2014年4月12日土曜日

第94回 紀尾井シンフォニエッタ東京 定期演奏会 評

2014年4月12日 土曜日
紀尾井ホール (東京)

曲目:
モーリス=ラヴェル 組曲「マ-メール-ロワ」
モーリス=ラヴェル 「亡き王女のためのパヴァーヌ」
コダーイ=ゾルターン 「ガランタ舞曲」
(休憩)
リヒャルト=シュトラウス 「町人貴族」 op.60 TrV228c

管弦楽:紀尾井シンフォニエッタ東京
ゲスト-コンサートマスター:千々岩英一(パリ管弦楽団副コンサートマスター)
指揮:ペーター=チャバ

紀尾井シンフォニエッタ東京(KST)は、ペーター=チャバを指揮者に迎えて、2014年4月11日・12日に東京-紀尾井ホールで、第94回定期演奏会を開催した。この評は、第二日目の公演に対してのものである。

指揮のペーター=チャバは、マジャール系ではあるがルーマニアで生まれた指揮者である。ゲスト-コンサートマスターの千々岩英一は、パリ管弦楽団の副コンサートマスターである。

管弦楽配置は、舞台下手側から、第一ヴァイオリン→第二ヴァイオリン→ヴァイオリン-チェロ→ヴィオラのモダン配置で、コントラバスはチェロの後方につく。木管パートは後方中央、ホルンは後方下手側、その他の金管・打楽器群は後方上手側の位置につく。なお、「町人貴族」にあっては、第一ヴァイオリン→第二ヴァイオリン→ヴィオラ→ヴァイオリン-チェロの順に配置換えし、第一プルトを半円形にして各パート二人ずつ配置し、その後ろに第二プルトを二人ずつ(計4人)配置している。

着席位置は正面後方中央、観客の入りは8割程か。観客の鑑賞態度は鈴の音が部分的に響く箇所はあったが、KSTの定期演奏会にしては良好の部類に入る。拍手のタイミングが適切である。

前半のラヴェル・コダーイは、弦楽の線が細く音圧が感じられない演奏である。

一番素晴らしいのは木管パートで、池田昭子のオーボエ、中川佳子のフルートはもちろんであるが、「ガランタ舞曲」で見せた鈴木豊人の長いソロには強く弾きつけられる。難波薫のピッコロは、私はもう少し強く鋭い響きが好みであるが、チャバの指示によって溶け込むようは響きになったのか?

ホルンは弱音で下支えする部分は素晴らしいが、「亡き王女のためのパヴァーヌ」冒頭のホルン-ソロはよく響いてはいるものの、生硬な響きでニュアンスが感じられない。松本に住んでいる私としては、ホルンはラデク=バボラークのように出来て当たり前で、彼のような柔らかくニュアンスに富んだ表現で観客の心を惹きつけるべきところである。「亡き王女のためのパヴァーヌ」終了後に一番最初にホルン首席を立たせたのは、納得しがたい。

休憩後の「町人貴族」で、弦楽は数を減らし、ゲスト-コンサートマスター千々岩英一を始め各弦楽パート首席によるソロも多いが、人数が減ったのにも関わらず前半よりも豊かな響きで音圧を感じさせる演奏だ。休憩前の木管の素晴らしさに弦楽が対抗できる状態となり、わざわざパリから千々岩英一を招いた意味がようやく明らかとなる。千々岩英一は、リヒャルト=シュトラウスならではの音色を朗々と掲示して管弦楽全体を導いていく。「町人貴族」では、故意に下手な奏者を演じるところもあるのだろうか、そのような場面は上品なオブラートに包んで演奏しているようにも思える。各弦楽パート首席のソロも素晴らしく、その室内楽的聴きどころを的確に演奏し、千々岩英一が提示したテンションを保持している。管弦楽全体で紀尾井ホールの響きを味方につけた演奏で完成度が高い演奏だ。

アンコールは、「町人貴族」の中から二分ほど抜粋しての演奏であった。