2017年3月25日土曜日

Schiff András, recital, (25th March 2017), review シフ=アンドラーシュ 与野公演 評

2017年3月25日 土曜日
Saturday 25th March 2017
彩の国さいたま芸術劇場 音楽ホール (埼玉県与野市)
Sainokuni Saitama Arts Theater, Concert Hall (Yono, Saitama, Japan)

曲目:
Wolfgang Amadeus Mozart: Sonata per pianoforte n.17(16) K.570
Ludwig van Beethoven: Sonata per pianoforte n.31 op.110
Franz Joseph Haydn: Sonata per pianoforte Hob. XVI:51
Franz Peter Schubert: Sonata per pianoforte n.20 D.959

pianoforte: Schiff András

マジャールのピアニスト、シフ=アンドラーシュは、2016年3月17日から25日に掛けて日本ツアーを実施し、リサイタルを、いずみホール(大阪市)、神奈川県立音楽堂(横浜市)、東京オペラシティコンサートホール「タケミツメモリアル」(東京)(2公演)、彩の国さいたま芸術劇場(埼玉県与野市)にて、計5公演開催する。理想的な音響となる中小規模ホールでの公演は、いずみホールと彩の国さいたま芸術劇場音楽ホールの二か所だけである。

この評は、日本ツアー千秋楽である3月25日彩の国さいたま芸術劇場 音楽ホールでの公演に対する評である。

着席位置は正面やや後方上手側、チケットは完売している。観客の鑑賞態度は、極めて良好だった。

使用ピアノは、 Bösendorfer MODEL280VC である。ピアノの配置は、通常は上手側に真っ直ぐ向けられているものを、舞台奥側に15度ほど偏心させた。移動用の車輪は奏者に対して踏ん張るようにしてロックされた(通常はピアノの中心に向けてロックされる)。

休憩はなく、あたかも、一曲を一楽章とし、四曲をもって一つの曲にする意図を感じさせた。楽章間はアタッカ風に処理され、曲間も10秒も経過せずに次の曲が始められた。

彩の国さいたま芸術劇場の音楽ホールはやはり素晴らしく、モーツァルトやハイドンについてもマトモに響く。タケミツメモリアルでは、こうはいかなかっただろう。

感想は敢えて短く示そう。

シフの解釈は、引き算の解釈のように思える。これ見よがしのギアチェンジを行うことなく、自然な運びの中で、繊細に考えられた一音一音を奏でていく感じである。

私は、曲の刹那刹那を楽しむようなアプローチで臨んだ。Beethoven op.110 の第二楽章のある場面が、心に響く。

Bösendorfer MODEL280VC は、強奏部でもスタインウェイのような鋭い響きにならないところが、シフの解釈と曲想とに合致している印象を持つ。

機嫌が良かったのか、アンコールは何と7曲である。タケミツメモリアルでも、そのくらいの量のアンコールであったそうだ。シューベルトD.946から第一曲、J.S.バッハの「インヴェンション」1番 BWV772、同8番 BWV779、ベートーヴェン「6つのパガテル」から第6曲 op.126、シューベルトD.946から第三曲、J.S.バッハ パルティータ第四番から第五曲 サラバンド、最後はマジャールの作曲家 バルトーク=ベーラの「マジャールの旋律による三つのロンド」から第一曲であった。