2015年11月22日日曜日

Mito Chamber Orchestra, the 94th Subscription Concert, Toyota performance, review 水戸室内管弦楽団 第94回定期演奏会 豊田公演 評

2015年11月22日 土曜日
Sunday 22nd November 2015
豊田市コンサートホール (愛知県豊田市)
Toyota City Concert Hall (Toyota, Aich, Japan)

曲目:
Franz Joseph Haydn: Sinfonia n.102 Hob.I-102
Wolfgang Amadeus Mozart: Concerto per pianoforte e orchestra n.21 KV467
(休憩)
Wolfgang Amadeus Mozart: Sinfonia n.41 KV551

pianoforte: 児玉桃 / Kodama Momo
orchestra: Mito Chamber Orchestra(水戸室内管弦楽団)
direttore: 広上淳一 / Hirokami Junichi

水戸室内管弦楽団(MCO)は、広上淳一を指揮者に、児玉桃をソリストに迎えて、2015年11月20日・21日に水戸芸術館で、22日に豊田市コンサートホールで、第94回定期演奏会を開催した。この評は、第三日目の豊田市コンサートホールでの公演に対してのものである。ソリストは、当初Menahem Pressler(メナヘム=プレスラー)の予定であったが、病気療養のために変更となった。

管弦楽配置は、舞台下手側から、第一ヴァイオリン→第二ヴァイオリン→ヴァイオリン-チェロ→ヴィオラのモダン配置で、コントラバスはチェロの後方につく。木管パートは後方中央、トランペットとティンパニは後方下手側、ホルンは後方上手側の位置につく。

着席位置は一階正面僅かに後方上手側、観客の入りは、8割強か?岐阜にて同時にバッハ-コレギウム-ジャパンの演奏会があったのは不幸で、チケット完売には至らなかった。観客の鑑賞態度は、概ね良好であったが、ハイドンの最終楽章で長めのパウゼを掛けた箇所で拍手が出てしまった。やっちもうたなあ。

コンサートマスター/ミストレスは、ハイドンは竹澤恭子、KV467は渡辺實和子、KV551は豊嶋泰嗣が担当した。

一曲目のハイドン交響曲第102番は、序盤こそホールのアウェイ感があったものの、いつの間にか初めてであるはずのホールに馴染んでいる。やはり響きが水戸芸術館と違い、美しい。最終楽章で、パウゼを長く取る箇所で拍手が出てしまったので、もう一箇所長くパウゼを取る場面では、昨日の公演よりも短めにしている。

二曲目のモーツァルトピアノ協奏曲第21番KV467からは、一転縦の線をビシッと揃えて始まる。そこから夢見るような時間が始まるが、響きはより美しい。

ソリストの児玉桃のピアノは、自己主張は控えめで管弦楽に溶け込むアプローチを取る。ふっと哀愁を漂わせる演奏で、カデンツァの箇所で加速したテンポをすっと遅くする場面で顕著だ。ここまでは昨日と変わりないが、ホールが変わり、ピアノがよく響き、埋没しがちな昨日の公演と違い、ピアノと管弦楽とのバランスが絶妙である。

特に第二楽章は、ひたすら響きに溺れる。天井を向き恍惚とした表情で美しい響きのシャワーを浴びる。

そこには、ピアノと管弦楽との間の、「何か折り合いをつけた」と言うのとは全く違う、自然な絡み合いがある。ピアノと管弦楽とホールとの、美しい三位一体が実現されている。

児玉桃も本当に気持ち良く弾けたのだろう、アンコールが披露され、ドビュッシーの「亜麻色の髪の乙女」が演奏されて休憩となる。

三曲目のモーツァルト交響曲第41番KV551は、昨日のガチガチに固い、正直聴いていて苦痛な演奏とは打って変わっている。

管弦楽のパッションがホールに美しく響き、その響きが管弦楽と観客のテンションを上げていく。

昨日より柔軟なテンポ設定のように感じられる。ピリオド派の活き活き路線ではないのだが、ホールが広上淳一の意図を実現させていくのだ。

管弦楽が奏でる一音一音が実に美しい。弦楽も、管楽も、伸びやかに心地よく響いてくる。バロック-ティンパニも良く聴こえる。

一つ一つの響きが説得力を持ってくる。そこにモーツァルトがいる。そこに水戸室内管弦楽団の響きがある。

管弦楽の自発性も活きまくり、終盤のホルンの大胆で美しい響きが最後の効果的なアクセントを与え、恍惚とした気持ちで天井を向いて最後の一音を聴く。音が鳴り止む。両側バルコニーからのbravoの声が響く。

大人しい水戸芸術館の観客とは違う反応に続き、熱い拍手が送られる。

初めてのホールなのに、本拠地での公演を圧倒的に上回る内容だ。ホールの響きは重要だ。奏者のパッションを美しく響かせる残響は、西洋古典音楽の命である。

演奏者・観客・ホールが三位一体となって、今日の演奏会を作り上げた。

豊田市コンサートホール、万歳!水戸室内管弦楽団、万歳!