2013年3月9日土曜日

NHK交響楽団 宮崎公演 評

2013年3月9日 土曜日
宮崎県立芸術劇場 (宮崎県宮崎市)

曲目:
コダーイ=ゾルターン ガランタ舞曲
セルゲイ=プロコフィエフ ヴァイオリン協奏曲第2番 op.63
 (休憩)
ピョートル=イリイッチ=チャイコフスキー 交響曲第4番 op.36

ヴァイオリン:ギル=シャハム
管弦楽:NHK交響楽団
指揮:ディエゴ=マルテス

NHK交響楽団は、2013年3月7日から3月11日までにわたり、ディエゴ=マテウスを指揮者に迎え、東京で一公演、九州の三都市(宮崎・大分・福岡)で各一公演、同じ曲目にて演奏会を開催する。NHK交響楽団の定期演奏会としては位置付けられていない。この評は、第二回目、3月9日に開催された宮崎公演に対してのものである。

約二カ月前にチケットを入手したが、娯楽の少ない宮崎であるせいか人気が凄く、少ない選択肢の中から3階バルコニー上手側後方の席とした。響きは申し分ない。宮崎県立芸術劇場は、豊潤な響きと言うよりはややすっきりした印象の響きである。日本の僻地宮崎にこのような良いホールであることは、奇跡としかいいようがない。

ディエゴ=マテウスの演奏を聴いたのは、2012年1月1日、ヴェネツィア-フェニーチェ大劇場での新年演奏会以来二度目である。縦の線をビシっと揃えたチャイコフスキー第5交響曲の印象があり、ANAのマイレージ特典を使用し、宮崎に乗り込んだ。フェニーチェ大劇場での演奏については、2012年1月のタイムラインで投稿済みである。

ガランタ舞曲は普通の出来。

二曲目のプロコフィエフのヴァイオリン協奏曲である。ギム=シャハムのヴァイオリンは弱めであるが、管弦楽と溶け込むように調和しているようで、さりげなく自己主張している。諏訪内晶子のような強く豊潤な響きではなく、パワーがある訳では決してないが、それでも何故かよく聴こえる不思議なソロだ。シャハムはチェロセクションの前に出たり、ヴァイオリン奏者の前に行ったりし、まるで弦楽四重奏でも演奏しているかのように間近で聴きあいながら弾いている。指揮者の立場は??まあ、あまり深く考えなくても良いかと♪管弦楽との調和は完璧で、マテウスの力量が伺える。管弦楽は弱奏がとてもきれいで明瞭な響きだ。ティンパニの弱奏が良いアクセントを与えている。

ソリスト-アンコールは、J.S.バッハの無伴奏パルティータから第3番ガヴォットで、とても完成度の高い素晴らしい演奏だ。ギム=シャハムは、どちらかと言うと700席規模の中規模ホールでリサイタルを行うと、一番の響きで聴ける奏者のような気がする。その点はヒラリー=ハーンと似ている。

休憩後のチャイコフスキー第4交響曲は、作為を入れない、曲を率直に解釈した演奏である。やはり響きがとても明晰できれいに響く演奏である。ミスがないと言えば嘘になるが、縦の線をビシッと合わせるマテウスの意図は強く感じる。気がついて見ると、感情が高ぶる部分でさえも、音の雑さがない。

フェニーチェ大劇場管弦楽団との第5交響曲では、ヴァイオリンと言った高弦が強かったが、今回のN響では低弦が強いのが面白い。チャイコフスキーの演奏ではよくありがちなエモーショナルな展開ではなく、あくまで古典的な様式美を追求するような演奏である。

アンコールは、ブラームスによるハンガリー舞曲第5番であった。