2015年9月12日 土曜日
Saturday 12th September 2015
紀尾井ホール (東京)
Kioi Hall (Tokyo, Japan)
曲目:
Ludwig van Beethoven: Musica per “König Stephan” di Kotzebue (ouverture) op.117 (劇音楽「イシュトヴァーン王」序曲)
Пётр Ильич Чайковский / Pyotr Ilyich Tchaikovsky: Concerto per violino e orchestra op.35
(休憩)
Felix Mendelssohn Bartholdy: Sinfonia n.5 op.107
violino: Антон Бараховский / Anton Barakhovsky / アントン=バラホフスキー
orchestra: Kioi Sinfonietta Tokyo(紀尾井シンフォニエッタ東京)
direttore: Takács-Nagy Gábor / タカーチ-ナジ=ガーボル
紀尾井シンフォニエッタ東京(KST)は、タカーチ-ナジ=ガーボルを指揮者に、アントン=バラホフスキーをソリストに迎えて、2015年9月11日・12日に東京-紀尾井ホールで、第101回定期演奏会を開催した。この評は、第二日目の公演に対してのものである。
管弦楽配置は、舞台下手側から、第一ヴァイオリン→第二ヴァイオリン→ヴィオラ→ヴァイオリン-チェロのモダン配置で、コントラバスはチェロの後方につく。木管パートは後方中央、ホルンは後方下手側、その他の金管・ティンパニは後方上手側の位置につく。
着席位置は一階正面後方僅かに上手側、チケットは完売している。観客の鑑賞態度は、基本的には極めて良好だったが、飴の包み紙の音があったり、拍手が早すぎたりした。音が消えた瞬間に拍手をすることが、いわゆるフラブラである事を認識していない人が少数でもいると厳しい。オペラでもバレエでもないのだから、指揮者が合図をしてから拍手はして欲しい。
アントン=バラホフスキーのヴァイオリン-ソロは、大小の揺らぎを上手く活かしている。大きな周期で、あるいは短い時間内でテンポを変えてくるが、違和感は全く感じないもので、チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲を面白いものにさせる。第三楽章冒頭のソロは、バラホフスキーのソロの白眉である。要所で出てくる木管も適切な響きであり、チェロの出番も効果的で、タカーチ-ナジによりよく準備されているのが伺える。
後半はメンデルスゾーンの交響曲第5番「宗教改革」である。タカーチ-ナジは、引いたかと思わせて一気に押し寄せる、起伏のある波のような演奏で攻めるか一方、必要とあれば響きを繊細にコントロールする。KSTも綺麗な弱音で、あるいは豊かなニュアンスを伴って演奏し、タカーチ-ナジの構成力とこれを実現させるKSTとが、がっちり絡み合う相性の良さが結実する見事な演奏だ。
演奏会終了時のアンコールとして、タカーチ-ナジは、エストニアの作曲家 Arvo Pärt (アルヴォ=ペルト)の「フラトレス」を選んだ。2015年9月11日に80歳の誕生日を迎えたばかりの作曲者の作品は、KSTの繊細さを極めた演奏で活かされた。曲は演奏されなければ活かされない。KSTの特質を把握し、80歳になったばかりのタイミングで現代音楽を紹介した、タカーチ-ナジの見識を最後に示し、名演に満たされた演奏会を終えた。