日程で、パオロ=カリニャーニの指揮による歌劇「オテロ」を5公演開催する。この評は2017年4月15日に催された第三回目の公演に対するものである。

着席位置は一階正面ど真ん中である。観客の入りはほぼ満席か。観客の鑑賞態度は、概ね良好であったが、特に前半は、一階席中央はノイズが目立った。

舞台は伝統的なものであり、衣装を含めて前衛的な要素は希薄な、正統的なものだ。50トンもの水を用い、ヴェネツィアの街を再現した舞台は美しい。舞台中央に置かれた寝室は、廻り舞台となっている。オケピット下手側には橋が架けられ、第一幕でのオテロ他の客席側からの登場の場面や、第三幕冒頭での幕をスノコまで上げないシーンで、舞台効果を発揮した。実に素晴らしい舞台装置である。

休憩は、第二幕と第三幕との間で一回だけ設けられた。以下、前半は第一幕・第二幕、後半は第三幕・第四幕を言う。

ソリストの出来について述べる。

題名役 Otello を演じた Carlo Ventre は、第一幕や第三幕冒頭、第三幕の Otello・Cassio・Iagoの三重唱の場面で、ニュアンスに乏しい単調な場面があった難点はあるが、概して声量はあり、第四幕は素晴らしい出来であった。

Desdemona を演じた Serena Farnocchia は、得意とする声域で伸びやかに歌う場面は比較的良いが、低めの声域では声量がなく、声が特別美しい訳でもなかった。それでも何故か第四幕では、一応決めたと言えるか?ソプラノを聴いた実感は、薄かった。

Iago役の Владимир Стоянов / Vladimir Stoyanov は、声量が新国立劇場の巨大さとマッチしていないのが残念である。1000席前後の中小規模の歌劇場であれば、良い方向で変わった結果が得られたかもしれない。第三幕での装飾音を決める場面の出来は、良くなかった。歌で決めるべき場面では確実に決めて欲しい。観客は演劇を観に来たのではなく、音楽を聴きに来ているのだから。

日本人キャストでは、前半で Cassio 役の与儀巧 / Yogi Takumi 、第四幕で Emilia 役の清水華澄 / Shimizu Kasumi 、総督大使役の 妻屋秀和 / Tsumaya Hidekazu は素晴らしい。

総じて、美しい歌声を楽しむ感じではなく、第二幕終盤で Otello 役と Iago 役とで縦の線が乱れるなど、前半部では低調であった。

最も素晴らしかったのは管弦楽の東フィルであった。この「オテロ」では、管弦楽は煽る傾向にあったが、指揮者の要求に的確に応えたと言える。第三幕での総督大使到着の場面での、金管の精緻な演奏は見事であった。