2016年11月25日金曜日

Camerata Salzburg, Matsumoto performance (25th November 2016), review カメラータ-ザルツブルク 松本公演(2016年11月25日) 評

2016年11月25日 金曜日
Friday 25th November 2016
松本市音楽文化ホール (長野県松本市)
The Harmony Hall (Matsumoto Municipal Concert Hall) (Matsumoto, Japan)

曲目:
Wolfgang Amadeus Mozart: Concerto per oboe e orchestra K.314
Wolfgang Amadeus Mozart: Concerto per violino e orchestra n.4 K.218
(休憩)
Wolfgang Amadeus Mozart: Divertimento n.11 K.251
Wolfgang Amadeus Mozart: Concerto per clarinetto e orchestra K.622

oboe: Hansjörg Schellenberger
violino: 堀米ゆず子 / Horigome Yuzuko
clarinetto: Alessandro Carbonare
orchestra: Camerata Salzburg(カメラータ-ザルツブルク)
direttore: Hansjörg Schellenberger

カメラータ-ザルツブルクは、2016年11月19日から11月27日まで日本ツアーを行い、岡山・東京(杉並公会堂)・静岡・大垣(岐阜県)・松本・横浜(神奈川県立音楽堂)・西宮(兵庫県)にて計7公演(静岡公演と大垣公演は二手に分かれてのほぼ同時の演奏会)の演奏会を開催する。用紙された曲目の中から、公演地の主催者の要望によって変更をしたのか、曲目は公演地により異なる。

この日本ツアーで、中規模ホールである700席前後のホールで演奏されるのは、この松本市音楽文化ホールが唯一である。この日本ツアーの中で、間違いなく最良の演奏会場であることは言うまでもない。

管弦楽配置は、舞台下手側から、第一ヴァイオリン→ヴァイオリン-チェロ→ヴィオラ→第二ヴァイオリンの左右対向配置で、コントラバスはチェロの後方につく。木管パートは後方中央、ホルンは下手側であるが木管と同じ場所にある。

着席位置は一階正面後方やや上手側、客席の入りは5割に満たなかったかもしれない。室内管弦楽団かつ全てモーツァルトのプログラムであり、なおかつ地方開催となると、観客動員には限界があるのだろう。観客の鑑賞態度は、概ね極めて良好であった。

最初はオーボエ協奏曲K.314である。松本市音楽文化ホールの響きには、二分くらいで慣れた感がある。一曲目から手を抜かない演奏である。

二曲目はヴァイオリン協奏曲第4番 K.218で、ソリストは堀米ゆず子である。ソリストと管弦楽との関係は、同じ方向を向き溶け込む方向性であるが、時折堀米ゆず子が、しとやなか音色に変えたりテンポを遅くしたりと面白い。管弦楽は非常に高いレベルにある。ホルンも柔らかく溶け込むし、管弦楽全体としてのアクセントも、全音域で美しくヴィヴィッドに決めてくる。松本市音楽文化ホールならではの、幸福感に満たされた響きが実現されている。

後半はディヴェルティメント第11番K.251である。オーボエ・指揮の Hansjörg Schellenberger は、弦楽に囲まれるような位置で客席を向いて座り、吹き指揮をする。曲想は何かの祝典のBGMを思わせるもので、この曲想を面白く演奏するのはなかなか難しそうに思える。しかしながら、曲の進行とともに華麗な曲想となる要素の上に、美しく演奏し続けることによりテンションが上がってくる要素の相乗効果が働き、単なるBGMではないこの曲の魅力を余すことなく表現仕切っている。

最後はクラリネット協奏曲K.626である。ソリストである Alessandro Carbonare のクラリネットは完璧過ぎる。冒頭から高い技巧を見せつけ、管弦楽を終始リードし、第二楽章弱奏部ソロも完璧な技巧で、ニュアンス豊かに演奏する。音の多い部分は、残響が豊かな松本市音楽文化ホールで美しく響かせるのは難しいが、この点も難なくクリアされている。これ以上のMozartのクラリネット協奏曲は望めない!管弦楽は後半も素晴らしい演奏をしたが、これほどまでのクラリネット-ソロを見せつけられては、どうしてもソリストの独擅場となるのはやむを得ない。それでも、ソリストと管弦楽双方が高い水準の演奏を繰り広げ、これが Mozart なのだと納得させられる演奏である。ソリスト・管弦楽・松本市音楽文化ホールの秀逸な音響が三位一体となって、観客に届く演奏である。演奏終了後に即スタンディングオベーションを行って差し支えない。

アンコールは、K.626の第二楽章からで、弱奏部ソロが始まる直前から開始された。アンコールはどの曲目で行うべきか、的確に把握されている。今年の、松本市で開催された演奏会の中で、最も優れた演奏であった。