2015年11月10日 火曜日
Tuesday 10th November 2015
松本市音楽文化ホール (長野県松本市)
The Harmony Hall (Matsumoto Municipal Concert Hall) (Matsumoto, Japan)
曲目:
Franz Schubert: Allegro per pianoforte a 4 mani “Lebensstürme” D947 op.144(人生の嵐)
Ludwig van Beethoven: Sonata per pianoforte n. 31 op.110 (Pires)
(休憩)
Ludwig van Beethoven: Sonata per pianoforte n. 30 op.109 (Libeer)
Franz Schubert: Fantasia per pianoforte a quattro mani D940 op.103
pianoforte: Maria João Pires + Julien Libeer
マリア=ジョアウ=ピレシュは、2015年10月から11月に掛けて来日し、多数の演奏会を上演する。アントニオ=メネセスとの共演の他、若手ピアニストの教育事業の一環としての共演もあり、形態は多彩である。松本市音楽文化ホールでの公演は、ジュリアン=リベールとの共演となる。Schubertは四手のためのピアノ曲のため、両人で演奏し、Beethovenはop.110はピレシュ、op.109はリベール単独での演奏となる。
着席位置は後方やや上手側、客席の入りは6割程であった。観客の鑑賞態度は、前半に電子音のノイズ(補聴器?)が小さな音であったものの、持続的に鳴り響いていたのが残念だった。また、演奏内容に比して観客のテンションが低かった。
本日のピアノは、マリア=ジョアウ=ピレシュの出演に関わらず、(ヤマハじゃなくて)スタインウェイである。松本市音楽文化ホールでかなりの確率で使われる、ツヤ消し黒のスタインウェイである。松本市音楽文化ホール、ヤマハのピアノ、なかったっけ?それとも、使用頻度が低くて、状態が悪かったのか?あと、リベール氏も出演するために、ヤマハを使用する義務が免除されたのか?
一曲目のシューベルト D947 から素晴らしい演奏である。松本市音楽文化ホールの長い残響を伴う響きは、序盤で適切に把握される。
Beethoven op.110 は、マリア=ジョアウ=ピレシュによる演奏である。言葉でその素晴らしさを表現するのは難しいが、構成が良く考えられ計算されているのは当たり前として、繊細で上品で、深い響きで魅了される。弱音も含めて緊張感を伴う。単に綺麗な響きという訳ではない、霊感を感じさせるものだ。
ジュリアン=リベール単独で、Beethoven の op.109 最初はクリアな音色で攻めて来たが、次第に曲に没入していく演奏だ。若いのにop.109の難曲をそこまで弾けただけ素晴らしい。さすが、マリア=ジョアウ=ピレシュの生徒だ。
最後の、シューベルトの幻想曲 D940 は、マリア=ジョアウ=ピレシュが高音側の担当だ。どの音も深みはあり、どんなに激しい曲想の箇所でも決して上品さを失わない。低音側のリベールとの相性も完璧である。
Schubert も Beethoven も、曲を深く解釈した演奏であり、どこにもハッタリだとか、これ見よがしの見せ付けの要素は、どこにもない。激しく演奏する場面には、必ずその必然性が感じられる。だからこそ、上品さが保たれ、深みを感じさせる演奏になるのだろう。
アンコールは、クルタークの「シューベルトのへのオマージュ」であった。