2017年4月22日 土曜日
Saturday 22th April 2017
紀尾井ホール (東京)
Kioi Hall (Tokyo, Japan)
曲目:
И́горь Фёдорович Страви́нский / Igor Stravinsky: Concerto in Re
Johann Sebastian Bach: Concerto per due violini BWV1043
(休憩)
Franz Joseph Haydn: ‘Le sette ultime parole del nostro Redentore in croce’ Hob.XX/1A (十字架上のイエズス=キリストの最後の七つの言葉)
violino 1: Rainer Honeck / ライナー=ホーネック
violino 2: 千々岩英一 / Chijiiwa Eiichi
orchestra: Kioi Hall Chamber Orchestra Tokyo(紀尾井ホール室内管弦楽団)
direttore: Rainer Honeck / ライナー=ホーネック
紀尾井ホール室内管弦楽団(KCO)(旧紀尾井シンフォニエッタ東京(KST))は、ライナー=ホーネック=バラホフスキーをソリスト/指揮者に迎えて、2017年4月21日・22日に東京-紀尾井ホールで、第106回定期演奏会を開催した。旧名称による本拠地での演奏から10ヶ月ぶりの演奏となる。ストラヴィンスキー「ニ調の協奏曲」やハイドン「十字架上のイエズス=キリストの最後の七つの言葉」と言った、滅多に演奏されない曲目を演奏するなど、新名称になって初めての演奏会として意欲的なプログラムとなっている。この評は、第二日目の公演に対してのものである。
管弦楽配置は、舞台下手側から、第一ヴァイオリン→第二ヴァイオリン→ヴァイオリン-チェロ→ヴィオラのモダン配置で、コントラバスはチェロの後方につく。木管パートは後方中央、ホルンは後方下手側、その他の金管後方上手側、ティンパニは最後方中央の位置につく。
着席位置は一階正面後方僅かに上手側、曲目がマイナーであるためかチケットは完売せず、当日券を売り出していたが、9割程の入りはあったか。サボっている定期会員もいた。観客の鑑賞態度は、時折細かいノイズはあったが、概ね良好出会った。最後の曲目の拍手が、指揮者の明確な合図があってから為されれば、なお良かったが。
第一曲目のストラヴィンスキー「ニ調の協奏曲」は、上手側の低弦が印象に残る。ヴィオラのソロらしき箇所が素晴らしく響く。
前半のソリスト(?)アンコールは、ヨーゼフ=ヘルメスベルガー父による第二曲目BWV1043の第三楽章のカデンツァで、これは面白かった。
後半は、ハイドンの「十字架上のイエズス=キリストの最後の七つの言葉」。
まず、この知られていない曲目を取り上げたこと自体が快挙である。この緩徐楽章ばかりの難曲を、奇を衒わず的確な響きで、緊張感に満ちた演奏を繰り広げる。
序奏の強い響きで惹きつけ、その後も弱奏・強奏とも繊細で美しい響きである。管楽の入る箇所での響きの構成も的確である。Rainer Honeck によりよく考えれた構成のもとで、管弦楽にその趣旨が行き渡り、精緻な響きで実現させていく。縦の線がよく合うことが、単なる技術の見せびらかしでなく、シンプルで誤魔化しの効かないこの難曲を活かしていくのに、どれ程貢献しているか!
モダン系による演奏としては、このアプローチは正解であると思える。曲目の性質上、ヴィヴィッド路線でと言う訳にも行かまい。ピリオド系だと、どのようなアプローチになるのだろう?とも思うけど。
この曲を、紀尾井ホールとそも座付きの管弦楽で聴けたのは、幸せな体験であった。音響が優れた中規模ホールで、技倆のある室内管弦楽団でなければ実現出来ない企画を高いレベルで達成した。
大管弦楽は沢山あるクセに、室内管弦楽団がたった一つしかないこの東京で、ハイドンの「十字架上のイエズス=キリストの最後の七つの言葉」を、紀尾井ホールの企画力と、その企画を高いレベルで実現する紀尾井ホール室内管弦楽団の実力により披露した意義は極めて大きい。
名称を変更した後の、初回の定期演奏会を、まずは意義深く達成した演奏会であった。