2016年7月10日日曜日

Camerata de Lausanne, Nagoya perfomance, (10th July 2016), review カメラータ-ドゥ-ローザンヌ 名古屋公演 評

2016年7月10日 日曜日
Sunday 10th July 2016
宗次ホール (愛知府名古屋市)
Munetsugu Hall (Kyoto, Japan)

曲目:
Johann Sebastian Bach: Concerto per due violini BWV1043
Дмитрий Дмитриевич Шостакович / Dmitrii Shostakovich: Due pezzi per ottetto d'archi, op. 11 (弦楽八重奏のための2つの小品)
Пётр Ильич Чайковский / Pyotr Ilyich Tchaikovsky: Сладкая греза op.39-21 (甘い夢)
Пётр Ильич Чайковский / Pyotr Ilyich Tchaikovsky: Waltz e Scherzo op.34
Пётр Ильич Чайковский / Pyotr Ilyich Tchaikovsky: Воспоминание о дорогом месте op.42 2.Scherzo, 3.Mélodie(なつかしい土地の思い出)
(休憩)
Пётр Ильич Чайковский / Pyotr Ilyich Tchaikovsky: Serenata per archi op.48

orchestra: Camerata de Lausanne

カメラータ-ドゥ-ローザンヌは2016年7月3日から11日までにかけて日本ツアーを行い、仙台で1公演、東京で3公演、神奈川県藤沢市で1公演、名古屋で1公演、計6公演が開催される。この評は、五番目の公演である名古屋公演に対してのものである。

弦楽配置は、舞台下手側から、第一ヴァイオリン→第二ヴァイオリン→ヴィオラ→ヴァイオリン-チェロのモダン配置で、コントラバスはチェロの後方につく。

着席位置は二階正面後方上手側、観客の入りは、7割程か。同じ時刻で名フィルの演奏会があり、観客が割れてしまったか?観客の鑑賞態度は、概ね良好であったが、僅かに拍手とブラヴォーが早かったように思える。スピーカーのスウィッチを切り忘れたような音が終始響いていたのは残念だった。

男性は黒、女性は赤で統一された衣装で登場する。ピエール=アモイヤルの門下等の繋がりで結成されているからか、奏者は彼以外は若手に見える。

全般的に終始素晴らしい演奏であるが、ショスタコーヴィチのop.11、チャイコフスキーの弦楽セレナーデ、アンコールのニーノ=ロータが特に素晴らしい。

響きが若々しく、一方でニュアンスに富み、低弦も豊かに響いた。ショスタコーヴィチはヴィオラが豊かに鋭く響かせているのが効いている。ショスタコーヴィチが初期の作品からその天才ぶりを発揮したのが良く分かる。

その後のチャイコフスキーの小品集は、「甘い夢」でアンドレイ=バラーノフのソリスティックな、パガニーニ的テクニックの披露を聴けるのは楽しいけれど、ショスタコーヴィチがチャイコフスキーを馬鹿にしまくっていたのが良く分かってしまう選曲ではあると言っては、怒られるか?

しかし、後半の弦楽セレナーデは、同じチャイコフスキーとは思えないアプローチである。テンポは全般的に速めで、メリハリを付けた緊張感を絶やさない演奏だ。チャイコフスキーの甘い演奏が嫌いな人に聴かせたい演奏である。ヴィオラ・チェロが表に出る部分はしっかり聴かせてくれる。一方で、ニュアンスも豊かだ。テンポの揺らぎはバッチリ決めてくる。小技に効かせ方が絶妙である。第四楽章だったか、チェロが主旋律を弾いている際の、ヴァイオリンが音量を的確に調節したニュアンスの効果は絶大だった。正統派のチャイコフスキーではないのだろうけど、小技の掛け方がいい意味で職人的に絶妙に計算されているのだろう。本当に新鮮で面白いチャイコフスキーだ。絶賛するしかない。

アンコールは、J.S.バッハの「アリア」と、ニーノ=ロータの「弦楽のための協奏曲」から第四楽章である。ニーノ=ロータの作品は、あたかもショスタコーヴィチに対するアプローチで、ニーノ=ロータが映画音楽だけの作品家ではない、純音楽の作曲家として非凡な才覚を持っている事を認識させられる演奏である。奏者の若さが的確に導かれ、全員の才覚が花開く、傑出したニーノ=ロータであった。