2016年8月21日日曜日

Saito Kinen Orchestra, Fabio Luisi , 21st August 2016 Concert, review サイトウ-キネン-オーケストラ+ファビオ=ルイージ 2016年8月21日演奏会 感想

2016年8月21日 日曜日
Sunday 21st August 2016
長野県松本文化会館 (長野県松本市)
Nagano-ken Matsumoto Bunka Kaikan (Nagano Prefectural Matsumoto Theater) (Matsumoto, Japan)

曲目:
Gustav Mahler: Sinfonia n.2

orchestra: Saito Kinen Orchestra(サイトウ-キネン-オーケストラ)
direttore: Fabio Luisi (指揮:ファビオ=ルイージ)

ファビオ=ルイージを指揮者に迎えて、2015年8月19日・21日に長野県松本文化会館にて開催された。

管弦楽配置は、失念した。着席位置は19日は二階正面中央下手側、21日は二階正面やや上手側最前方、チケットは僅かに完売には至らなかった。

この公演については二公演とも臨席した。19日公演と21日公演とでは大きな差が出た。

8月19日公演は、どこか精彩を欠いていた。音響劣悪な長野県松本文化会館で、演奏者の意図が伝えることの難しさを感じた。また、上手いオケが感銘を与える演奏をするのは難しいことも実感した。

前半部分は、余り良く練られていない感じがあった。前半部で低弦がマトモに響いたのは、第一楽章終盤部のみであった。曲冒頭の、低弦の貧しい響きは、愛知芸文の響きがスタンダードな私にとっては、堪え難かった。第三楽章冒頭のティンパニ、残響消しの術が見事に失敗して、汚い音になったのは残念である。あと、ソプラノのソロが出る直前のフルートとトランペットの音は、あまりに大き過ぎ、繊細さに掛けていた。弱音を多用する試みは、この貧しい響きの長野県松本文化会館では無謀である。意図が伝わらず、つまらなく響くから。愛知芸文だったら、観客に伝わるだろうけど。

全般的に、個々に傑出した表現は見られるけど、第五楽章前半は良かったと思うけど・・。

二人のソロの歌い手は、単独だと綺麗な中弱音で聴かせてくれるけど、オケが強めに入ってくると、声が引き立たない。サイトウキネン、歌モノは苦手なのかなあと思わせる。

中部フィルによる しらかわホール におけるマーラーの第四交響曲を聴いた後のような満足感が得られなかったのか、考えさせられる。ホールにしても管弦楽にしても、小さければ小さいほど良くて、大きなモノはダメなのだろうか?ある種の まとまり感 があるのかないのか?どこか統合されていないのか?長野県松本文化会館が悪いのか?大きいから全てが上手くいかないのか?私にはサッパリ分からないけど、不完全燃焼状態が強かった。

8月21日の演奏は、19日のこれとは全く別物であった。

弦管打全てが絡みあった感が強く、弦が強く響くと全てが締まる。音の洪水で攻める点だけでなく、弦のゾクッとさせられる鋭い響きを始めとしたニュアンスが効いて、二階席の私の席にも届いた。これぞ、サイトウキネン!合唱も管弦楽に負けずにハーモニーを構成していた。まとまり感が違っていた。一番強調するべき事は、全員が第一楽章冒頭から緊張感に満ち、弛緩した響きがなかった。前半も充実した演奏で、そこが19日とは違っていた。

長野県松本文化会館にはシャンデリアがないので、天井を向いたり、敢えて目を瞑る箇所が多かった。どれほど素晴らしい演奏だったかを示す、私にとっての証左だ。その音にとにかく浸りたい時、私は視覚情報をカットする。この場面の多さが、演奏の傑出した見事さを示す!

どんなに一流の指揮者や奏者を揃え、万全のリハーサルを組んでも、演奏は生物、どうなる事か分からない怖さと面白さを、今回のファビオ=ルイージ+サイトウキネンの「復活」で思い知らされた。